モデラーと呼ばれるソフトウェア、叉はソフトウェアから提供されるモデリング機能を使用し造形を行う制作工程です。形状データがなければ、制作は先に進みませんので、3DCG 制作において最初に突き当たる大きな壁と言えます。
このページでは建築物や工業製品など一定の精度が求められるモデリングと、人や動物といった厳密な数値入力とは無縁の有機形状モデリングに大別して 3Dモデリングについて考えます。
具体的には、ディスプレイ(二次元)を通した仮想の三次元空間内で、サーフェイス(面)を構成する頂点やコントロールポイントを整地する事で造形を行います。非常に地道で根気のいる作業となります。
つまり、3Dモデリング作業は頂点編集作業そのものと言えます。平面(二次元)であるブラウン管 (液晶画面) で造形するため、3Dモデラが提供するインターフェイスの出来、個人の空間認知能力の差は作業効率、生産性に大きく関ってきます。
形状データには、大きく二つのタイプが存在します。一つはポリゴンをベースとした形状データ、もう一つはスプライン曲線により求められる形状データです。
面を表現するには、最低3つの頂点を結ぶ必要があります。つまり三角形が最も小さな面の単位でポリゴンといい、これらが集まって形成されるサーフェイス(面)をポリゴン・メッシュと呼んでいます。
少ないポリゴン・メッシュの頂点を補完して滑らかな形状が得られるサブディビジョン系のポリゴンモデラもポリゴンモデラに属します。
後述するスプライン系モデラとの大きな違いは、頂点、ポリゴン単位で編集が行える点にあります。
交差するスプライン・カーブにより面を自動的に求めるタイプの 3Dモデラです。少ないコントロールポイントで造形が可能です。UVという概念があり、一つのサーフェイスには縦と横の一連の流れが存在します。
ポリゴンモデラとの大きな違いは、ポリゴン、頂点単位の編集が行えない事です。人の顔などの細かな造形には適しませんが、コントロール・ポイントによる正確なカーブ編集が可能なため、フォルム全体の修正に適した側面を持っています。
モデリングに関する機能は、上記、形状データの属性によって提供される機能は異なります。後述しますが、それぞれに得意、不得意とするモチーフがあるため、3Dソフトウェアを選ぶにあたって、これらの特徴、対応している形状データの属性について最低限知っておく必要があります。
参照 => 3DCG モデラーのタイプ(種類)と特徴について
モデリング専用の 3D ソフトも存在します。モデリング機能を提供する統合型 3DCG ソフトでも、外部の3Dモデラを使用して制作を行う場合もあります。
特に最近ではスカルプト・モデリングというポリゴンとディスプレイスメント・マップを併用したペイント感覚で行うモデリング手法が注目されています。
モデリング対象物(モチーフ)は、冒頭で述べたように 建築物 や 工業製品 など無機質系 と 人や 動物 といった有機物系 にモチーフを大別する事が出来ると思います。
人や動物、衣料など 3Dモデリング では頂点の編集に厳密な数値入力を必要としません。
そのため、このようなモチーフを得意とする3Dモデラを 『 粘土をこねるような感覚』、『直感的』 という表現をされる方もいます。
一般的にパースペクティブ・ビューをメインにモデリングを行います。
数値入力の求められないモチーフは、使う人のデッサン力、空間、形状認知能力が作品の出来栄えに大きく影響すると考えることも出来ます。
このモチーフに適した 3Dモデラーはサブディビジョン系のポリゴン・モデラーになります。理由はボーンによるオブジェクトの変形、1ポリゴン(面)単位での編集が可能で制約が少ないといった理由からです。
統合型3DCGソフトでは、LightWave 3Dの ポリゴン・モデラーが操作性が高く、この系統では最強の部類に入ります。 (他ツールとの親和性から私はポリゴン・モデリングは Lightwave を愛用しています。)
人や動物などキャラクターモデリングの場合、大まかな形状に分割して考えるようにします。これは、デッサンのあたりをつける作業に似ています。具体的には、プリミティブ形状に置き換えて考えます。
例えば、人の腕や脚は、円柱から起こしたほうが近道かも知れませんし、丸顔の人は球体から、四角い顔つきの人は、立方体から、または、複数の単純なプリミティブに分解して置き換えて考えます。これは、デッサンのあたりをつける作業と同じです。
有機物系 3Dモデリングで最も高い技術を要するのはリアルな人の顔や体です。逆の言い方をすれば、人の顔や体をリアルに造形する能力があれば、どのような 有機物系 3D モデリングも可能でしょう。
3Dモデラーを自由に使いこなせたとしてもモデリングの段階で頭の中に形状をイメージ出来なければリアルに造形することは叶いません。モデリング中の迷いをなくす上でも先にデッサンされてから臨まれる事をお勧めします。
また、3DCG ソフトウェアは道具に過ぎませんのでデッサン力のある絵心のある方とそうでない方では、根本的に作品のレベルが異なります。趣味ではなく仕事として 3DCG に関っていきたいと考えている方は、基礎体力は必要です。
少し考えを改めた方が良いという学生を沢山見てきました...
