左手用キーパッドは幾つか販売されていますが、3DCG制作において有効活用できそうなデバイスとして G13 Advanced Gameboard と Belkin n52te の2機種が候補に挙がりました。
これらの入力デバイスは前述した問題を解決できる可能性があり、どちらを導入するか検討してみる事にしました。
ドライバのサポートです。私の場合は XP x64 ドライバが提供されているかどうかが重要になりますが、異なる環境で使うには様々なOSで使える必要があります。最近では ハードウェアベンダーから殆ど無視される XP x64 ですがマイナーOSのドライバを提供するメーカーほど安心感があります。
不具合のあるまま放置するベンダーは多いです。どことはいいませんが特に家庭向けを中心に販売しているメーカーに多いため、ゲーム用デバイスとなると慎重になってしまいます。意図的に 64bit 対応状況を記載しないメーカーも多いです。未対応と表記するぐらいなら書かない方が利益が出るためです。
この手の拡張デバイスはドライバが提供されずゴミ同然となる事がよくあるため、特にメーカーのサポートには注意が必要になります。新しいOSが出ても使い続けられるかどうかは、メーカーサポートによる事を重々認識しておく必要があります。
余談ですが、個人的にサポートがしっかりしている好感の持てるメーカーに、IBM、HP、nVISIA、ATI(現AMD)、Microsoft があります。
家庭用マウス、キーボード、仕事で使える製品はすっかりなくなってしまった事でお馴染みロジクールのゲームユーザー向け左手用ゲームパッドです。
実際に日本橋へ出向いてデモ機を確認してきましたが、写真でみた時の印象と違って想像以上に大きく驚きました。
詳しくは後述しますが、私が想定していた用途ではジョイパッドの方が適します。この製品はジョイスティックになっており想定しているキー入力が困難と思われたためこの地点で候補から外れました。
何よりもホイールを持たないため、3つボタンマウスをメインに使う場合でホイール問題を解消出来ません。キータッチは最悪でメンブレインでは個人的には最悪の部類に入る跳ねっ返りの強いゴムゴムタッチです。
ドライバをインストールしなくてもデバイスとして認識するものの、キーボードデバイスとして認識しないため専用のアプリケーションをインストールしなければ使えない、という点が後述するn52teと最も異なるハードウェアの特徴になります。
例えば、学校や職場で使用するには Admin 権限がないとドライバ・ソフトウェアはインストール出来ません。あくまでゲーム用デバイスであるため、大きな問題ではありませんが仕事で常用となると問題があります。
特定の環境下でこの入力デバイスに依存してしまうと他の環境において使えない場合、作業効率、生産性に影響が出るためです。かなり大柄でスペースを取りますので、この機種は特に店頭で確認した方が良いと思います。
参考 => 4Gamer.net ― 「G13 Advanced Gameboard」レビュー(1)
ロジクールのデバイス ドライバだけあって不具合放置という事はないと思いますが、ロジクール・ドライバには散々泣かされた口ですので何とも言えません。
写真をみて 「これは使えるかも」 と直感的に思ったのが "ホイール" と "ジョイパッド" です。
理由は3DCG制作においてこのデバイスでキーボードの代用が利けば、ホイールマウスは必要なくなるため、使い分けていた複数のマウスを3つボタンマウス一つに統一する事が出来ます。
ジョイパッドは親指一本で Alt / Ctrl / Shift のキーコンビネーション全ての操作を想定しているので操作性と指の負担がスティック(棒状)より適していると思われるからです。(後述)
パッケージ全面はマグネットで止まっており、展示機がなくても、パッケージ全面を開いてキータッチや手を乗せて、ある程度は確認できるようになっています。
これに気が付かず、箱の隙間から手を入れたりしてショップの前で悩んでいました。(笑
G13 Advanced Gameboardと最も異なる点は、ハードウェアを認識させるのに専用のデバイス・ドライバを必要としない点にあります。つまり、差し込むだけでHIDキーボードデバイス、HID準拠マウスとしてWindowsが認識します。
内蔵メモリに記録されたキー情報が送出されるキーボード、マウスとして使用できます。(マウスといってもポインタの制御は出来ません。クリック、右クリック、中央クリック、ホイールが機能します)
キーの割り当てやプロファイルの切換え、ファームウェアの更新には専用のソフトウェアをインストールする必要がありますが、自宅のパソコンで設定しておき、職場や学校のPCに差し込むだけで使う事が出来ます。
USBポートがあって管理者がHIDデバイスを制限していなければの話しですが。
キーの割り当て情報はソフトウェアからハードウェア内のメモリを書き換える設計になっています。(G13も同様)後、メーカーサポートには不安もあります。所有している Belkin 製のキーボードがいい加減だったからです。(開発が弱い印象)
専用ドライバを必要としないのでキー割り当てさえ変更出来ればUSBキーボードに対応するマザーボードであればBIOSも制御出来ます。プロファイル書き換えやキーマップ変更以外はOSに依存しません。
USBマウス、USBキーボードが使える PC であれば差し込むだけで使える点は、長く付き合うメインの入力デバイスとしては大きなメリットになります。
インターフェイスに関しては英語表記であっても特に難解だとは思いませんし、出来る事を考えればデザインは別として個人的には理解し易いインターフェイスだと思います。
(現在は日本語化されている)マニュアルは不親切ですが少し試してみれば分かる事ばかりです。
メモリ内に記録出来るプロファイルは1つのみです。例えば、アプリケーション毎にプロファイルを使い分ける場合は、その都度、メモリ内のプロファイルを書き換える必要があり、書き換えには2秒程の時間を要します。
