これまで説明してきたように、拡張カードには様々な規格、種類の製品が存在します。特に 2007年末現在は、従来のPCIからPCI Expressへの移行が進みつつあり自作PCを考える上でどのような製品が流通しているのか知っておく必要があると思います。
マザーボードを見ても確実に従来のPCIスロットの数は減ってきている事からもそれらが伺えます。特に初めて自作PCに挑戦される方は、マザーボードが対応している拡張バス・スロットと拡張カードの規格が合わなければ物理的にスロットに差し込む事が出来ない、叉は使用できないケースがあるので注意が必要です。
2007年 10月末現在、入手可能な拡張ボードの規格を調べてみました。PCI Express に関しては、従来の 32bit PCI バスから PCI Express への移行期でもあるので今後、新しいボードが出てくる可能性や従来の 32bit PCI 製品もなくなる可能性もあります。
デバイス名 | オンボード デバイス の有無 |
消え行く規格 | 移行過程にある規格 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
AGP | PCI | PCI Express | ||||||
32 | 64 | ×1 | ×4 | ×8 | ×16 | |||
ビデオ出力 | ○ 3DCG制作に 適さない |
○ | ○ | ― | ― | ― | ― | ○ 3DCG制作に 深い関り |
サウンド | ○ | ― | ○ | ― | ○ | ― | ― | ― |
ネットワーク(Gbps) | ○ | ― | ○ | ○ | ○ | ― | ― | ― |
ストレージ (SCSI) | △ | ― | ○ | ○ | ○ | ― | ― | ― |
ストレージSATA (RAID含む) |
○ | ― | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ― |
ノンリニア映像編集 | ― | ― | ○ | ○ | ○ | ○ | ― | ― |
IEEEインターフェイス | ○ | ― | ○ | ― | ○ | ― | ― | ― |
TVチューナ キャプチャボード |
― | ― | ○ | ― | ○ | ― | ― | ― |
マザーボードに搭載される標準デバイス | ||||||||
ストレージ (パラレル ATA) |
○ | ― | ○ | ○ | ○ | ― | ― | ― |
USB(1.0/2.0) インターフェイス |
○ | ― | ○ | ― | ○ | ― | ― | ― |
ちなみに PCI Express x1 は 250MB/s の転送レートを持っているため高い転送レートが要求されるストレージ関連以外は、ここに落ち着くと思います。2007年 末現在は出揃った感じですが選択肢はまだ多くありません。
今後、従来の32bit PCIは、PCI Express x1へ置き換わり、高い転送レートが要求されるRAID 等のストレージ拡張カードは今後、 PCI-X 64bitからPCI Express x4/x8/x16へ置き換わって行くものと思われます。
特に PCI-X 準拠の 64bit PCI カードは高価なため、サーバー分野では64bit PCI バスを搭載するマザーボードは出るかも知れませんが、RAID 0 等、パフォーマンス重視のワークステーションの場合は避けた方が無難です。
最も高い転送レートが必要な3Dグラフィック関連のビデオカードは、2006 以降、一部例外を除いては AGP 8x 製品は出ておらず、既にPCI Express x16 へ移行しています。
PC/AT 互換機の魅力は、豊富に販売されている拡張カードを追加する事で性能向上を図れる点にあります。つまり、2007年以降、パソコンを購入叉は自作するのであれば、 PCI Express (x16/x1) バスを多く持つマザーボードを購入すると末永く使える(楽しめる)という事になります。
2007年末、初となる PCI Express 2.0 をサポートする製品も登場しています。
最近はATXサイズのマザーボードでもサウンドやLANはオンボード(マザーボード)上に搭載する傾向にあり拡張スロット数は重要なチェックポイントではなくなっています。高級機種にもなると Sirial ATA RAID をオンボードに持つマザーボードもあります。
参照 => オンボードデバイスとは - インテル用語集
下のマザーボード(写真)はオンボード上にサウンドデバイスとLANポートが搭載されています。つまりLANカードやサウンドカードを拡張する必要がありません。
最近では、最もオーソドックスな構成でもサウンドデバイスやLANポートが標準で装備されています。
元々オンボード上に多くのデバイスを持つマザーボードは、省スペースが優先されるコンパクトなパソコンで利用される microATX といったサイズの小さいマザーボードで搭載されていました。
microATX サイズのマザーボードは拡張スロットが少なく、統合チップセットの製品が主流であるため、3DCG制作には適しません。
ビデオカードは他の拡張ボードと事情は異なります。統合チップセットと呼ばれるチップセットを持つマザーボードは、オンボード上にビデオ出力デバイスが搭載されています。
専用のビデオカードの場合、高速に描画するために必要な専用のメモリがビデオカード上に用意されていますが、統合チップセットの場合、マザーボード上のメモリを利用します。帯域の奪い合いが発生するため、専用のビデオカードに比べパフォーマンスは大きく劣ります。
強力な3Dアクセラレーターチップを持つものは、ゲーム用の RADEON や GeForce が採用されており、OpenGL を使用する本格的な3DCG制作には適しません。
ノートパソコンが3DCG制作に適さないのも同じ理由であり、オンボード上にビデオ回路を持つためです。
家庭用パソコンを自作によって安価に済ませないか考えている方も多いと思います。オンボード・デバイスが充実、低価格になった現状では、自作するよりもPCパーツショップが販売している バリューBTOパソコンの方が結局、安く済みます。
練習と言う意味ではお勧めですが、そうでなければリスクを犯してまで自作PCに取り組む必要はありません
CPU の高性能化によりインターネットやグラフィックソフト、ビジネス・アプリケーションは、バリューPCでも十分なパフォーマンスが得られています。(VISTAを想定した場合は注意が必要です。特にメモリ。OSだけに1GB、後は使用するアプリケーションに応じて追加する必要あり)
このようなパソコンは本稿のテーマである 3DCG Workstation用途に適しません。