自動車に代表される工業製品や建築パースなど一定の正確さが求められるモチーフの場合、上記 有機形状とモデリングアプローチは異なります。
複雑な三次曲面で構成された自動車の場合、誤魔化しが利かないため、高度なモデリング技術も要求されます。
制作にあたっては3・4図面などの資料が必要となります。
複雑で正確な三次曲面が求められる形状においては、スプラインベースの 3Dモデラに武があります。上記、サブディビジョン系ポリゴン・モデラでも可能ですが面単位で編集を行うポリゴンに対し、コントロールポイントによる編集は全体の修正が容易です。
特に XSI やMayaが有する NURBS モデラ は、トリムやフィレットなど高度な編集機能を持っており、工業製品などのデザイン検討用モデリングに適した側面を持っています。
直感的とよく言われるサブディビジョン系ポリゴン・モデラに比べ、ルールの多いこのタイプのモデリングには高い技術力が要求されます。自由度の低いスプラインベースのモデラ ( Shade など) ほどテクニックが要求されます。
NURBS モデラのモデリングアプローチについは以下で紹介しています。
参考 => 自動車を題材にしたNURBSモデリング
ここでは有機物系、無機物系に分けて 3Dモデリング を考えてみましたが、全てにおいて当てはまる訳ではありません。例えば、CINEMA 4D は Ligtwave 3D と同じくサブディビジョン系ポリゴンをベースにしていますが、簡単なNURBSサーフェイスにも対応しています。
Maya や XSI が標準で提供している NURBSモデラのような高度なモデリングには適しませんが、洋服のデザインによってはこのようなサーフェイス属性の方が生産性が高い場合もあります。
統合型 3DCG ソフトによって有するモデラは異なり、複数の属性を扱える 3Dモデラを提供している製品もあります。しかし、何れのソフトウェアもメインとなるモデラが存在します。
例えば、Shade のように後にサブディビジョン系ポリゴン・モデリングをサポートした製品や Softimage から XSI 、Wavefront から Maya のように元来 サブディビジョン系ポリゴンモデラを提供していなかった製品もあります。
何れにもしても後から追加されたモデラーは、従来から持っていた機能に大きく劣る場合があります。(ハイエンドの XSI や Maya は既に払拭されている) この場合、ソフトウェアが元来持っていたモデラがメインと考えて製品を選ばれると後々公開しません。
どのようなモチーフであれ観察力は必要です。練習のために、あえて同じ形状をモデリングすることはあっても、実制作においては、同じ形状をモデリングすることは殆どないため、数をこなすほど技術は向上します。
どのような形状であっても、どうすれば効率よく造形できるか作業前のモデリング・プランを立てる必要があり、この計画如何で後の生産効率は変わってきます。
つまり 3Dモデリングとは常に応用力が試される工程であり、初めから上手い人はいません。諦めずに数をこなす、経験を積めば、操作に慣れるだけでなくモデリング・プランの精度も高くなります。これが肝要かと思います。
3Dモデリングにおいて、車の作り方、顔の作り方、体の作り方、といった決まった方法は存在しません。よく雑誌や参考書籍などで見かけるお題目ですが、誤解をしている方が多いように思います。(実際に大半の学生がそうでした)
同じ車でもデザインによって適切なモデリングアプローチは異なります。手の作り方であっても他に良い方法があるかも知れません。先に述べたようにモデリングとは常に応用力が常に試される工程であり、書籍などを参考に考え方を固定化してしまうのは危険です。
現在会得しているモデリング技術でどうすれば効率よく正確に作れるか、常に考えるようにして下さい。そうする事で自然と応用力が身に付きます。このような書籍は、一つのアプローチの例、ヒントとして考えるようにして下さい。
書籍購入に関するアドバイスは、 【独学・学習の手引き】 でも説明しています。