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RDT262WH を作業用ディスプレイとして使う方法を模索

3DCG制作者のための液晶ディスプレイ選び

前のページで説明したように RDT262WH はシャープネスが強く、配色によっては文字の識別が困難であるため、作業用ディスプレイとして使用する事が出来ません。(特に XP 環境)

他に選択肢もないため、何とか作業用ディスプレイとして使う方法はないものか試行錯誤する事になりました。orz 同じことで悩んでいる方は参考になるかもしれません。

その一:× アナログ接続の “位相” を調整する.

DVI-D(デジタル)接続を諦めて D-Sub(アナログ)接続を使う方法です。アナログ接続の場合、OSD の ”位相” を調整する事でシャープネスに近い調整が行えます。実際に調整してみると非常に良い具合になるのですが、揺れが発生します。

揺れが発生しない状態まで値を詰めると結局、DVI-D 接続と同じレベルまでシャープネスが強い状態にする必要があるため意味がありませんでした。シャープネス機能を付けたくても付けられない事情があるのかも知れません。(OV回路の影響?)

ちなみにRDT262WHと同じパネルを採用しているNEC LCD2690WUXi2はデフォルトでオーバードライブは無効になっています。この機種は XPx64 環境では sRGB の調整がハードウェア側で行えない、応答速度8ms(中間)であることを理由に候補から外しています。シャープネス調整が行える上、デフォルトでも強すぎる事はないようです。RDT262WH よりもカラーマネジメント、DTP 等の用途を目的としたディスプレイになりますが、 25.5インチ WUXGA、目の負担を優先にしたい場合、これら条件に拘らないのであれば LCD2690WUXi2 をお勧めします。

その二:デスクトップテーマ.

Windows には UI に使用するフォントや配色をカスタマイズする機能が標準で備わっており、UI に関するフォントを変更したり配色を変更する事が出来ます。UIに使われるMS*ゴシックをやめて ClearType によるアンチエイリアス処理が可能なフォントに変更する方法です。XP SP2 以降では Tahoma が該当します。

しかし、この方法では一部しか変更する事が出来ず、(配色に関しても同様) OSのデスクトップテーマに従うアプリケーションも極一部であるため解決する事が出来ません。また、UI をカスタマイズ出来ないソフトウェアも多いのが実情で解決には至りません。

その三:× レジストリ改造によるフォントの変更.

Windows VISTA でシステムフォントとして採用されている "メイリオ" を XP のシステムフォントである MS * ゴシックと差替える方法です。検索してみると XP を VISTA化する、というテーマで XP のシステムフォントをメイリオに変更する方法があちらこちらで紹介されています。

方法は大きく二通りあり、一つはレジストリの改造、もう一つはメイリオのフォント名を MS * ゴシックに変更してフォントそのものを差替える方法です。

レジストリ改変に伴う OS 並びにアプリケーションが不安定になるリスクが高く、何れの場合もメイリオは文字幅、行間が異なりインターフェイスが崩れるのを防ぐため、メイリオ自体を改造する必要も出てきます。

何よりも問題なのが MS * ゴシックを失う事になるため、Web制作など仕事で使用する環境を独自に改造するのは問題が多く使えません。(個人所有のどうでもいい趣味パソコンでしか出来ない)

メイリオに関して

メイリオは液晶ディスプレイの視認性に適した ClearType というアンチエイリアス技術を前提にデザインされたフォントです。(Macで言うところのCoolType)

ClearType は XP 以降の Windows OS で対応しています。XP用のメイリオはマイクロソフトのサイトから入手可能です。

その四:MS * Gothic で ClearType を有効にする.

Windows の仕様上、ビットマップ情報を持つフォントは 18ポイント以上でなければアンチエイリアス処理(滑らかな縁)は有効にならず、それ以下のサイズはビットマップフォントを使用して表示するようになっています。

ClearType Tuner PowerToy

MS * Gothic がこれに該当する訳ですが、UI に使用される小さな文字に対してビットマップフォントではなく ClearType 処理を有効に出来れば ClearType Tuner PowerToy を使って UI フォントの視認性を高める事が出来るかも知れません。

XP では ClearType のオン、オフしか出来ませんが、このツールを使う事で ClearType の掛かり具合を調整する事が出来ます。

実際に調べてみると MS * Gothic からビットマップ情報を削除する、つまり、MS * Gothic をアウトラインフォントのみに 改造する事で小さなフォントサイズでも ClearType を有効に出来るようです。