プロファイルの書き換えは、プロファイルに関連づけた(リンクされた)アプリケーションを自動で切換える方法や、任意のキーに対して作成したプロファイル(外部ファイル)を読み込む機能をキーに割り当てて必要に応じて読み込む事も出来ます。
プロファイル切り替えは設定通りに動作しない場合がしばしばあり不安定です。Default は変更せずにプロファイルを新規に作成して使用した方が安定します。
何れにしてもプロファイルを切換える度にプログレスバーが表示され2秒程待たされる事になるため、頻繁にアプリケーションを切換えて使う用途で、アプリケーション毎に異なるプロファイルを使いたい場合には適しません。
購入前の下調べの段階で心配した点でしたが、本稿の場合、アプリケーション毎に独自のキー割り当てを行なうのではなく基本的に一つのプロファイルで複数のアプリケーションを操作する代替キーボードとしての活用を目的としているので大きな問題にはなりませんでした。この点については後ほど詳しく説明します。
メモリに記録出来るプロファイルは一つですが、一つのプロファイルで3つのキーマップを保存する事が出来ます。つまりキーマップを変更すれば一つのキーに対して3つまで機能を割り当てる事が出来ます。
キーマップの切り替えは、特定のキーをプレスした時のみに変わるモード、順番にキーマップをサイクルするモード、指定したキーマップに切換えるモードがあり、任意のキーに対して割り当てる事が出来ます。
G13 の場合、マップの切り替えは離れた位置に専用ボタンで切換える必要があるため、n52te の方が操作性に優れます。つまり、代替キーボードを目的とした場合はキー数が少なくても n52te の方が操作性が高いと考えられます。
親指付近に現在のマップを示すLEDインジケーター(画像右上)があり、青色は眩しいのですがディスプレイを見ている時に視界に入る方が、現在のマップを確認するため手元を見る必要がないため、眩しくてもそのままにしています。
メインキー、ホイールは青色のバックライトで浮かび上がる様になっていますが、青色のみです。こちら側をインジケーターとして色を切換えたほうが視認性が高くて良いのですが実に勿体ないです。
青色のバックライトがオンだとLEDインジケーターを青と錯覚する事があるため、オフにした方が誤認識が減ります。このキー数で手元を照らしてキー位置の確認はあり得ず、バックライトは装飾意外に意味がありません。
インジケーターとしてバックライト色を変えた方が正解だったと思います。
私の場合、手首の線から中指の先まで17cmと手は小さくかなり大きく感じます。単に手が小さいから、ではなく明らかに欧米向けのサイズでホームポジションでしっくり来る日本人はかなり大柄な男性に限られると思います。
指の長さはに関してはパームレストの調整で何とかなりますが、親指を広げる角度については調整のしようがなく、大きな手を前提にデザインされている事が分かります。私の手では親指をかなり広げた状態になるため、中指は中央の08キーに乗せるホームポジションを維持するのは困難です。08キーには薬指を乗せた方がキーコントロールはし易くなります。
左の写真はパームレストを取り外した状態です。耐震パッドを貼り付けて自分の手に合うように調整しています。
マニュアルによればパームレストなし、パームレスト手前穴、パームレスト奥穴の3段階で調整出来るとありますが、パームレストなしはかなり強引な気がします。(外すと手首の部分が下がりすぎるため)
私の場合、パームレストなしでもしっくりこないので手首の位置に100円ショップで売っている耐震パッドを5mm程度の厚さに加工して貼り付けると良い感じになりました。
メインの入力デバイスとして考えるのであればこのような工夫は必要になると思います。
最前列の全てのキーはキートップが大きく前方へ傾斜しており、指を内側に丸めた状態で操作する事を想定している事が伺えます。
また、最前列の11(一番左)キートップは2mm沈み込んだ位置にあります。
そのためか入力したつもりで入力されない事が頻発するため、キートップにパッドを貼り付けて横の12と同じ高さに調整しました。
上から見たキー配列は放射状に広がるデザインになっておりキーの位置に指が慣れるまで時間がかかります。一見、エルゴ風に見えますがそうではありません。
また、中央と奥の列はキートップの高さが同じ(平坦)なため、一番奥のキーは指が届くものの指先だけでは押し難く、こちらも100円ショップで買ってきた耐震パッドを加工して貼り付けました。これで随分押し易くなります。
左側のキーを操作する際、手首を回転する様な動作をしてしまうと、親指がジョイキー上の○ボタンに接触してしまい反応してしまうので、親指はジョイパッドから動かさないようにするなどの注意も必要になります。(ジョイキー上のボタンは繊細で軽く接触しただけで入力されてしまう)
メンブレインのキータッチは軽く、底打ち感があるためキーボードショートカットのようなスイッチ感覚で使う用途に適しています。同様の使い方でもG13は指に負担を感じる程で両者のキータッチの質感は雲泥の差があります。
操作し易い位置にホイールがあるという訳ではありませんが、チルト機構を持たないため扱い易いホイールです。グリップの良い素材でMSホイールマウス並みに幅があるので操作性が高く、ホイールクリックは堅いためホイール回転時に誤って入力してしまうような事もありません。
個人的には理想的なホイールです。購入前に参考にしたレビューの中では以下のサイトが最も参考になりました。大きさに関してはそのまま私にも当てはまりました。
参考 => Belkin製左手用キーパッド「Speedpad n52te」ファーストインプレッション
ゲームにおけるレビューなので本稿ではグラフィック全般の左手用代替キーボードとして評価する事になります。詳しい外観は以下のページで確認する事が出来ます。
参考 => New n52te SpeedPad from Belkin Improves Your Performance for Tournament Play
引き続き n52te のカスタマイズとキー割り当てについて考察します。