目的にあった3DCGワークステーションを選ぶ上で最も重要な事は、搭載されているCPUの性能と総コア数のバランスです。誤った選択は無駄な投資となるばかりか、期待した性能が得られない結果を招きます。
このページでは2007年12月現在、販売されている3DCGワークステーションのCPU構成と特徴についてお話します。
ここでの従来のワークステーションとは、シングルコアCPU 時代のワークステーションの事を指しています。つまり、4スレッド・レンダリングを行うには物理的に4個のCPUが必要だった時代のワークステーションです。
時期的には高性能なマルチコアCPUが登場する1年4ヶ月ほど前まで(現在2007/12) の話になります。現在も Xeon や Opteron プロセッサ搭載のワークステーションが販売されていますが、これらのワークステーションを選ぶ場合は特に注意する必要があります。
目的にあったワークステーションを選ぶ上で従来のワークステーション構成を知っておく必要があります。
サーバー向けの CPU ブランドには、Intel の Xeon (ジーオン)、AMD の Opteron (オプテロン)プロセッサがあります。このうち、2CPU 構成まで可能な CPU がワークステーション向けの CPU となります。4CPU以上はサーバー向けのCPUです。
AMD | INTEL | |||
---|---|---|---|---|
CPU | Opteron | Athlon64X2 | Xeon | Core 2 |
主な用途 | サーバー ワークステーション |
コンシューマー ビジネスPC |
サーバー ワークステーション |
コンシューマー ビジネスPC |
マルチCPU | ○ |
× |
○ |
× |
Windows XP HomeEditeon
の利用 |
||||
家庭用OS | × |
可 |
× |
可 |
Xeon (Intel) / Opteron (AMD) プロセッサに共通する特徴は以下の3点です。
右のマザーボードは、CPU ソケットが2つあります。マルチコアCPU が登場するまでは、このような 2CPU ソケットを持つ従来のマザーボードは、ワークステーション、叉はローエンドのサーバー向けのマザーボードでした。
CPU 2個構成のワークステーションのデメリット。価格を引き上げる要素満載です。
このような例外もありますが、やはりキャンセルとなっています。
一般のPCに比べ性能面で以下の特長がありますが、絶対ではありません。
TYAN 製マザーボードはこれまでメイン・ワークステーションとして3台使用した経験がありますが、2台は通常用途で壊れました。(今も 440BX機がサーバーで現役だったする。)現在、Tyan は台湾メーカーに買収されています。
3DCG 制作において重要視されるのがマルチCPU に対応しているCPUという点です。つまり、後述するマルチコアCPUが登場するまではクライアント・レベルで 3DCG レンダリングの並列処理を行うには、Xeon や Opeteron 、Athlon MP といったマルチCPU に対応した CPU を選ぶ以外に選択肢が無かったためです。
2007年 12月現在も、Xeon や Opteron に対応したワークステーションが販売されていますが、マルチコアCPUの登場によってこれらのCPUが搭載されたワークステーションは、ワークステーションというよりレンダリング・サーバー的な役割に変化しています。 (後述)
Xeon や Opteron プロセッサの方が 3DCG レンダリングに適しているからという理由で選ばれてきた訳ではないという点に注意して下さい。
従来のマルチCPU構成のマザーボードは、サーバー、ワークステーションといった業務目的で使用されるため、マザーボードは安定性重視で設計される事が多く、コンシューマー向けのマザーボードでそこまでの質が確保できるのかという問題もあります。
特に不良コンデンサ騒動以来、コンシューマー向けのマザーボードを生産しているメーカーは、良い部品、安定性重視の設計、高耐久を製品のトレンドとして強調する傾向にあり、ケチらないで良いマザーボードを選べば特に気にする必要はないと思います。
ワークステーションを自作するとしたら、個人的には CPU メーカーの Intel / AMD の Chipset マザーボードで、コンシューマ向けメーカーとして ASUSTEK、GIGABYTEを、サーバー用途など安定性重視では TYAN、SUPERMICRO のマザーボードがお勧めです。
