総括 ~ 賢明なビデオカードの選び方 (Quadro / FireGL)
長々と説明してきましたが、ミドルクラス以上の3DCGソフトウェア(LightWave 3D / Maya / 3dsMax / Softimage|XSI / CINEMA 4D etc) の使用をメインに考えた場合のビデオカード選びのポイント、要点をまとめました。
本稿は複数ページから構成されており、誤認識を招き易い内容となっています。検索エンジンから来られた方は、右メニュー "はじめに(コンテンツの概要)" を参照して下さい。
規格に関して
バス規格に関する事柄。(間違って購入するとPCに取り付けできません)
- PCI Express x16 製品を選ぶ
- 2007年 11月現在のビデオカードのバス規格はAGPから PCI Express へ移行しています。AGP の 3DCG/CAD 系ビデオカードの新製品は出ていません。お使いのパソコンが AGP×4 までのパソコンであれば PCI Express x16 スロットを持つパソコンへ新調する事も視野に入れて見て下さい。
OpenGL / ソフトウェアに関するポイント
3DCG ソフト、3D-API (OpenGL)、相性に関する事柄です。
- 手持ちのビデオカードの検証
- OpenGL (3D-API)対応バージョンの確認
- 3DCG ソフトウェアが対応している OpenGL のバージョンに合わせるのではなく新しいバージョンの OpenGL に対応した ビデオカードを選ぶようにします。
- RADEON / GeForce は避ける
- ミドルクラス以上の 3DCG ソフトウェアの場合、ゲーム用のビデオカードは避ける方が無難です。理由は本稿で説明しています。速度ではなくインターフェイスとしての安定動作に主眼を置くべきです。
- 購入予定のビデオカードとの相性調査
- もっとも基本的な事ですが、購入を予定しているビデオカードが目的の 3DCG ソフトで不具合が発生していないか調べます。3DCG ソフト開発元のHP(海外)、叉は国内の販売代理店のHPなどの推奨環境の確認、情報が提供されていないか確認します。おそらくは、期待した情報は得られません。
- Shade 以外の統合型3DCGソフトは全て海外のソフトウェアです。情報量は国内のインターネットと比較になりませんので、本家サイトのフォーラムあたりが良いでしょう。
目的・用途・機能に関するポイント
身の丈、用途、目的に応じた無駄のない選択を。
- アニメーション・映像制作
- パーティクルや物理計算、IK(インバース・キネマティクス)といった処理はGPU(ビデオカード)側でなく、CPU の処理能力に依存します。普及価格帯まで落ちた マルチコア CPU の場合、動作クロックの高い CPU が有利になります。
- テクスチャー数が増える用途
- エンターテイメント性の強い映像ジャンルでは高解像度のテクスチャを多く扱う事が予想されます。ビデオカードの性能面ではテクスチャメモリ、バススピードも重要になりますが、テクスチャ解像度、表示レベルの調整など創意工夫する仕組みは 3Dソフト側で提供されているので総合的に判断します。
- マルチディスプレイ
- 3DCG や CAD は 一般的なグラフィックソフトとは比較にならない程のパレットやウインドを開く必要があります。このようなパレットを表示するサブ・ディスプレイが一つあると便利です。ビデオカードの出力系統を確認します。
トレンド / その他
入門者はあまり気にしなくて良いポイント、必要ではないと思われる点についてあげてみました。お金に糸目を付けずより良い環境を求めるなら別ですが。
- Dual-Link DVI
- 液晶ディスプレイに使用される一般的な DVI 接続は Single-Link であり、解像度は 1600×1200pixel (UXGA) までサポートします。これを越える場合、Dual-Link DVI に対応している必要があります。
- FireGL はエントリークラスの製品にも Dual-Link DVI をサポートする製品があります。特に 2D-CAD はディスプレイが大きいと快適に作業できますが、OpenGL レンダリングの解像度が高いとそれだけ GPU に負荷がかかりパフォーマンスの低下を招きます。 3DCG 制作の場合は安価な液晶ディスプレイをパレット用のサブディスプレイとして利用した方が安価で快適です。
- SLI (nVIDIA) / CrossFire (ATI)
- SLI は nVIDIA、 CrossFire は ATI 社の開発した技術で、2枚のビデオカードを接続してパフォーマンスを向上させる技術です。一部のミドルクラス、ハイエンドクラスの Quadro が対応しています。
- 上位のビデオカードほどコストパフォーマンスが低くなる
- 価格に見合っただけの性能が得られる訳ではありません。3DCG/CAD 向けの高価なビデオカードは高速ですが価格に見合った速度は得られません。このような製品は業務用で、学生さんや個人が手を出すべき製品ではありません。
3DCG ワークステーションに関して ~ 補記
本稿で説明してきた通り、2007年末の現状ではエントリークラスの3DCG/CAD用のビデオカードでも、入門者にとって十分なパフォーマンスが得られています。3DCG ワークステーション(パソコン)を購入する場合、CPU 、ビデオカード、メモリが価格を引き上げる大きな要因となっており、50万~80万のPCが主体となっています。
実質、15~20万もあればコストパフォーマンスの高い制作環境を実現する事は可能です。デュアルコアやクアッドコアなど並列処理が可能なCPUは一般の方にとって殆どメリットはありませんが、3DCG 制作者にとってはメリットが大きく、このあたりの事情は ※デュアルコア CPU が普及する以前の2年前の状況とは事情が変わっています。
つまり、デュアルコアを搭載したパソコンであれば、メモリの増設、ビデオカードを交換するだけで3DCG制作に適した環境を安価に構築出来る可能性があります。