前回、3DCG制作におけるキーボードの扱いについて考察する過程で幾つか気が付いた事がありました。
それは補助的に扱うプログラマル・キーボードではなく、ゲーム用のキーパッドを仕事で使うメインの入力デバイスとして活用できないかという事です。
代替キーボードとしてゲームパッドを考察するにあたって、以前より問題視している 3DCG制作、グラフィック全般の作業時における入力デバイス(マウス・キーボード)の問題点を先に整理します。
これらを踏まえた上でゲームパッドの可能性について考察します。今回、紹介する入力デバイスを用いたアプローチでは以下の諸問題を解消できる可能性があります。
3DCG や三次元CAD と平面(二次元)グラフィックス ソフトウェアの最も異なる点は、インターフェイスに奥行きという概念が存在する事です。
これは二次元(平面)とは比較にならないほど扱う情報量が多い事を意味します。
このような理由から、より効率的にインターフェイスを制御出来るように、長い実績のある三次元(3D)情報を扱うソフトウェアの多くは3つボタンマウスを前提にインターフェイスが設計されているものが多く存在しています。
参照 => 3DCG ソフトのインターフェイス と 入力デバイスについて
今や当たり前となったホイールマウスのホイールボタンは操作性が悪く扱い難いため、生産性に影響がでる場合もあります。
例えば Softimage (XSI)や MAYA など中ボタンにビューポートを制御する重要なキーが割り当てられています。Lightwave は Ctrl Alt に重点が置かれ、その他、Adobe 全般のソフトウェアも同様に、これらのキーとマウスクリックのコンビネーションを前提としています。
更に困った事に最近のホイールマウスはチルト機構を持っています。そのため確実に垂直にホイールを押し込まなければ左右のチルトが反応してしまい、中ボタンが重要となる 3DCG制作においては頻繁に誤動作を引き起こします。
チルトホイールの登場により中ボタン(ホイールクリック)の操作性が更に低下したため作業に応じて3つボタンマウスを使い分ける方も多いと思います。
ところが従来3つボタンマウスを前提としていた 3DCGソフトウェアのインターフェイスはホイールを前提とした設計になっており、ホイールを持たない3つボタンマウスでは不便に感じる事も多く、悩ましい問題となっています。
マウス ホイールのあるとないとで生産性にも影響するため、チルト機構を持たないホイールマウスがベストであろうという事で、少数派のチルト機構を持たないマウスは以下で紹介しました。
参照 => 3DCG 制作 ホイールマウスの活用と問題点
結局、作業内容に応じて複数のマウスを使い分けるか、チルト機構を持たないホイールマウスで我慢しなければならないケースも現実問題として存在しています。
これらの問題はベンダー側も認識しており、これまで変更出来なかったビューポートに関するキーコンビネーションを変更出来るよう配慮しているケースもあります。学校や職場で指導する立場にある方など自己流のカスタマイズに慣れる事を嫌うケースもあるため、根本的な問題解決には至りません。中ボタンは一般的に馴染みが薄く、中ボタンを重視したマウスは殆ど存在していません。
二つは右、左クリック、三つ目は中央クリックを指します。多くのホイールマウスはクリック機構を持っており、デフォルトで中央クリックが割り当てられています。また、一般の方に馴染みの薄い中央クリックは拡張機能ではなく昔から Windows が標準でサポートします。
3DCG制作に限らずグラフィック全般の作業では常にマウスかペンタブレットを持ったままの作業となるため、殆どの時間はキーボードを片手で操作する事になります。
そのためキーボードのキー配列、レイアウトが重要な問題となる場合があります。
参照 => 3DCG制作とキーボードの位置に関する考察
中でも Alt / Ctrl キーの位置関係は PCキーボードの場合、これらの用途で殆ど利用価値のない Windows キーが重要な場所に居座っています。
そのためキーコンビネーションが重要となる用途ではキー配列によって操作性が低下するだけでなく疲労の原因になります。
元々 Apple と IBM PC ではパーソナル・コンピュータとしての素性が違います。グラフィック分野に強い Apple は装飾キーもこれらの分野で扱い易いようにハード、ソフトとも設計されきた経緯がありますが、Office に代表されるビジネス分野としての素性が強い IBM PC で使用される多種多様なキーボードは装飾キーの位置もバラバラです。
特に Macintosh からの移植が多いグラフィック系の(Adobe等)のツールは PCキーボードでは操作し難くいのが実情です。
3DCGに関してもエントリークラスはMacintosh から移植されたソフトウェア、ミドルクラスやハイエンドの統合型ツールの多くは Irix (Unix系) や Amiga からの移植組、Windows 出身の統合型 3DCGソフトウェアは 3dsMax ぐらいです。Windows PC を前提に開発された主要な商用ソフトウェアが少ないという背景があります。
ペンタブレットを使用する場合でも、キーボードのサイズによって卓上スペースが問題となる場合もあります。
プログラマル・キーボードは特定のキーに対してマクロを組み込み、作業をキー入力一つで行なう事が可能になる特殊な入力デバイスです。
主に開発現場や繰り返し作業が多い用途で活用されています。
独自の拡張ボタンを設けてマクロを実行出来るキーボードも存在します。
キーボードの補助用デバイスとして活用するには大掛かりな上、高価であるためこれまで関心はありませんでしたが、キーボードを考察する過程でゲーム用キーパッドの中にはコンパクトでプログラマルに扱える製品がある事を最近になって知りました。
マウスを持ちながらとなる作業ではキーボードを左手で操作する事になりますが、キーボードの代わりに左手用ゲームキーパッドを代替キーボードとして扱えそうなG13 Advanced GameboardとBelkin n52teの2機種の何れかを導入してみる事にしました。