一般的なデスクトップ・パソコンは PC や Macintosh に限らず拡張スロットを持っています。規格にあった拡張ボードを追加する事で特定分野に特化したパソコンに仕立てる事が出来ます。
マザーボード(チップセットの種類)の設計によってどのような拡張スロットが用意されているかは異なります。一般的な拡張スロットと 3DCGワークステーションに関りの深い拡張スロットについて説明します。
マザーボード上の拡張スロットには、形状の異なる幾つかの規格が存在します。自作パソコン、PC/AT互換機の魅力はなんといっても拡張ボードによって特定の分野に特化したパソコン、制作環境を構築できる事です。
本稿のテーマとは直接の関係はありませんが、拡張ボードをスロットに追加する事でパソコンがテレビやハードディスクレコーダーになります。Macintosh の拡張ボードは高価で品数が限られますが、PC/AT互換機は安価で種類が豊富なのが魅力です。
2007年末現在、新しくパソコンを購入する、叉は自作する場合、パソコンの将来性を考えると拡張スロットの規格に関しては特に注意すべき点があります。この点に注意を払ってお読みください。
PC/AT 互換機が従来から持っている拡張バス規格です。PCI には物理的にサイズの異なる 32bit / 64bit バスが存在し、それぞれに 振幅電圧 3.3v/5v の2種類が存在します。切り欠き位置によって異なる電圧のボードを挿せない様になっています。
32bit PCI カードを 64bit に挿して使えるもの、叉は、64bit PCI カードを 32bit PCI バスに挿して使える拡張ボードも存在します。(前者は66MHz駆動のカード、後者は 33MHz に落ちるため性能が落ちる)
パラレル方式である PCI の歴史は非常に長く、互換性を保ちながら仕様変更されてきた事から様々なタイプのPCI拡張カードが現存しています。
現在は PCI から シリアル方式であるPCI Expressへの移行が進んでいる状況にあり、新たに パソコンや拡張ボードを購入する場合は、PCI Express 拡張バスを搭載したパソコン、PCI Express カードを購入される事をお勧めします。
メインストリーム向けのマザーボードに標準で搭載されいます。殆どのマザーボードは、5v タイプのバススロットが採用されてます。市販されている 32bit PCI 拡張カードも、3.3v/5v ユニバーサルタイプが主流となっています。
何れの規格も 33MHz 動作であり、133MB/s と転送レートが低く、このタイプのビデオカードやRAIDカード、キャプチャーボードなど転送レートを要求する拡張ボードを追加した場合、互いが帯域を奪い合うため本来の性能が出ないばかりか、相対的にパソコンの性能が低下する事になります。
PC/AT互換機の汎用拡張バスであるため、この規格を採用している拡張ボードは多種多様です。32bit PCI の後継となる規格は PCI Express x1 になります。2007年末現在のマザーボードは、32bit PCI スロット数が減る傾向にあります。
初期の 5v 64bit PCI バスは 33MHz ですが、既に過去のものとなっています。3.3v 64bit PCI バス の動作クロックは 66MHz となっており、上記 32bit PCI バスの4倍の転送レートを持っています。また、PCI-X で策定された規格では 133MHz ~ 532MHz まで高められていますが、拡張ボード側も対応している必要があります。
同じバス形状でも得られる速度が同じとは限りません。PCI-X に準拠したマザーボードやチップセット構成、64bit PCI カードの対応によって最大転送レートは異なります。
写真は、3.3v 66MHz の 64bitバスで PCI-X 以降はこの形状になります。これらのバスを持つマザーボードは、SCSI や RAIDなどの高いファイル I/O 性能が求められるサーバー用途の高価なマザーボードで現在も搭載されています。
このPCI-X も PCI Express が普及するまでの繋ぎ的な役割にあり、PCI Express の普及が進んでいる 2007年末現在では市場から姿を消すのは時間の問題です。また、このタイプのビデオカードは存在しません。PCI-X世代はAGPが担当。
この規格を採用している拡張ボードには、SCSI / パラレル・シリアルATA 等のストレージ関連、一部のノンリニア映像編集ボードがあります。何れも業務用の高価な拡張ボードです。
一般的な 3.3V/5Vユニバーサル - 32bit PCI カードは 33MHz 動作ですが、64bit PCI カードと同じ 66MHz 動作可能な製品も存在します。
このような製品は、少数ですがRAID 0カードなど高いバス転送レートが要求される安価な製品に見られます。
従来の 32bit PCI バスに刺しても 33MHz 動作となってしまうため、本来の性能を出す事は出来ません。PCI-X 策定の 64bit PCI バス(3.3v)に装着する必要があります。
安価なストレージ拡張カードには 32bit 33MHz 動作の RAID カードも市販されていますが、133MB/s の転送レートでは論理値が上回っています。他の PCIカードと帯域の奪い合いが発生するため、思ったようなパフォーマンスは得られません。
