ターゲットが決まったので日本橋に出向き、RDT241WEX と RDT262WH を展示しているショップを探し実物を見てきました。同じメーカー、WUXGAという事で並んで展示されていましたが、展示環境は最悪で最も上の天井に近い位置、接続はアナログ分配で信号劣化しまくり。
その上、正規の解像度ではないし接続PCのVGAが WUXGAに対応していない、天井の照明との距離が1.5m 程しかないこれでもかというぐらい劣悪な環境。正面から見るどころか OSD にも触れません。店員に頼んで脚立を出してもらいました。端から見れば変な人ですが最も重要な商売道具ですので知ったことではありません。
実際に見て確認といっても大型店舗では環境が厳しく、動画性能や文字の見え方など全ての要素を確認する事は実質不可能に近いです。輝度が落とせているように見えてもそれは周囲が明る過ぎるためであり、実際、使ってみるとギャップに驚く事はよくあります。 AVルームを想定した部屋でパソコンとの一対一接続はショールーム以外に無理でしょう。
ショップで RDT262WH の sRGB色域制限(GAMUT)と並べて比較すると、RDT241WEX の方が鮮やか、というより RDT262WH が大人しすぎる印象でした。
調整機能も必要十分、sRGBの発色性能が決め手となり、 表示サイズが小さい点は妥協して RDT241WEX に決定、購入しました。
背面写真はあまり見かけないので後ろから失礼しています。
スタンドは至ってシンプルで高さ調整は出来ませんが後で購入する事になる RDT262WH よりも適度な高さだと思います。下はターンテーブルになっておりマウスに使っている滑りを良くするシールを100均でかった木の台の底に張り、手で簡単にスライド、奥行きを調整出来るように工夫しています。
RDT241WEX は RDT262WH の廉価版、というレビュー記事を良く見かけるのですがこれは誤りです。入力が少ない、Adobe RGB 広色域ではない事を理由にしているようですがこのディスプレイは sRGB を前提とする分野、特に映像制作に特化した機能を備えており、それは OSD の機能を見ても明らかです。
カラーマネジメントは Adobe RGB 色域でなければ行えないという事ではありません。
視野角はバックライトの漏れの影響か色の変化よりもコントラストの低下が気になりました。 ただ、体が完全にディスプレイの外へ出なければおきませんので実用上、問題はなく流石に IPS といった所です。
ディスプレイ中央に座って画面の端の色彩が変化する事はなく、頭二つ分左右に動かしたぐらいでは画面端の色が変わる事もなく TN / VA パネルとは比較になりません。
トリニトロン(CRT)になれた方であれば正に 「これよこれ」 という発色です。輝度を落としても黒つぶれを起こさないのは驚きました。sRGBにおける黒つぶれ、階調、再現性に関しては後に購入する事になる RDT262WH の sRGB モードよりも優れいています。
輝度を落としても黒つぶれが起きない豊かな階調表現は、広色域表示可能な12ビット LUT、 NTSC比102% を sRGB の発色、階調性能に生かした結果が現れており、これは素人目にも分るレベルです。
Adobe RGB 広色域を前提としたディスプレイと全く分野の異なるディスプレイなので、これらと同等に評価できるディスプレイではない事を実感します。
輝度邑については当たり外れがあるので全てがそうではありませんが、私が購入したRDT241WEXは中央を縦にうねうねと濃いめの邑が横切っており大ハズレでした。
IPS は白黒、中間色などの条件違いによる応答速度のバラツキが少ないという特徴があり、オーバードライブにより応答速度を高めた場合も TN/VAと比較した場合、オーバーシュートは発生は抑えられる事もありそこそこ良好な結果は得られています。
応答速度を売りにしているAV向け VA液晶と同等の動画鑑賞を期待すると見劣りする
ネットで調べていて Pixel Persistence Analyzer というツールを使ったテストが紹介されていたので試してみました。 シャッタースピード 1/60 で撮影しています。
何度か撮影してみても前後に4つ残像が発生していますが、輪郭部に明確な偽色も発生しておらず極めて良好です。
IPS という事で心配した応答速度ですがオーバードライブの恩恵は大きいようです。CRTに比べるとかなり違和感がありますが LCDである以上、妥協せざる得ません。
3DCGソフトには白背景に黒ワイヤーフレームがデフォルトのものがあるので表示色をカスタマイズすると改善する場合があります。
OSD の機能は RDT262WH よりも高機能で操作し易く調整機能も必要十分です。(目的から言って調整機能が少ないのは当然ですが)特に信号が途絶え一定時間を経過すると待機モードから電源をオフにする機能は便利です。
輝度を落とした場合、ワットチェッカーで33~35W程度らしく省電力性能も申し分ないと思います。
また、どの程度、電力をセーブできているかモニターも可能で、RDT262WH よりも機能面で優れているように思います。
私は待機モードで放置するよりその都度正面の電源ボタンで切る癖があるのでこの機能は非常に重宝します。特に学校や職場ではこの機能はありがたいと思います。ちなみに RDT262WHは背面の簡単には押せない位置に主電源スイッチがありますが RDT241WEX にはありません。
ピクチャー/CG モードの二つがあり、それぞれ3つ、合計6つのプリセットが用意されていますが、プリセットをそのまま使うには抵抗のあるきつめの設定となっていますが、それらを変更して保存する事が出来ます。
プリセット呼び出しボタンが用意されているので状況に応じて直ぐに切換える事が出来るので便利です。色温度や輝度を調整してプリセットし必要に応じて切換えるといった使い方が出来ます。sRGB モードが用意されていますが、sRGB ディスプレイであるため広色域ディスプレイの sRGBモードとはニュアンスが違います。
