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ハードウェア導入ガイドビデオカードの選び方5.Quadro FX 選定アドバイス
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賢明なビデオカードの選び方 ~ Quadro FX 選定アドバイス

3DCG 制作に適したビデオカードの選び方

ここからは、これまでの説明を元に具体的なビデオカード選びのポイントを具体的に紹介します。一般購入できる 3DCG / CAD 用途のビデオカードは、nVIDIA 社の Quadro チップ、叉は AMD (ATI) の FireGL 系の何れかに絞られると考えて差しさえありません。Quadro FX シリーズを例に説明しますが、FireGL においても同様です。

本稿は複数ページから構成されており、誤認識を招き易い内容となっています。検索エンジンから来られた方は、右メニュー "はじめに(コンテンツの概要)" を参照して下さい。

Quadro と FireGL

CRT(アナログ)ディスプレイが全盛期の頃、TNT をはじめとする GeForce、Quadro 系のビデオカードは色のにじみが酷く、私の周囲には敬遠するデザイナーが多かったのですが、現在はATI (現AMD) の RADEON、FireGL 系のビデオカードと遜色の無いレベルになっています。

3DCG制作(特に映像)は現在も CRTディスプレイが適しています。

個人の経験や私の周囲の評価では、Quadro、FireGL 系のビデオカードにおいて ミドルクラス、ハイエンドクラスの 3DCG ソフトの中でビデオカードとの相性が出やすいのは、ミドルクラスでは LinghtWave3D 、ハイエンドの中では Maya 、SOFTIMAGE、XSI という印象が強いです。(このような症状が出ます。

3dsMax は OpenGL 以外に独自の 3D-API を持っており、ミドルクラス以上の統合型 3DCG ソフトの中では唯一の Windows 出身のソフトウェアであるためか致命的な不具合というのはあまり聞きません。CINEMA 4D も少ないように思います。(デモ版を触る限りは) Lightwave 3D と XSI は FireGL 系で問題が出る事が多く、全体的に安定しているのは Quadro 系のビデオカードです。

最近、Quadro 系のボードを推奨する3DCGソフトウェアが増えてきたように思います。(実際、FireGL はドライバ絡みの不具合も多いし、完成度が指摘される事も) よって現在の私のお勧めは Quadro 系のビデオカードになります。

Quadro チップを搭載したお勧めのメーカーは

ATI (現AMD) は自社の GPU を搭載したビデオカードを販売していますが、チップベンダーである nVIDIA は様々なメーカーにチップを提供しています。OpenGL を必要とするアプリケーション向けのラインナップはQuadro FX シリーズになります。

Quadro チップを搭載したビデオカードを販売しているメーカーは、ELSA社(ドイツ)、PNY Technologies社(アメリカ)、LEADTEK社(台湾) が有名ですが、国内で人気が高いのは ELSA(エルザ) 社製のビデオカードです。

ELSA は 古くから日本語サポートを行っており、ドライバサポートの面でも信頼のおけるメーカーで個人的にも勧めのメーカーです。Quadro 買うなら ELSA です。

Quadro FX 新シリーズの特徴

性能別にエントリー、ミドル、ハイエンド、ウルトラハイエンドの4つクラスに分けられていますが、現行のGPUでは一般的なモデリング、映像制作を行うケースでは、エントリークラスで十分なパフォーマンスが得られています。

エントリークラスの一部の製品に使用されていた GDDR3メモリ を搭載する製品はなくなり、全て DDR2 に統一されています。 解像度の高いテクスチャを使用しなければ大きな差は出ないと思われるので性能が引き下げられたという印象はありません。

エントリー、ミドルクラスの新シリーズは 70 という名前が含まれています。

データは http://www.nvidia.com/object/IO_11761.html からの抜粋です。.

Quadro
FX 350 FX 370 FX 570 FX 1700
2007年 10月実売価格 3万円 2万円 3万円 8万円
発売日 2006/6 2007/9 2007/9 2007/9
GPUコアクロック 550MHz 360MHz 460MHz 460MHz
メモリクロック 810MHz 800MHz 800MHz 800MHz
メモリタイプ DDR2 SDRAM DDR2 SDRAM DDR2 SDRAM DDR2 SDRAM
メモリサイズ 128MB 256MB 256MB 512MB
メモリインターフェイス 64bit 64bit 128bit 128bit
メモリ帯域 6.48 GB/sec 6.4 GB/sec 12.8 GB/sec 12.8 GB/sec
消費電力 21W 35W 38W 42W
対応API ? OpenGL OpenGL 2.0 OpenGL 2.1 OpenGL 2.1 OpenGL 2.1
対応API ? Direvt-X Direvt-X 9.0c Direvt-X 10.0 Direvt-X 10.0 Direvt-X 10.0
性能SPECviewperf v9 による実測値=スコア)
Quadro
FX 350 FX 370 FX 570 FX 1700
3dsmax-04(3DCG 16.69 25.61 30.02 34.73
上昇率 基準 153 % 180 % 208 %
catia-02(CAD) 19.70 35.86 41.57 44.47
上昇率 基準 182 % 211 % 225 %
ensight-03(CAD) 7.94 17.85 23.03 29.38
上昇率 基準 225 % 290 % 370 %
light-08(3DCG 23.73 35.20 37.68 37.76
上昇率 基準 148 % 159 % 159 %
maya-02(3DCG 34.35 52.19 73.01 110.80
上昇率 基準 152% 216 % 323 %
proe-04(CAD) 15.88 26.54 32.48 39.51
上昇率 基準 167% 205% 249%
sw-0(CAD)1 21.80 34.36 44.84 56.12
上昇率 基準 158% 206% 257%
tcvis-01(CAD) 4.52 6.94 9.09 15.04
上昇率 基準 153% 201% 333%
ugnx-01(CAD) 2.43 6.93 8.91 14.29
上昇率 基準 285% 367% 588 %

