形状データそのものに目的のあるCADと異なり、この分野はグラフィックスイメージ・映像制作がメインとなります。前述したようにCAD分野は数値精度が重要視されますが、この分野のソフトウェアはそうではありません。
WEBデザイナー という職種はインターネットの普及、メディアとして広く認知されている、制作物そのものに利用価値があるため成り立ちますが、同様に3DCGデザイナーという職業分野は存在しません。3DCG ソフトを覚えてもデザイナーになれる訳でなく、3DCG を活用している職業という捕らえ方が必要です。
エンターテイメント性の強い分野では、映画やアニメ、特撮といった映像分野、3Dゲーム開発が代表になります。
最近ではハリウッド映画に代表されるフルCG映画も珍しいものではなくなってきました。実際、ソフトウェア、ハードウェアの進歩により個人でも制作可能な時代に突入しています。国内にもVFX専門に行うポストプロダクションが存在します。国内では白組が有名で実力はトップクラスです。
主に使用されるのは SOFTIMAGE 3D XSI / Houdini / Maya / 3ds MAX / LightWave3D / CINEMA 4D など
映像制作の分野の中でもっとも3DCGソフトウェアを活用しているのがアニメ産業です。アニメという言葉はアニメーションの頭をとった日本の造語であり、従来のセル・アニメの事を指しています。
ご存知のように日本のアニメは世界に高く評価されており、アニメ (anime) という言葉も海外では anime = Japan animation として広く認知されています。
従来のセルアニメーションは手書きで起こしたイラストを動かすことで映像を作成するため、多くの人手を必要としますが、3DCG ソフトを使用したセルアニメーション制作は時間と情熱さえあれば個人制作も不可能ではありません。
ちなみに一般的な TVアニメ・シリーズ制作で 300~400人 が関わるそうです。3DCG ソフトを駆使する有名な映像クリエイターに関しては、それぞれのソフトウェアの章で紹介しています。
従来の3DCG といえば、レイトレーシング レンダリングに代表されるフォトリアルなイメージであり、アニメ業界では試行錯誤の連続でしたが、1998年頃から、セル・シェーダーを活用したトゥーン・レンダリングというアプローチも存在します。
アニメ制作の生産性あげるため、主にメカや小物、背景などに使用されています。最近ではキャラクターに関しても見かけるようになりましたが、表情や人物の動作に関しては逆に生産効率が悪いなどのデメリットもあります。
このアニメ業界は労働条件が歩合制と悪く、昔から宮崎駿はこのような礎を築いた手塚治の事を非難している事は有名です。ちなみにスタジオ・ジブリでは給料制。
スタジオ・ジブリでも 3DCG の技術を積極的に取り入れていますが、TV アニメに見られる手法とは異なり、手書きをベースに3Dマッピングを行う、人物は熟練したアニメーターが行うなど生産性よりも従来のセルアニメーションのクオリティーを引き上げる事を主な目的として活用している所もあります。
宮崎アニメ、ジブリ作品に露骨な 3D 表現はない
いずれにしても、アニメ制作に関する知識、技術をもった人材が 3DCG ソフトを使いこなす必要があり、人材が育ちにくい分野といえるかも知れません。映像制作全般に言えることだと思います。
夢を壊すようで申し訳ありませんが、以下が実態。アニメ産業に限定された話ではない。
ゲームといっても様々ですが、ここでは開発用途を指しています。後述するプレゼンテーションとはちょっと異なる分野で、CAD同様に作成するデータ自体に目的があり、プログラミングとも深く関わってきます。
例えばゲーム機の限られた資源(メモリ/CPU /GPUetc)で動作させるための3Dデータ、テクスチャなどの開発用途など。ゲーム機の限られた資源で3D制作を行うという例では、海賊屋さん の ローポリクラブ がおすすめ。 久しく更新されていませんが、同氏は LightWave 3D の使い手としても知られた方です。
ゲーム開発に特化した3Dソフトウェアは存在せず、3Dグラフィックス分野のソフトウェアが提供する SDK (コンバート等の開発キット) を利用して行われます。ゲーム開発にフォーカスした機能を提供する3DCGソフトウェアはミドルクラス、ハイエンドクラスのプロフェッショナル向けの高価なソフトウェアで提供される傾向にあります。
個人ユーザーを対象としたエントリークラスの3Dグラフィックソフトは一般的に使用されていません。
Playstation 3 などの次世代家庭用ゲーム機に関連し、物理計算エンジン NovodeX や XMLベースのゲーム開発向け共通3Dフォーマット COLLADA など開発環境の整備が急速に進んでいます。Blender も視野に入ってきそうです。
デザイン、設計事務所などプレゼンテーション用途を主な目的に使用する業種は多岐に渡ります。決まった分野が存在する訳ではなく、二次元よりも三次元によるプレゼンテーションに高い効果の期待できる業種で使用されています。代表的な分野は以下の通りです。
工業デザイン分野です。工業デザインの花形と言えば自動車をイメージされる方が多いと思いますが、デザイン検討用に3DCGソフトウェアが使用できるほど、3DCGソフトウェアは柔軟には出来ていません。
このような用途を想定したスケッチ感覚でモデリングが行えるプロダクトデザインに特化した 3DCGソフトウェア も存在します。
造形におけるデザイン(創造作業)は、自動車に限らずどの分野でも マーカースケッチ等のスケッチが基本です。人間の感性を直接表現できるほどコンピューター、ソフトウェアは出来ていません。