3DCGソフトウェアを学ばれている学生さんにとっては、ソフトウェアだけでも大変な出費であり、本格的な制作環境を自宅に整える事は現実的に難しい状況にありました。
しかし、1年ほどの間にマルチコアCPUの高性能化、普及による低価格化、更にはOpenGL ビデオカードの性能向上と2万円を切る低価格のビデオカードの選択肢もあって一般のパソコンと同じ価格帯で本格的な制作環境が手に入る時代ようやくなったという感があります。(2007年12月現在)
「複数のCPU(コア)を一つのCPUにまとめたCPU」 と表現すれば一般の方には理解し易いのではないかと思います。
これまでCPUの性能はクロック数を上げる事で性能向上が図られて来ましたが、消費電力と発熱問題で限界まで来てしまいました。
そこで、一つのCPUに複数のコアを詰め込む事で新しいCPUの価値観を出そうと考えられた訳です。つまり、物理的に1個のCPUで並列処理が行えるようになる訳ですが、このような並列計算に対応したアプリケーションは極一部であり、また、並列処理可能な処理も限定されます。(通常のオペレーション作業では1コアしか機能しません)
並列処理可能なアプリケーションを使用しない一般の方にとっては、使いもしないコアに無駄な電力を消費されるデメリットの多いCPUです。バックグラウンドで行われるプロセスが円滑になるため、2コアまでなら全く意味がない訳ではありませんが、4コア以上は4スレッドの並列処理に対応したアプリケーションを使用しない限り恩恵はありません。むしろ、クロック数の低い4コアCPUを選ぶと性能が低下したように感じます。(一般の方には動画のエンコぐらいしか使い道はない)
マルチCPU やマルチコアCPU による並列処理は、アプリケーションがそれだけのスレッド数に対応している必要があります。このような並列処理可能な処理は限られる上、高度なプログラミング技術が必要で性能を生かせるアプリケーションは限られています。
しかし、なんとかCPUに価値観を見出さないと半導体業界はお先真っ暗であるため、まるで必要のない一般市場にマルチコアCPUが普及する事になります。
これまで、並列レンダリング環境はマルチCPU以外に選択肢がありませんでしたが、意味も無くマルチコアCPUが一般市場に普及したおかげで、従来から並列処理レンダリングが可能な3DCGソフトウェアにおいては生産性が大幅に向上する事になります。
映像制作の分野では、HD(ハイビジョン)放送の普及に伴いレンダリング解像度が跳ね上がりました。従来のNTSCに比べ5倍近い面積をレンダリングする必要があるため、分野によっては "夢" というより "渡りに舟" という現場もあります。
HD(ハイビジョン)放送レベルの映像制作においては、最終のレンダリング用途にのみ、レンダリング・サーバーを導入すれば良い訳で、クライアント用のマシン(ワークステーション)にコア数の多いコンピューターが必要という話ではありません。
同時に従来の2CPU構成のワークステーションは、マルチコアCPUを採用する事で更に総コア数が増える事になります。
CPU 4個以上の構成は、OS にWindows Serverが必要である事からも分かるように、4コア以上の並列処理は既にワークステーションではなく、サーバー用途の領域となります。
ここに大きな落とし穴があります。ページ右メニュー、レンダリング・サーバーの項目で説明しています。
現在は1つのCPUで4コアが実現しているため、1CPU しかサポートしない家庭用OS Windows XP Home Edition で4スレッドレンダリングが行えるようになっています。
並列処理の恩恵が大きい 3DCG制作用途では、総コア数が多いほど適していると思われるかもしれませんが、実はそうではありません。
マルチコアCPU の普及によって、従来の Xeon や Opteron プロセッサを使用したワークステーションは、レンダリング・サーバーの領域に突入しており、通常の作業に用いるワークステーションとしては適さない構成に変化しています。
単にコア数が多いほど、3DCG 制作に適しているという訳ではなく、作業目的にあったCPU構成のワークステーションを選ばなければ、逆にパフォーマンスの低下、無意味な投資、消費電力を無駄に浪費するだけの悲しい結末を迎えることになります。(それすら気付かない人もいるのではないかと思われる)
ワークステーションを販売しているメーカーにとっては付加価値の高い製品を販売したほうが利益が出る訳で、制作目的にあったアドバイスまではしてくれません。
次のページでは、3DCG制作における マルチコアCPU のメリット、デメリットについて説明します。