このページでは、OpenGL を使用したアプリケーションの正式ベンチマーク・ツールである SPECviewperf を使用したビデオカード選定のポイント、注意点について説明します。
OpenGL のベンチマークではなく、OpenGLを使用したアプリケーションのベンチマークとしている点に着目してください。
本稿は複数ページから構成されており、誤認識を招き易い内容となっています。検索エンジンから来られた方は、右メニュー "はじめに(コンテンツの概要)" を参照して下さい。
SPECviewperf は OpenGL のベンチマークツールです。3DCG や CAD に適したビデオカードを選ぶ上で欠かすことの出来ないツールです。
歴史も古く OPC認定の OpenGLベンチマークツールだけあって高い信頼性があります。以下の本家サイトからダウンロードできます。
入手先 => Standard Performance Evaluation Corporation
昔からですが本家サイトは重く、ダウンロードに2、3時間かかります。公式ミラーサイトである会津大学のFTPサーバから早くダウンロードできます。
入手先 => ftp://ftpsv1.u-aizu.ac.jp/pub/spec/dist/gpc/opc/viewperf
ver 9 、10 ではインストールに 1.5GB 程のディスクスペースを要します。その殆どが 3Dオブジェクトデータです。これをグリグリ回して速度を計測します。最新は ver10 ですがここではベンダーが公開しているバージョンに併せて ver9 を選んでいます。
OpenGL に限らず 3DAPI の実装はアプリケーションによって異なるので、同一の頂点数を扱うとしてもベンチマークで求められる速度と実際に使用するアプリケーションが同じ結果になる訳ではありません。
どちらかというと CAD 寄りです。3DCGソフトウェアは MAYA、3dsMax 、Lightscape の3つでテクスチャよりもジオメトリ処理に重点が置かれています。
SPECviewperf は、実際の 3DCG/CAD ソフトと同じか極めて近い OpenGL のシェーディング方法でオブジェクトの描画速度を計測するため、 得られるベンチマーク結果はビデオカードを選ぶ上で貴重な判断材料の一つとなります。
あくまで目安です。アプリケーションのバージョンによる違い、ドライバやCPUなどその他の要因を考慮すると公表値と一致する訳でもありません。
スタートメニュー→プログラム から SPECviewperf Run_All を実行すれば全てのテストが始まります。この バッチファイルは 以下の 9つのバッチファイルを順番に実行します。全てが終了するまでかなりの時間を要します。
それぞれのバッチファイルのショートカットはプログラムメニューには用意されていないので、一つ一つ実行したい場合は C:\Program Files\SPECopc\SPECViewperf 9.0 ディレクトリを直接開き、それぞれのバッチファイルを実行します。
テスト名 | バッチファイル名 | 内容 (詳細はこちら) |
---|---|---|
3dsmax-04 | Run_3dsmax.bat | 3dsMax (3DCG) のビューポート表示速度を計測 |
catia-02 | Run_catia.bat | Catia (CAD)のビューポート表示速度を計測 |
ensight-03 | Run_ensight.bat | Ensight(CAD)のビューポート表示速度を計測 |
light-08 | Run_light.bat | Lightscape(3DCG)のビューポート表示速度を計測 |
maya-02 | Run_maya.bat | Maya6.5 (3DCG) のビューポート表示速度を計測 |
proe-04 | Run_proe.bat | Pro/ENGINEER(CAD)のビューポート表示速度を計測 |
sw-01 | Run_sw.bat | SolidWorks(CAD)のビューポート表示速度を計測 |
tcvis-01 | Run_tcvis.bat | UGS Teamcenter(CAD)のビューポート表示速度を計測 |
ugnx-01 | Run_ugnx.bat | UGS NX 3(CAD)のビューポート表示速度を計測 |
下の表は、自作PCコンテンツで購入した QuadroFX-350 と nVIDIA で公開されている SPECviewperf を比較した結果です。