参考URL => MSゴシックとMS明朝で、ClearTypeを有効にする

そもそもビットマップフォントはCRT時代に小さい文字の視認性を優先した画面表示用のフォントであり、1ドットを1素子で表現する LCDは滲みがないため細く見えるので適さないとされています。(RDT262WHでは細いを通り越して文字として認識さえ困難

この方法のメリットとしてはフォントそのものは取り敢えず残せる、不安定になるリスクが少ない、デメリットは MS*ゴシック自体 ClearType を前提にデザインされたフォントでないため、小さい文字、特に漢字など潰れてしまう事が予想されることです。

結果ですが RDT262WH を DVI-D 接続で常用する場合、この方法は極めて有効でした。ただ予想通り MS * Gothic のデザインは ClearType を前提にデザインされていないため 12pt 以下の漢字は潰れますが、背景色を明るくするなど工夫する事で認識が困難だったアプリケーションの UI やアラートに表示されるテキストは取り敢えず認識出来るようになりました。(右が対策後 正面からデジカメで撮影した画像)

左の画像はモアレが発生していますが、カメラ側の問題、撮影条件の違いによるもので実際には鮮明に見えます。

ただし、"MS * Gothic の改造" が有効なのは 日本語 UI を持つアプリケーションに限られます。主要 3DCG ソフトの多くは海外製で日本語UIを持たないものも多く MS * Gothic 以外のフォントがアプリケーション内部で指定されていた場合は全滅です。

該当する欧文フォントも同様に改造するか、アプリケーションの UI を白抜き文字に変更する必要があります。(出来ればですが)

また、元々シャープネスが強いため、ぱっとみた感じはビットマップフォントに見えて美しくはありませんし、独自環境は不特定多数のディスプレイ表示が目的となるWeb制作などの作業を行なう場合は根本的な解決に至りません。

結局

その二その四 を併用し、UI カスタマイズが可能なアプリケーションは全て変更する事でなんとか作業出来るようになりました。パソコン毎にこんな事をしないといけないのかと思うと情けなくなります。

シャープネスが異常に強いことに変わりないため、3DCGレンダリング時のアンチエイリアス処理の判断が難しいこともあり、アナログ位相で調整した方がましかもしれません。正直なところ、写真を見る以外の用途にはとてもお勧め出来ません。

ユーザー(ソフトウェア)側で行える対策は恐らくこれが限界で、ハードウェア側でシャープネスを調整しない限りどうしようもありません。メインで使用するアプリケーションが該当する場合、作業さえ困難な状況に陥る可能性が高く、作業用ディスプレイとして販売するには問題があると思います。

発色性能はかなり落ちるものの、各色ガンマ値を調整するなんちゃって sRGBモードの広色域ディスプレイより sRGB 色域表示は自然、素子サイズも適度、目の奥がキリキリ痛む事がない、それなりの応答速度、AdobeRGB広色域は申し分なし、とバランスの取れたディスプレイですが、シャープが強すぎる事で全てが台無しになっています。

最後に

2009年、sRGBで IPS(広視野角)、応答速度 5ms の液晶ディスプレイが登場した事もあり、CRTから移行出来るとかもしれないと期待していたのですが、現状は選択肢が限られる上、目の負担を考えてもこの分野は業務用 CRT に遠く及びません。

液晶ならではの WUXGA 表示エリアは 3DCG / CAD 等、多くのパレットを扱うソフトウェアを使う場合は魅力的ですが、適度な表示サイズが得られる素子サイズの WUXGA 、IPSパネルを採用する sRGB液晶ディスプレイは極一部です。

実際に調べていても時代は AdobeRGB 広色域ディスプレイと言わんばかりの勢いで各メーカーは普及に力を入れていますが、実際の所、それを理解した上で正しく使用している人がどれだけいるのか甚だ疑問です。

この分野(sRGB)のグラフィックス ディスプレイは決してニッチな市場ではない筈なのですが、本稿の目的ではRDT241WEX意外に該当する機種はなく、広色域ディスプレイの中では RDT262WH の色域制限が唯一 sRGB 用途で使えるディスプレイとなっています。(パネル本来の力が出せない条件付きだが嘘をつかれるよりマシ)

目の敏感な私ですが RDT262WH で使用されている LG社の LM260WU2 パネルは目の奥ががキリキリ痛む事はないので、このパネルで RDT241WEX と同じ sRGB ディスプレイを是非出して頂きたいです。

その前に RDT262WH のシャープネスを何とかして下さい。


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