FireGL の SPECViewperf の結果はこちらで公開されてます。SPECViewperf のバージョンは 8 であるため、この表と比較する事は出来ません。

上記表(仕様書、公表値)から見えてくるもの

コアクロックの高い Quadro FX-350 ですが、Viewperf のベンチスコアは高くありません。つまり GPU が一世代古い事がこの表から読み取れます。後に発売された FX 370 は実売 2万円で FX-350 より高い性能を持っている事がわかります。

新しく発売された製品は全て最新の 3D-API である OpenGL 2.1 、DirectX 10.0 に対応しています。

スコアの上昇率に関して

上記表の "上昇率" は、Quadro FX 350 を基準とした場合の値です。SPECviewperf はアプリケーションのビューポート速度をシミュレートします。 3DCG ソフトの Lightspace のスコアに着目してみると、実売 8万円の Quadro FX 1700 と 3万円の FX 570 は殆どスコアは変わりません。

アプリケーションにより OpenGL の実装に違いがあるため、同じビデオカードでもパフォーマンスに大きな差が出ます。つまり、価格が高いものほど良いという訳ではなく、ご自身が使用するアプリケーションを基準に選ぶ必要がある事が分かって頂けるのではないかと思います。

3DCG ソフトウェアの中では、MAYA (ver6.5)が価格相応にパフォーマンスが向上しています。 588%の伸び率を示している UGS NX 3(CAD) が目的の場合、Quadro FX 1700 のコストパフォーマンスは極めて高い事が分かります。

その他 注意すべき点

バス規格、出力、マルチディスプレイなどのビデオカードの基本的な仕様に関してはここでは割愛します。この点は別コンテンツでまとめる予定です。

SPECViewperf はジオメトリ演算重視

SPECViewperf の OpenGL 描画性能は、光源やオブジェクトの表示速度に重点が置かれており、どちらかと言えば、CAD 寄りです。3DCG ではテクスチャも重要なポイントになるため、SPECViewperf では見えてこない要素も含まれます。

テクスチャに関してはビデオカードのメモリ容量、メモリのタイプ、バスクロックが大きく影響します。

消費電力

消費電力に注目してください。FX350 と FX1700 では消費電力の差は2倍の差があります。もっと上のクラスになると 200W 近く消費するビデオカードもあります。40W でも従来のビデオカードに比べ大きな消費電力です。もちろん電気代もかかります。

40W クラスのビデオカードで今時のデスクトップPC なら、最低でも 400W ~ 550W ぐらいの電源は見ておいた方が無難です。PCの電源がカツカツだと起動できない、動作が不安定になる恐れもあるため、お使いのPCによっては電源の交換が必要になるかも知れません。

パソコンの安定動作には電源の質も不可欠な要素です。

OpenGL ビデオカードのコストパフォーマンスについて

ウルトラハイエンドともなると実売価格 60万円を越える製品もありますが、実売2万円の FX370 の 30倍の性能が得られる訳ではありません。 特に高価なビデオカードほど実際のアプリケーションで現れる差は少なくなります。

このようなビデオカードが必要とされるのは工業CAD 、3DCGでは性能が最優先されるプロダクション、プロフェッショナル用途です。一般の方が購入するような製品ではありません。

ハイエンドクラスの Quadro FX が求められる分野

工業CAD をはじめとする複雑なオブジェクトを扱う CAD 分野と 3DCG 分野においてはテクスチャ表示に重点が置かれる映像制作はモーションの確認作業など大幅に生産コストを抑える事が出来ます。

GPU の性能とは関係の無い3D系映像処理

キャラクターアニメーションなどIK(インバース・キネマティクス)を多用するケース、またはダイナミクスなど物理計算アニメーション、パーティクルなどの特殊効果を主体とした映像制作の場合、これらの演算処理はビデオカードではなく、CPU の処理能力に大きく依存します。

物理演算が分散・並列処理に対応していれば、マルチコアCPU、マルチCPU環境のアドバンテージが高くなります。

レイトレーシングラジオシティなどのレンダリング処理に関してはビデオカードの性能は関係ありませんが例外もあります。

ハイエンド3Dソフトの中にはOpenGLを使用したハードウェアレンダリングや、アニメーション・プレビューのための計算、モーションの確認作業に重点をおいた場合、表示速度の速いビデオカードの方が生産性は高くなります。

この他にも GPU を使って IBL 計算を行いベイク(テクスチャの焼付け)処理に活用するといった用途もあります。今後、CPU ではなく GPU 側でレンダリングを行うという流れも出てくるかも知れませんが、現状ではあまり意識しなくて良いと思います。

3DCGに関する技術的な知識が必要なので初心者にとっては総合的に判断する事は難しく、これから Lighwave 3D・MAYA・3dsMax・CINEMA4D・XSI 等で 3DCGをはじめられる方は安価な Quadro / FireGL 系ビデオカードを推奨します。


あけぶれ公式サイト

3DCG ビデオカードの選び方

  1. はじめに (コンテンツの概要)
  2. 誤った認識と誤解について
  3. SPECviewperf による検証
  4. OpenGL の確認と適正検査
    1. LightWave のケースを例に
  5. Quadro FX 選定アドバイス
    1. Quador FX 350 性能・目安
  6. 製品選びポイント (まとめ)

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