公表値 | 実機検証 | 実機検証 ドライバ最適化 |
|
---|---|---|---|
テスト環境 | 3 GHz Dual Cor Duo Xeon |
C2D E6400 @ 3.2GHz |
C2D E6400 @ 3.2GHz |
3dsmax-04 | 16.69 | 17.53 | 17.51 |
catia-02 | 19.70 | 19.89 | 19.90 |
ensight-03 | 7.94 | 10.71 | - |
light-08 | 23.73 | 24.08 | - |
maya-02 | 34.35 | 23.03 | 23.04 |
proe-04 | 15.88 | 17.17 | - |
sw-01 | 21.80 | 21.98 | - |
tcvis-01 | 4.52 | 4.94 | - |
ugnx-01 | 2.43 | 2.78 | - |
C2D E6400 @ 3.2GHz は、"3DCG制作者のための自作PCコンテンツ" で作ったオリジナルPC です。検証に使った機体はビデオカード自体に若干のオーバークロックを噛ませているのでやや高めになっていますが、概ね公表値と一致しています。が、Maya だけが異様に低い値になっています。
Maya は CPU に対する依存度が大きいのか、ドライバのバージョンによるものか分かりませんが、この差はちょっと気になります。
ドライバ最適化項目は、それぞれのアプリケーションにあった設定を行った場合ですが、誤差程度だったので他は検証しませんでした。
nVIDIA で公開されている SPECviewperf の値は概ね信用して良いと仮定
この最下エントリーモデルである Quadro FX 350 を基準として、ビデオカード選定プロセスを説明します。
nVIDIA の公表値が概ね信頼できると仮定した上で、ご自身のビデオカードの結果と比較してみて下さい。 ただし、以下の点は誤解の無いようにして下さい。
これから Lightwave3D や MAYA、Softimage|XSI、3dsMax を使って本格的な3DCG制作に取り組まれようとされている方は、手持ちのビデオカードを検証する際、以下の点に注意して下さい。
あくまでベンチマークであって、実際の3DCGソフトウェアの動作が保証される訳ではありません。ご使用のビデオカードによっては、3DCGソフトでテクスチャが正しく表示されない、画面が乱れる、最悪の場合はソフトウェアが起動しない、作業できないといった不具合が発生する可能性は否定できません。
ネットで度々見かけるベンチマーク結果ですが、一般の方(ゲームユーザ)にとっては無縁のツールです。たとえGeForceやRADEONなどのゲーム用のビデオカードで高い結果が出たとしても、それが 3DCG や CAD 用途に適していると言う訳ではない事に注意して下さい。
OpenGL は描画速度だけでなくインターフェイスとしての役割に重点が置かれています。DirectX がメインとなるゲーム用のビデオカードでは、SPECviewperf が扱うような3DCGソフトやCADソフトを使用すると不具合が生じる可能性が高くなります。
つまり、描画速度よりも3DCGソフトウェアの安定性が大切な要素です。
SPECviewperf はバージョンが上がるにつれ、CPUやGPUの進化と共により高い負荷を求める仕様に変わってきています。ここで紹介している ver.9 ではベンチマークで扱うデータ量は半端じゃありませんので、結果が悪いからといって3DCG制作に適さないとは一概に言えません。
3DCG の制作内容によっては十分に役目を果せる場合もあります。総合的に判断する必要があります。
OpenGL の描画速度や品質はビデオカード(GPU)の性能だけで決定する訳ではありません。OpenGLのバージョン、3DCGソフトの実装により大きな差が出る事もあります。例えば、同じ 3DCGソフトでも OpenGL の表示速度や品質の改善は行われており、同じソフトでもバージョンによって1.5倍も表示速度に差が出るケースもあります。
CPU の性能、バスクロックなどの周辺ハード、ビデオカードのドライバのバージョンもパフォーマンスに大きな影響を与えます。とり合えず SPECviewperf の結果は目安の一つという事で考えると良いと思います。
ここで紹介した SPECViewperf を利用したビデオカードの選び方の具体例は、追って追って説明します。