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液晶ディスプレイのドット(素子)ピッチと解像度

3DCG制作者のための液晶ディスプレイ選び

液晶ディスプレイを選ぶ上で最も基本的な事柄でありながら購入後、最も後悔するケースが多いのがドットピッチ(素子サイズ)の問題だと思います。応答速度視野角と同様に CRT では問題にならなかった液晶ディスプレイの表示原理に関係します。

液晶ディスプレイの表示原理

LCD(液晶)で 1ドットは 1素子(画素)で表現します。左は液晶ディスプレイをマクロ撮影した画像ですが、1画素は R・G・B 3つで構成されており、色はそれぞれの変化で表現します。また CRTと違ってドットエッジはくっきり表示されます。s

CRT の場合はこの1素子にあたるサイズを変える事が出来るため解像度を切換える事が可能ですが、LCD の場合は素子の物理的な大きさは変わらないため固定されます。

解像度を変える事は出来ますが滲みが発生します。滲みのない状態で表示させるには、1ドットに対し1素子、または2×2素子など区切れる数を割り当てられる必要があるため、実質、液晶ディスプレイの表示解像度(緻密さ)は変更出来ないと考えて差しさえありません。

一般的にフル解像度と呼ばれる表示はデスクトップ画面 1ドットに対し1素子を使った表示になるためディスプレイの表示サイズは固定される事になり、CRT のように縦横スケールを自由に変えるという事も出来ません。

WUXGA 液晶ディスプレイの場合は横に 1920個、縦に 1200個の素子が並んでいる事になり、1素子のサイズが大きい程、ディスプレイの物理面積も大きくなる訳です。素子サイズによって実際の表示密度、つまり、デスクトップの表示される大きさが決定する事になり、CRTと構造上最も異なる部分と言えます。

言葉だと分かり難いですが実は極めて単純な話で、自分にあった素子サイズが分れば、今後はそのサイズに注目して購入すれば後悔せずに済む、という話しです。

素子サイズの違いによるメリットとデメリット.

素子サイズの違いによって考えられるメリットとデメリットです。

素子サイズが小さい場合

1ドットを描く素子サイズの物理的な大きさが小さい程、システムフォントの表示やアイコンは小さくなり、表示されるサイズも縮小されて表示されます。そのためディスプレイとの距離が近くなるため、目の負担、ディスプレイ両端の視野角が厳しくなります。

NANAO は 「素子が小さければ小さい程、高画質でよい」 としています。しかし、このメリットは高解像度画像を等倍で表示させた場合に限られますのでフォトフレームや医療用などの用途以外で意味があるとは思えず、実作業を行なうコンピュータ ディスプレイとしてのメリットはありません。

小さな文字もフォントサイズを上げれば対応出来ると思われがちですが、全てのアプリケーションの UI を変更出来る訳ではないため、結局小さな文字と格闘する羽目になります。本稿では 3DCG 制作をテーマに液晶ディスプレイを選んでいますが、ご存じのようにレンダリングは1ドットの色を計算によって求めます。

素子サイズが小さい程、ディスプレイに表示されるレンダリング画像も小さくなるため、表示される見た目の大きさでレンダリングサイズを決定してしまうと無駄にレンダリングコストを引き上げる事にも繋がります。

また、Web デザインなど実際の解像度(dpi)が重要となる作業用途ではこれまで使用してきたディスプレイに表示されるスケールが大きく異なるとデザインやレイアウトの感覚が狂ってしまうため作業に支障が出ます。

素子サイズが大きい場合

ディスプレイと一定の距離が稼げるため、視野角、眼精疲労の面で有利になります。レンダリングは最後の行程ではなくて確認のために何度も繰り返す事になるため、3DCG においては制作期間が無駄に長くなってしまう可能性も少ないと言えます。(レンダリング画像が小さくても密度が高ければ良いという人はこれに該当しませんが)

また CRT と違って LCD はドットがはっきりするためエッジのガタツキを気にする方もいますが、小さい方がデメリットが多いため私は全く気になりません。デメリットとしては CoolType や ClearType など液晶ディスプレイ向けのテキスト・アンチエイリアス処理時に発生するエッジ色が目立ち易くなるといった所でしょうか。

適度なサイズは? ~ 物理サイズと解像度.