哲学的な話になりますが、つまり、人間の手と脳ほど優れたデバイスは存在しないという事です。インダストリアルに限った話ではなく、コンピュータは具現化するための道具に過ぎません。コンピュータが自発的に物を生み出す事はありえません。
カラー、質感等のシミュレーションにおいてはフォトリアルな表現が可能な 3DCG ソフトウェアは生産性を飛躍的に向上する事が出来ます。
私は工業デザイン学科出身なのですが、照明器機デザインもプロダクトデザインの中では花形的な存在です。造形美と機能性の両立が求められる分野でもあり、工房に入っては試行錯誤の繰り返しです。
これらの製作コストを削減するため、材質や光を物理的に計算を行うための特別な科学計算ソフトを使用するという試みは過去にもありましたが、一般的な 3DCG ソフトウェアではそこまで正確にシミュレートする訳ではないため、昔はこのような用途には使われませんでした。
近年ではパソコン (CPU)の処理能力向上に伴い、より複雑な計算が行える3DCGソフトウェアも登場しているため、事情は異なっていると思います。ちょっとこの世界から離れて久しいのでよく分かりませんが、
フォトンマップなど照明器機の表現に適した計算が可能なレンダラを搭載する3DCGソフトウェアや光線を物理的に計算する事で現実に近い品質でレンダリング可能なフリーのレンダラも存在します。
3DCGソフトウェアをもっとも活用している業種といって良いと思います。新聞の折り込み広告などで分譲マンションや一戸建ての手書きのイラストは現在もよく目にします。手書きの方が納期が短く低コストであるため 3DCG へ置き換わるという事は今後もないのではないかと思います。
このような隙間を埋めるため、建築、インテリア分野におけるプレゼンテーション用途に特化した習得が容易な 3DCG ソフトウェアも販売されています。
3DCG を使用するメリットは、アニメーションへの展開、フォトリアルな正確なイメージ制作に適しており、高いプレゼンテーション効果が期待される、つまり、それだけコストを掛けても見返りが期待できる用途に活用されています。
一般的に知られているであろう3DCGソフトウェアを活用する業種はこんなところでしょう。その他、3DCG 技術が活用されている、または期待されるであろう分野を幾つか紹介します。
3D(立体)データは、簡単に言えば点の集まりです。点と点を結ぶ事で面を形成していると考えると分かりやすいと思います。それぞれの点は、座標(XYZ)、つまり、立体データの実態は無数の点を表す座標(数字)です。
滑らかな面を得るにはそれだけ多くの座標情報が必要となるため、画像などの二次元データに比べ、三次元データは情報量が大きくなります。
インターネット上で 3D を配信する技術はブロードバンドが普及する以前から存在していましたが、ナローバンドであったこと、サブディビジョンなど軽量化技術が普及していなかった事、規格の覇権争いやソフトウェア・ライセンス問題等(これが大きい・・) といった様々な事情により、ブロードバンドが普及した現在においても普及する兆しがありません。
セカンドライフとはアメリカの Linden Lab 社が提供しているネットワーク参加型の仮想空間です。この 3Dで再現された仮想空間上では単なる3D空間コミュニティーではなく、実際に経済活動が行われています。例えば、土地を購入したり、店舗を建てて商売したりなど。
つまり、仮想社会を形成しています。実際に通貨のやり取りも行われており、セカンドライフ内の職業だけで生計を立てている方もいます。例えば、出勤はバーチャルの世界に設立した会社に出勤し、商売も仮想空間で行い実際に収益を得るという具合に。
端から見れば、まるで一日中ゲームをやっている人にしか見えません。NHK (クローズアップ現代だったかな) でも取り上げられていたのでご存知の方も多いのではないかと思います。(雇ったリアル社員もバーチャル会社に出勤・・・) 分かり難くてすみません。書いてるこちらも混乱してます。
ハリウッドスターがセカンドライフ上で記者会見を行い、実際の記者がインタビューを行うほど。企業から見れば無視の出来ない巨大なコミュニティーに成長する兆しを見せています。近所付き合い、人間関係が希薄な昨今、ゲーム大国の日本で普及したらと思うと怖い話ですが、人の集まる所に企業が集まり、新たなマーケットが生まれます。
WEBデザイナーという職種が定着したのもインターネットの普及あっての事であり、仮想空間で、「二つめの人生?」 という考えは個人的には手放しに賛同できませんが、近い将来、3DCG 制作者にとって WEBデザイナーのような 3Dデザイナー みたいな新たな職種が誕生するかも知れませんね。3DCG制作者にとって新たな飯の種に成り得るのか、興味の尽きない所ではあります。
セカンドライフで人生をリセットしませんか?、とか、セカンドライフでもう一度人生をやり直しませんか? とか解釈する人が出てきそうで、ほんと怖い・・・ 少なくとも子供にはさせたくない。
このように三次元グラフィックスソフトウェアは、様々な分野でプレゼンテーション、シミュレーションツールとして活用されています。データそのものに利用目的があるCADとは異なり、書き出すイメージ、ビジュアル自体に商業価値があります。
どのような目的で 3DCG に取り組むかによって適切なソフトウェアの選択肢は異なります。特に初めての方にとっては、判断が難しい所ではないでしょうか。
このサイトでは主にこのような方を対象に、技術系サイトに多い専門用語を多用した小難しいサイトにならないよう注意して一般の方にも分かりやすい言葉で説明する事を心がけるようにしています。
製品選びのポイント・アドバイスは、このサイトでも紹介しています。