3DCG 制作においては、シーンが複雑になると File I/O の性能が高いとシーンを開く時間を大幅に短縮できます。安価に RAID 0 を構築する場合はこの手の RAID ボードと PCI-X 準拠のマザーボードで安価に高性能を実現する事が出来ます。
ただ、PCI Express が普及している 2007末 現在の状況では、シリアルATA の RAID 0/1/3 に対応した安価なマザーボードも存在するのでこれらを検討するかPCI Expressの SATA RAID カードを拡張した方が高いパフォーマンスを得られます。
3DCG や動画・映像編集など高いパフォーマンスが要求されるデスクトップPC を構築する場合、利用したい手持ちの 64bit 133MHz 動作のストレージボードがない場合、64bit PCI バスの必要性はありません。PCI Express x1 / x16 レーンの多いマザーボードを選べば良いと思います。
転送レートを大幅に高めた PCI-X 以降の 64bit PCI バスを含め、PCI Express の普及により姿を消す運命にあります。2007年 末現在では、PCI-X 準拠の 64bit PCI バスを持つマザーボードも存在しますが、これらは高価な 64bitストレージカードの投資を無駄にしないためのもので、何れは PCI Express に置き換わっていきます。
ワークステーション向けの 64bit PCI バス(133MHz)を持つマザーボードは需要も少なく一部の製品に限られています。(サーバー用途のマザーボード)
PCI ビデオカードでは、チップセット間の帯域をビデオカードに占有されて互いの PCI カードの性能低下を招く状況となっていたため、PCI と切り離す形で大幅に転送レートが高められています。ビデオカード専用の規格となります。
つまり販売されている AGP 拡張カードは全てビデオカードです。
AGP 1x / 2x / 4x / 8x が規格化されており、8x は 1x の 8倍の転送レートで最後の AGP 規格です。外には AGP Pro (x4)というバスからの電源供給を強化したタイプの存在します。AGP Pro のビデオカードは専用のバスを持つマザーボードが必要で、1.5v / 3.3v ユニバーサルタイプのスロットも存在します。
AGP 8x を持つパソコンは現在もスペック的にまだまだ現役ですが、最新の3Dグラフィックス、高解像度用途ではバスの転送レートが足りなくなったため、PCI Express x16 へ移行しています。 2006年以降、AGP のビデオカードの新製品は殆ど出ていません。2007年の段階では既に過去のものとなっています。
従来のPCIバスの後継となる新しい規格です。現在、x16(16レーン) と x1(1レーン) の二種類のバスを搭載したマザーボードが販売されています。
PCIe x16 は AGP 8x の 4倍の帯域を持つため、現在発売されている 3DCG 向けのビデオカードは PCI Experess x16 になります。
シリアル転送であるため、レーンを増やすだけで帯域を上げる事が出来るため、x16 レーンのバスに、x1/x4/x8 サイズのカードを接続する事も可能です。(左図参照)
幅の広い x16 は、接触不良を起こし易かった AGP の反省から、ボードを固定する爪が付いているのが特徴です。高い帯域を必要とする最近の3Dグラフィックス向けのビデオカードは、PCI Express x16 に置き換わります。作業用のサブモニタ等、サブのビデオ出力用として、少ないレーンのビデオカードが登場する可能性もあります。
広く普及している 32bit PCI バスでは RAID-0 や ギガビットイーサー、キャプチャーボードには帯域不足で、これらの 32bit PCI カードを複数拡張した場合、チップセット間との帯域の奪い合いが発生しますが、PCI Express では帯域を奪い合う事はないためパソコンの相対的な性能低下が起きないメリットがあります。
IEEE インターフェイスカード、キャプチャーボード、ストレージ(RAID等)といった高い転送レートを要求する分野の拡張カードを中心に PCI Express へ移行が進んでおり、選択肢も増えてきている状況にあります。(2007年末現在)
最近発売されるマザーボード側も従来の 32bit PCI バスのスロット数が少なくなる傾向があります。これらの理由から新しくパソコンを購入する場合は、PCI Express スロットが多いパソコンの方が将来的に安心できます。
Windows が正式に PCI Express をサポートするのは Windows VISTA からですが、ドライバが提供されていれば、XP / 2000 でも使用できます。PCI Express 拡張ボードを購入する場合は、対応OS の確認は注意する必要があると思います。
現行の PCI Express 1.1 の後継となる規格で 2007年末、PCI Express 2.0 に対応したマザーボード(Intel X38チップセット)も出てきました。PCI Express 2.0 は、従来の 1.1 と完全な互換性があり、2倍の帯域を持っています。
PCI Express 2.0 は、FSB 1333MHz 版のマザーボードが対応しており、メモリ、CPU も含め、2007年末段階では最新のトレンドとなりますので価格は高めになります。