前のページでは単純にサーフェイス分割率を無視して作成した際にどの程度、レンダリングコストが増すのか Maya の二つのレンダラで確認しました。
ここではレイトレーシングの基本的な反射・屈折・透過の計算速度がレンダリング時の総ポリゴン数にどの程度影響しているのか、ちょっと気になったのでLightwave v9 を使用してテストして見ました。
スムージングの説明で使用したオブジェクトを使用して簡単なシーンでテストします。使用したソフトはLightwave v9 、光源は二つ(一つはシャドーマップ)で凝った事は何もしていません。(原稿書きながら3分程度で作ったもの)マテリアルとポリゴン数以外、全ての設定は共通します。
シーンの影は計算によるものではなくShadowmap を利用しています。レイトレーシング・シャドーを有効にした場合もテストしましたが同じような結果になりました。
ここで説明した、少ないポリゴンをスムージングで調整したオブジェクトを 25 個 配置しています。サブパッチ・オブジェクトはシーン内に存在していません。
■レンダリング方式 : レイトレース
■計算時のポリゴン数 : 3844
■レンダリング時間 : 2.0 秒
■反射・屈折・透過 : なし
(クリックで拡大します)
計算は殆ど一瞬です。2.0秒の内訳の半分はアンチエイリアス処理という感じ。
■レンダリング方式 : レイトレース
■計算時のポリゴン数 : 3844
■レンダリング時間 : 9.4 秒
■反射・屈折・透過 : あり
(クリックで拡大します)
上記オブジェクトのマテリアルに透過、反射、屈折を使用しただけでそれ以外は全て同じです。
反射・屈折・透過によるレンダリング上昇率は約 5倍 です。
同じ形状をサブパッチ形状に置き換えています。テスト条件はレンダリング時の総ポリゴン数以外は全て同一条件です。
Modeler 側での見かけ上(ビューポート表示)は、上記ポリゴン・オブジェクトと変わりありませんが、レンダリング時に左図のメッシュを消費しています。
■レンダリング方式 : レイトレース
■計算時のポリゴン数 : 652994
■レンダリング時間 : 10.4 秒
■反射・屈折・透過 : なし
(クリックで拡大します)
サブパッチの分割率が高いため、総ポリゴン数は実に 170倍です。レンダリング時間は、2秒から 10秒の上昇、5倍程度に抑えられています。
■レンダリング方式 : レイトレース
■計算時のポリゴン数 : 652994
■レンダリング時間 : 29.4 秒
■反射・屈折・透過 : あり
(クリックで拡大します)
同様に、反射・屈折・透過を設定したマテリアルを適用して計算しています。
反射・屈折・透過によるレンダリング上昇率は約 3倍 です。
ポリゴン数が増えることによって、比例してレンダリング・コストが増えると見ていたのですが上昇率は 3倍となりました。とはいえ、少ないポリゴン数の総数が少ない方は 10.4 秒ですので 6割もの無駄なレンダリング・コストが発生しています。
少なくとも、レンダリング時は必要最小限のポリゴン数に抑えることで計算時間を大幅に削減する事が出来ます。ここで示したように得られる品質に大きな違いはなく、サーフェイス分割率は無視できない基本的な問題である事が分かると思います。
これから3DCGに取り組まれる方は、サブディビジョンやNURBSばかりに頼らず、ポリゴンとスムージングだけで作成、表現する方法にも目を向けて下さい。
繰り返しになりますが、3DCG ソフトウェアが持つレンダラによって特徴は大きく異なります。大切なのはご自身が使用しているレンダラの癖を把握することだと思います。自分の場合、ラジオシティよりも特にレイトレーシングに関する機能に目が行きます。
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