単に sRGB (6500K) 固定、標準的な sRGBディスプレイでの見え方を確認する際に使います。また、色温度についても自分で調整したい場合、ディスプレイに定義されている色温度の値を参考に変更できるためOSDの調整はし易いです。RDT262WH はこれが出来ません。
もっとも感動したのこの機能です。ブラックレベルを事前に設定したカスタム値に切換えるための専用ボタンが用意されています。主にCG制作、LBL用HDR処理、映像制作において黒い部分が破綻していないか確認する際に活用できます。
また、戻し忘れがないようにLEDが点滅して知らせてくれます。この点も作業者によく配慮されており、この機能はかなり感動しました。これは使えます。
テレビ放送、家庭用テレビにおける出力特性に適したガンマカーブが用意されており、Sカーブ、Cカーブ、オプション(DICOM医療用ディスプレイ相当)を選択出来ます。おそらく実際にこれらの機器に出力した際の見え方をシミュレーションする用途を想定しているものと思われます。
これらガンマカーブを使用したプリセットはデフォルトで登録されていますし、それを変更して自分ごのみのプリセットとして調整する事も可能です。
RDT262WH ではこの機能は排除(改悪)されましたが RDT241WEX は5段階で調整可能です。
このように RDT241WEX は RDT262WH の廉価版ではなく、明らかに sRGB を主体とする制作に特化した業務用ディスプレイである事に間違いありません。
このディスプレイは広色域を排除して価格を抑えてコストを下げたのではなく、作業用ディスプレイとして不要な入力ポートは一切排除する事で不要なコストを抑えた製品で、制作プロダクション、学校の作業用ディスプレイには無駄がなく理に適っています。
sRGB にフォーカスした IPS液晶ディスプレイは貴重な存在で、一般的なコンパクトデジカメ(sRGB)で撮影した画像を良く扱う人、セルアニメーションの着色、CG制作、映像編集用途を考えている方には最良の選択肢だと思います。
惜しむらくは 24.1インチ WUXGA であるため、表示サイズが一回り小さくなってしまう事です。RDT262WH に採用されている LG社の25.5インチ(LM260WU2)パネルを採用した sRGB に特化した RDT241WEX の25.5インチ版を是非、製品化して頂きたいです。
白背景に黒文字を打ったり読んだりしていると1時間程で目の奥がキリキリと痛みが・・。15分も直視できなかった NANAO S2411W ほど酷くはないものの同種の痛みです。この種の疲労(というより痛み)は感じ方に個人差があるようで、RDT241WEX は目に優しいと言う方もいます。
ちなみに私はかなり敏感な方です。CRTの場合だとリフレッシュレートは75Hz以下は液晶程ではないものの目が疲れます。周囲には CRT 60Hz を平気で使っている人、リフレッシュレートを知らずに使っている人もいたぐらい目の疲労には個人差があります。(指摘されるまで気が付かない人も)
ギラギラに関しては以前にも痛い目にあっているので警戒していたつもりだったのですが、NANAOのこのクラスにありがちなギラツキ感はなく、横に並んでいたRDT262WH と比べても大きな違いがあるように見えなかったのですが環境が悪すぎました。
裸眼左右1.5の私でも ドットピッチが小さいため、ディスプレイとの距離をおくと注視するため更に疲れます。やはり 24.1インチに WUXGA は小さ過ぎます。実表示がデザイン、レイアウトに大きく影響する Web 用途を考えても適さないと思います。
この手の目の痛みは眩しさからくる目の疲れと異なり、輝度を落として改善しない事は以前にも経験しているのですが、RDT241WEX も同様で輝度を落としても改善しませんでした。
以前、NANAO の LCD で試した HIKARI の CAD フィルターを間に挟んでみました。若干マシになった程度で私には2時間が限界活動時間でした。
CRT と違って液晶表面は周囲の光の影響をもろに受けるのでフィルターに反射した自身の光で微妙に色が変わってしまいます。
密着させても大して変わらず、24.1インチワイドのフィルターはディスプレイ以上に高価である上、価格に見合う改善は得られない可能性が高く断念。ちなみにこのフィルター CRTディスプレイには効果抜群で、CRT+このフィルターで目の疲れを感じたことはありません。
36,000円 (現在も変わってない)で購入して10年近く愛用しているフィルターですが、勿体ないので上げ下げ出来るようにして必要に応じて使えるようにしました。
両者に大きな違いがあるように見えませんが、RDT262WH は目の痛みは出ません。素子サイズの大きさが影響しているのかも知れません。(左はグレー、右は白)
ドットピッチが小さい事以外は期待以上の液晶ディスプレイでしたが、NANAO 程ではないものの、あれ以来の目の奥ががキリキリ痛む症状は自分には耐え難く、諦めて RDT262WH を購入する事にしました。
慣れが必要という意見もありますが、慣れた地点で視力は低下していると考えてダメだと思ったら無理をしないようにして下さい。といっても会社では機種を選ぶ権限のない方、弱い立場にある方が殆どなので難しいと思います。
1時間毎に他の作業を挟む、なんてガイドラインはクリエイティブワークの場合は集中力が途切れてしまい仕事になりません。少数精鋭の制作プロダクションでは生産性に直結するため、機種を選定する立場にある方の責任は重大と言えます。
個人的には目の敏感な人は、RDT241WEX だけではなくLM240WU7 パネルを採用しているディスプレイは避けた方が無難だと思います。NEC 2490WUXi2 も同じパネルらしく、ここで候補に挙げた NANAO SX2462w も同じである可能性が高いと思います。
ただ、この分野でこれまで使われる事が多かったであろう NANAO の VA / S-PVA を日常的に使っている方には目に優しいと感じるかも知れません。感じ方には個人差がありますが、これまで目の奥にキリキリした痛みを経験した事のある方は避けた方が良いかも知れません。