ラジオシティでは、光源(ライト) > オブジェクト > 視点(カメラ) の方向でサーフェイスを求めます。これはレイトレーシング方式と全く逆です。光源から四方に広がり、視点へ到達するためレンダリングパスが増大するため、レンダリングに要する時間も膨大になります。
特徴を挙げると以下のようになります。
ラジオシティ計算の品質に関する設定はアルゴリズムやパスの最適化などを行いますが、パスが少ないとカメラ(視点)まで届く光もまばらになります。高い画質を得るには密度が必要でレンダリングパスを増やす必要が出てきます。
絵画的な発想で光源を扱うレイトレーシング方式と異なり、環境光は計算により導き出されます。一つの光源であってもシーン内の全てのオブジェクトに干渉するため、どの程度の環境光が得られるのか予想が難しくなります。(機械任せ)
レイトレーシングと同じアプローチで考えると光が溢れて真っ白になってしまいます。
レンダリングコストの高いラジオシティ系のレンダリング方式で絵作りを行うには、レンダラが提供するカスタマイズ性が重要なカギを握ります。例えば、特定のオブジェクト、ライトに対してのみラジオシティレンダリングを適用し、レンダリングコストを抑えるかといった考え方です。
これらはラジオシティでは表現の難しい材質(金属やガラス)を計算の対象から外す場合に必ず必要になります。
レンダラ側でこれらの機能が提供されている必要がありますが、ラジオシティをサポートする低価格な 3DCG ソフトはカスタマイズ性は皆無に近い製品が多いです。
比較的あたらしい機能にテクスチャの焼き付け機能があります。ミドルクラス以上の統合型3DCG ソフトの多くはサポートしています。この機能は、レンダリング結果をテクスチャとして貼り付ける機能です。
この方法は光源が移動するアニメーションには使えませんが、レンダリングは最初の一度だけで済むため、建築分野でのウォークスルーアニメーション制作においてレンダリングコストを大幅に削減できる魅力的なアプローチです。(ベイクはラジオシティのために提供される機能ではない)
欠点は光源そのものが動くアニメーションには利用できない、反射を再現できない事です。反射に関しては視点移動により移り込みも変化するためですが、工夫で何とかなる可能性はあります。(多重マップなど)
ベイク機能は低価格な製品では搭載されない事が多いです。
アンビエント オクリュージョンとは、ラジオシティ レンダリングの特徴でもある柔らかい陰影のみをシミュレートするアプローチで標準で機能を提供するレンダラもあります。製品によってレンダラへの実装に大きな差がありますが、レイトレーシングと併用する事でレンダリングコストを下げてラジオシティらしい効果が狙えるアプローチです。
Lighwave 3D ではこちらで無料のプラグインが配布されています。説明よりイメージを見たほうが分かりやすいと思います。
このように使用するレンダリング方式によって、ライティング = 絵作り の手法は全く異なります。特に初めて 3DCG に取り組まれる方は、過去のレンダリング方式の移り変わりを経験していないので、混乱されている方も多いのではないかと思います。
ここではレンダリング、計算方式を視点に説明しましたが、統合型3DCGソフトが提供する光源モデルにも差※があります。それぞれの特徴を理解した上で複合的、且つ合理的に活用する必要もあります。
※例えば、スカイライトやアンビニエンスライトなど。Lightwave 3D にはオーソドックスな光源モデルしか用意されていないなど。 ※最近発表された Ver 9.5 では Ver 6.5 以来(だったと思う)、初めて新しい光源種が拡張されています。(期待は大きい)
次のページでは、ここで説明したラジオシティのレンダリングコストを抑え、フォトリアルなイメージ表現を可能にしているその他のアプローチを紹介します。