ここまでは液晶ディスプレイへ移行するにあたり、抑えておくべきポイントについて説明してきましたが、ここからはこれまでの内容を踏まえた上で液晶ディスプレイを選定します。
メインの作業は3DCG制作となりますが、Web 制作、映像制作などsRGBが主体となる作業も対象となります。
作業者の視点からディスプレイの隅から隅まで均一の色彩が得られる、つまり視野角の広さは色彩に関わる仕事においては絶対に譲れない条件になります。最も適しているのはIPS方式の液晶パネルを採用した液晶ディスプレイです。
これまで高価だったIPS 方式を採用する液晶ディスプレイが中価格帯にまで落ちてきた事、加えて今年に入って応答速度(中間色)が 5ms に向上した事が(私のメイン制作環境で)液晶ディスプレイへの以降を決断した理由になります。
視野角の広さは色彩を扱う分野では絶対条件になりますが、三次元データを扱う3DCG や CAD で重要となるのが応答速度の速さです。速ければ速いに越したことはなく、現状の 5ms でも十分ではありません。
その他、付加条件として
これらの条件を満たす液晶ディスプレイを探す事になりました。
国産(日立) IPSパネルを採用する製品は、品質や目への負担の面で優れているようですが価格も半端なく高価です。 NANAO ColorEdge シリーズの一部の広色域ディスプレイが該当します。仮に安くてもカラーマネジメント、DTPを前提としているため応答速度は重視されておらず、本稿の目的では使いものになりません。
韓国LG社の IPS は目の負担が大きいという話ですが、去年の暮れから一部の液晶ディスプレイで採用されている新型IPSはかなり良くなっている、らしいです。本稿で選ぶ液晶ディスプレイは恐らくこのパネルを採用しているものと思われます。
NANO ではこの分野は VA / S-PVA パネルを採用したディスプレイを主流としていますが、過去に苦い経験をしているので対象外にしています。後になって知ったのですが、 NANAO S-PVA は目潰しパネルと呼ばれているそうです。VAパネルも同様に目が疲れる、痛みが出るという方が多いです。
最近、FlexScan で IPS を採用する製品が登場しており、今後、NANAO も低価格IPSにシフトしそうな予感がします。
HP / DELL コンピュータ総合メーカーも本稿の条件を満たす液晶ディスプレイが存在していますが、これらのメーカーはネット直販となるため店舗での確認が出来ない事を理由に除外しています。ここでピックアップする製品と同価格帯でありながら入力ポートが豊富でコストパフォーマンスが高いのでこれらも視野に入れる事をお勧めします。
当サイトでは DELL よりもHP ワークステーションを推奨していますので、総合メーカーの中では HP の液晶ディスプレイをお勧めします。
業務用途での実績から NANAO、MITSUBISHI 、NEC の製品を選ぶ事にしました。本稿の目的で問題になる箇所を赤色のセルで示しています。プロフェッショナル、グラフィックなどにカテゴリ分けされている液晶ディスプレイのほとんどは Adobe RGB を前提とした広色域ディスプレイとなっています。
本稿の条件を満たす WUXGA 25.5インチの液晶ディスプレイは限られます。ドットピッチは小さめですが妥協出来る表示サイズです。2009年末の段階で 27インチの IPS液晶は現在しないため、以下の2機種が候補になりました。
仕様 / 製品名 | 三菱RDT262WH | NEC LCD2690WUXi2 |
---|---|---|
液晶パネル | H-IPS | H-IPS |
物理サイズ | 25.5インチ | 25.5インチ |
表示エリア | 1920×1200 | 1920×1200 |
ドットピッチ | 0.287mm | 0.287mm |
最高輝度 | 400cd/m2 | 320cd/m2 |
最低輝度 | 70cd/m2 | 50cd/m2 |
応答速度-平均値 (中間色) |
5ms | 8ms |
応答速度-平均値 (黒白黒) |
非公開 | 16ms |
邑補正機能 | × | ○ |
ピポッド(縦回転) | × | ○ |
Adobe RGB (広色域表示) |
○ | ○ |
sRGBモード | ○ | ○ |
sRGB各種調整 | GAMUT | ソフトウェアで調整 |
消費電力(最大) | 135W | 111W |
マニュアル | ||
販売日 | 2009年 2月23日 | 2008年11月20日 |
WUXGA では最も普及、というか大量生産されているパネルサイズです。ただ、ドットピッチは狭くかなり凝縮して表示される事になります。
仕様 / 製品名 | 三菱 RDT241WEX |
NANAO SX2462W |
NEC LCD2490WUXi2 |
---|---|---|---|
液晶パネル | H-IPS | H-IPS | H-IPS |
物理サイズ | 24.1インチ | 24.1インチ | 24.1インチ |
表示エリア | 1920×1200 | 1920×1200 | 1920×1200 |
ドットピッチ | 0.270mm | 0.270mm | 0.270mm |
最高輝度 | 380cd/m2 | 270cd/m2 | 320cd/m2 |
最低輝度 | 70cd/m2 | 非公開 | 非公開 |
応答速度-平均値 (中間色) |
5ms | 5ms | 8ms |
応答速度-平均値 (黒白黒) |
非公開 | 13ms | 16ms |
邑補正機能 | × | ○ | ○ |
ピポッド(縦回転) | × | ○ | ○ |
Adobe RGB (広色域表示) |
× | ○ | ○ |
sRGBモード | ○ | ○ | ○ |
sRGB各種調整 | ○ | × | ソフトウェアで調整 |
消費電力(最大) | 95W | 95W | 75W |
マニュアル | |||
販売日 | 2009年 6月8日 | 2009年 2月23日 | 2009年 2月23日 |
何れも韓国LG社の新H-IPS パネルを採用していると思われます。分解して中身を確認された方がいて、上記 24.1インチワイドは何れも韓国 LG社のLM240WU7 が、25.5インチワイドには同じく韓国LG 社のLM260WU2 というパネルが採用されているそうです。
同一パネルが採用されている場合でもメーカーによって発色特性や輝度調整、シャープネス等、機能面、品質に差が出ますが、液晶素子の不均一からくる目の痛みに関してはメーカーではどうする事も出来ないため、同じパネルを採用している製品は全て同じ症状が出ると考えた方が無難です。
RDT262WH と LCD2690WUXi2 、RDT241WEX と SX2462W と LDC2490WUXi2 の素子不均一からくる目の痛みの度合いは同等と判断。
ここで候補に挙げた機種を更に絞り込みます。次のページへ続きます。