液晶ディスプレイは素子(ドット)の大きさで実際に表示されるサイズが決まりますが、同じ解像度でも異なる物理サイズの液晶ディスプレイが存在します。つまり、液晶素子(ドット)のサイズのサイズには複数存在します。

例えば、現在、解像度WUXGA(1920×1200)のワイドディスプレイには物理サイズが25.5 / 24.1 /22インチの製品が存在していますが、この中で最も素子サイズが小さいのは 22インチワイドである事は説明するまでもありません。

解像度とはそもそも密度(緻密さ)を示す言葉であり、印刷物においては dpi という単位で表します。dpi とは "dot per inch" の事で 1インチあたりにどれだけのドットを使って表現するかを表します。つまり密度(緻密さ)を示す単位です。

素子(ドット)の物理サイズが固定される液晶の場合も印刷物とまったく同じことが言え、コンピューター歴の長い方ほど最近の液晶ディスプレイの解像度は高すぎると感じている方は多い筈です。

1素子(画素)あたりのサイズが小さくなる傾向にあり、21~22インチで 1280 x 1024 が主流だったのに対し、液晶では 17インチで 1280 x 1024 の製品が大半を占める。NANAO はドットピッチが小さい程、美しく良い事だとしている。

WUXGA(1920x1200)ディスプレイの場合でも、25.5 / 24.1 /22インチワイドの製品が存在していますが、両方を並べるとドットが小さい24.1 インチは 25.5(26)インチに比べ一回り小さく表示されます。22インチでは更に小さい表示になります。

WUXGA は 24.1インチワイドの製品が大勢を占めるため、WUXGA 解像度で24.1インチが標準的なサイズと思われがちですが、実際はそうではなくかなり凝集されて表示されます。(解像度が高い) 感覚的には 25.5インチで Firefox で Ctr + マウスホイールで一段、縮小したぐらい見え方に差があります。

WUXGA 24.1インチの製品が多いのは、恐らく液晶パネルの製造コストなどの問題からそのパネルが大量生産、普及しているためで特に理由はないと思います。私は WUXGA の場合、25.5 ~ 27 インチが妥協できる標準的な表示サイズと考えています。

"解像度"という言葉はメーカーのカタログスペックでディスプレイの縦横のピクセル数を表すためによく用いられますが、そもそも解像度は緻密さを表す言葉で誤解を招く大きな要因であると考えています。CRTと違って物理的な素子サイズが変わらない液晶ディスプレイの場合は dpi で別途表記すべきだと思います。

目安

目安としてはデスクトップのスクリーン(スナップ)ショットを Mac であれば 72dpi、Windows であれば 96dpiで印刷した結果の大きさとディスプレイに表示される大きさが近い程 (若干小さめ)、標準的な見え方に近いと考えて良いと思います。

気になる方は一度試してみて下さい。

物理サイズと標準解像度の目安.

現在、販売されている液晶ディスプレイの物理サイズと解像度を調べました。この表で示したのは素子(ドット)サイズ 0.2840.311 mm が一定の距離を置く必要があるデスクトップ環境では妥協できるサイズで表示される、という目安です。

物理サイズ 縦横比率 ドットピッチ 現行解像度 実用解像度
17インチ 4:3 0.264 mm 1280×1024 1024×768
19インチ 4:3 0.294 mm 1280×1024 1152×864
19インチ 4:3 0.243 mm 1920×1200 1152×864
20インチ 4:3 0.255 mm 1600×1200 1280×1024
21インチ 4:3 0.270 mm 1600×1200 1280×1024
22インチ 4:3 0.282 mm 1680×1050 1280×1024
19インチ 16:10 0.284 mm 1440×900 1440×900
19インチ 16:10 0.243 mm 1680×1050 1440×900
20インチ 16:9 0.276 mm 1600×900 1280×768
20インチ 16:10 0.258 mm 1680×1050 1280×800
21.5インチ 16:9 0.248 mm 1920×1080 1280×768
22インチ 16:10 0.282 mm 1680×1050 1680×1050
23インチ 16:9 0.265 mm 1920×1080 1680×945
23インチ 16:9 0.249 mm 2048×1152 1680×945
24インチ 16:9 0.276 mm 1920×1080 1680×945
24インチ 16:10 0.270 mm 1920×1200 1680×1050
25.5/26インチ 16:10 0.287 mm 1920×1200 1920×1200
27インチ 16:9 0.311 mm 1920×1080 1920×1080
27インチ 16:10 0.303 mm 1920×1200 1920×1200

“実用表示サイズ” は小さ過ぎず、大き過ぎず、の適度な表示サイズが得られるであろう解像度です。ディスプレイに表示される見かけの大きさ(緻密さ)に関して規定がある訳ではないのであくまで参考値です。

特にCRTディスプレイで標準的に使われていた解像度なのでパソコン歴20年以上の方は馴染み深いと思います。(17インチ以上のディスプレイがなかった時代)

こうしてみると現在、販売されている液晶ディスプレイの殆どが小さめに表示される事が分ります。また、液晶ディスプレイを販売しているメーカーは多数存在しますが、ドットピッチ、解像度に関しては殆ど横並びです。

これは液晶パネルを製造しているメーカーは限られるので同じパネル(部品)を使い液晶ディスプレイを製造しているためです。


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