ここでは OpenGL のバージョン、ビデオカード、3DCG ソフトウェアの対応状況によってどのような違いがあるのか、先日公開されたばかりの Lightwave 3D ver.9.3 を例に示します。Lightwave 3D に限らず、他の OpenGL を使用する 3DCG ソフトウェアにおいてもビデオカード、3Dソフト、OpenGLのバージョンの関係は共通します。
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LightWave 3D は ver 8.5 より OpenGL 2.0 をサポートしています。これにより、従来表示できなかった複雑なテクスチャを詳細に表示できるようになりましたが、OpenGL 2.0 以降 (機能拡張 ARB_shading_language_100)に対応したビデオカードが必要になります。
参照 => GLSL HW Shadingの対応状況
左は v8.3までのOpenGLシェーディングで、右は 8.5 でサポートした GLSLシェーダーを使用した表示です。
このファイルは DSTORM から入手する事が出来ます。LightWave 3D ユーザーは試してみると良いと思います。
新しくサポートされた OpenGL レンダリング品質を有効にした場合や OpenGL レンダリングに使用する 光源(light) の数が増えると当然のことながら GPU に掛かる負荷も増えるためレスポンスが低下します。
特に透明度、αチャンネルを使用した画像マッピングなどの OpenGLレンダリングも極めて高い負荷が掛かる為、描画速度に大きく影響します。
表示するテクスチャ解像度が高いと読み込みに時間がかかり、ビデオカードのバス転送速度、ビデオカード上のメモリ速度が大きく影響します。
OpenGL の描画速度が低下する要因となるこれらの処理は、3DCGソフトウェア側で必要に応じて無効にする事が出来ます。特にモーション制作のプレビュー、モデリングの頂点編集では、OpenGL の品質はそれ程重要になる訳でもありませんし。
LightWave 3D は、一般的な統合型3DCGソフトウェアと異なり、モデリングを行う Modelerと シーンの組立・モーション・レンダリング等を行うLayoutという二つのアプリケーションから構成されています。
LightWave と言えば一般的に Layout 側を示す事が多いです。
LightWave 3D の Layout と Modeler の OpenGL の実装には違いがあり、長年改善されることはありませんでしたが、最新の ver 9.3 でようやく Layout と共通した OpenGL 制御が行えるようになりました。
左は ver9.2 までのモデラ表示。左は ver 9.3 で Modeler で設定が可能になった GLSLShaders を有効にした場合の違いです。テクスチャのαチャンネルや反射MAP等も正しく表示されるためテクスチャの位置確認が容易になり生産効率が上がります。
透明度、αチャンネル、テクスチャレイヤの表示は品質は高いですが GPU に大きな負荷が掛かり表示速度は落ちます。
本題から外れますが、この変更は Layout と Modeler が ver X で統合するための布石ではないかと考えています。もし統合が実現して価格が据え置きならば 3DCG の勢力図が塗り替えられる可能性もあるのではないかと期待しています。
この変更によってModeler の OpenGLシェーディング表示は品質だけでなく速度も大幅に改善されています。
必ずしも ビデオカードと3DCGソフトが対応している OpenGL のバージョンが一致しないど動作しないという訳ではありませんが、最高の品質を得るには双方が同一バージョンの OpenGL に対応している必要があります。
また、OpenGL シェーディングを利用したハードウェア・レンダリングに対応している3DCG ソフトの場合、これらの機能は使えない事になります。なるべく最新の OpenGL に対応した Quadro系ビデオカードを選ぶ必要がある事が分かります。
3DCG ソフトによって OpenGL の実装は異なるため、最新の OpenGL で追加された機能拡張全てが利用できるという訳ではありません。また、シェーディングの品質を上げる程、パフォーマンスは低下することになります。
特に透明度やαチャンネルを含むテクスチャの合成は負荷が高くなります。
作業内容によって求められる OpenGLの品質は違います。例えば、一般的なモデリング作業ではテクスチャ表示の必要性は限られますし、パーティクルやテクスチャ・アニメーションの制作においては OpenGL の表示品質、ビデオカードの描画性能は重要になるかも知れません。
どの作業にウエイトを置くか考えるのもビデオカード選びのポイントの一つと言えますが、未経験者には判断が出来ません。本稿ではこの点にも注意を払っています。
次のページから、3DCG / CAD 向けのビデオカード、QuadroFX シリーズを例にビデオカード選び方を紹介します。