キャンバス上に展開された3Dデータをまるで絵を描くかのようにブラシツールを使用して造形、テクスチャーを作成するソフトです。3Dモデラーとしては法線マップ、変異マップに特化したソフトです。
ペイントソフトの感覚で3Dイメージを制作するためイラストレーター、アーティストに幅広い支持を得ています。また、映画 ロード・オブ・ザ・リング でモデラーとして使われ注目された経緯もあり、現在は動物や人物専用のモデラーとしても注目されています。ILM でもクリチャ作成ツールとして正式採用されたそうで、その実力の高さが覗えます。
他の3Dグラフィックソフトにはないアプローチで形状を作成します。ZBrush のモデリングには、大きく2つのアプローチの仕方があります。いずれの方法もまるでペイントソフトを使うような感覚で造形を進めていきます。
また、直接ペイントによる強力なテクスチャ作成機能も ZBrush の重要な機能の一つです。
少ない骨子で滑らかな形状を得るサブディビジョン系ポリゴンモデリングです。ZSphere の名前が示す通り連続する球状で骨格を作成する事でベース形状を作成します。
スケルトン(骨)のように描画できるため、モデリングに不慣れな人でも、簡単にキャラクターなどのベースモデルを作成する事が出来ます。また、一般的なパッチポリゴンモデラと同様に頂点レベルでの編集も可能です。サイトに公開されているムービーを見る方が早いです。
参照 => ZSphere2 を使用した魚のモデリングムービー (QuickTime 15分)
参照 => Martin Krol 氏によるデモンストレーション (QuickTime 15分)
このZSphereは、ディスプレイスメントマップ、ノーマルマップを前提とした形状の作りこみが行えます。
もう一つはポリゴンベースのモデリング手法です。メッシュ形状を細分化しペイントソフトと同じ感覚で起伏を描いていきます。数百万ポリゴンレベルの高密度のサーフェイスでも通常のポリゴンモデラ-ではありえない速度で起伏をつける事が出来ます。
ペイントソフトのスプレーツールで描くようにリアルタイムに処理する事が出来るように様々な工夫もされています。
何れのモデリング手法も、スプレーツールを使用して造形を行います。また、テクスチャーも同様の方法で描くため、キャンバス上に表示された絵画を描くように、3Dイメージを制作する事が出来ます。
こちらのVue の地形エディタも同じ3D技術を応用したものです。
非常に強力なマクロ機能を備えており、処理の自動化も行えます。3D グラフィックソフトのようなシーンを組み立てるためのインターフェイスは備えておらず、ペイントソフトのようなインターフェイスを持っています。
ショートカットやパレットなど良く考えられたインターフェイスで、生産性を高めるための工夫が随所に見られます。また、動作も軽快です。
3Dシェーディングについては、一般的に3Dグラフィックソフトに必須とされる3Dアクセラレーターを搭載したビデオカード(OpenGL)を必要とせず、CPUと独自のシェーダーで全ての処理を行います。そのため、性能の高いCPUを搭載したパソコンほど処理能力が向上します。
3Dアクセラレーターを必要としないため、ビデオカードのドライバ設定変更などソフトを切り替えるたびに発生する煩わしさもありません。他の3Dグラフィックソフトとの共存にも適しています。
直接ペイントした結果を変異マップとしてリアルタイムに処理する事が出来ます。これにより、まるで絵を描くかの様にディスプレイスメントマップを使用した形状を作り込む事が出来ます。これらは、グレイスケール画像から得られる情報であるため、低解像度の骨子ポリゴンを維持、ZSphere との関係も維持されます。
また、画面上で滑らかな形状を得るためには、パッチポリゴンの分割率を高く設定する必要がありますが、通常の3Dグラフィックソフトが持つモデラーでは考えられないほどの表示速度(リアルタイムレンダリング)で行う事が出来ます。
ここで得られたディスプレイスメントマップ情報や法線マップ情報を出力する事が出来るため、これらの機能を有する3Dグラフィックソフトへほぼ近い形状で持っていく事が出来ます。
ただし、サブディビジョン系ポリゴンの持ち方は、それぞれのツールでアルゴリズムが異なる上、法線マップやディスプレイスメントマップの品質にも差があるため必ずしも同じ形状になる訳ではありません。また、最新の SOFTIMAGE|XSI ver5 のように ZBrush との連携を強化しはじめた製品も出ています。
このようなリアルタイム ディスプレイスメントマップでモデリングが行えるのは ZBrush 以外に他になく、ディスプレイスメントマップのためのモデラーとして利用されています。
次のバージョンでもモデリングに関する機能強化が中心となるようです。目の付け所が良いというか、生産効率に対しての着眼点が実に素晴らしいです。次期バージョン(無償アップグレード)で搭載される機能は、以下のページで紹介されています。
http://pixologic.com/zbrush/media_links/movies2.html
従来の ZSphere にスケルトン(骨)機能を負荷します。一般的にスケルトンと言えば IK と組み合わせたアニメーション制作が思い浮かびますが、Maya や XSI などでは、スキニング(変形)可能なスケルトンは、アニメーションだけでなくモデリングにも応用します。(LightWave3D はモデラーとレイアウトが分かれているため気軽には行えない)
参照 => スケルトン化された ZSphere (QuickTime Movie 7MB)
このような視点でムービーを見ると、この機能の素晴らしさを実感します。
過去に作成したメッシュ、及び ZSphere に サーフェイス リグを設定できる機能です。サーフェイス表面に描画するだけで、新たにサーフェイスを作成し、しかも元の形状との関連性を持つ事が可能になります。
デモムービーを見ただけで非常に応用範囲の広い機能である事に気が付くと思います。サーフェイスの再構築だけでなく、例えば、フェイシャルアニメーションのためのモーフターゲットオブジェクトの作成や、衣服のモデリングなどです。
参照 => サーフェイス リグ紹介ムービー (QuickTime Movie 17MB)
参照 => ZSphere モデリング リグ紹介ムービー (QuickTime Movie 24MB)
ZBrush は ペイント感覚でモデリングからテクスチャー作成、レンダリングによる最終イメージ制作まで行えるツールで、イラストレーターやアーティストに人気があります。最近では、ディスプレイスメントマップ作成、UVテクスチャ作成など、リアルなキャラクターモデリングツールとして注目されています。
ZBrush は自動車など正確さが要求されるモデリングは苦手ですが、ペイント感覚で造形が行える ZBrush は、デザイナーがイメージを膨らますためのデザインツールとしても魅力的ではないかと思います。
現在のところ、このような活用をされている方はネットでは見かけません。ウエイトによるエッジの表現など、機械などの無機質なモデリング機能も強化されつつあり、直感的に操作できる点は、デザインツールとして有効だと思います。
法線マップやUVマップ、テクスチャーを書き出せるため(OBJのみ)、これらの3D技術が必要とされるゲーム開発や、動植物、クリチャなどリアルな形状データが必要とされる映像制作やイメージ制作に適します。特にフェイシャルアニメーション、リップシンクアニメーションのためのモーフターゲット制作のためのモデラーとしても非常に魅力的です。
3Dモデリングに関する知識がなくても、直感的に造形が行え、形状データに直接ペイントを行えます。もともと3Dイラストレーション作成のためのソフトウェアであり、3次元ソフトではなく、2.5次元ソフトと呼んでいます。
ZBrush は一般的な3Dグラフィックソフトが持つシーンを組み立てるためのインターフェイスはありません。また、ライトに関しても空間の演出というよりオブジェクトを照らすためのツールとなっています。この分野で活用できる事はこれといって思い当たりません。