複数のCPUによる並列計算(レンダリング)が行えないため、本格的な 3DCG 制作用途には向かない OS でしたが、マルチコア CPU の普及により家庭用OSの位置付けにある Windows XP Home Edition でも本格的な 3DCG 制作が行えるようになりました。
家庭用OS として位置付けられる Windows としては NT テクノロジーが採用された初めての OS となります。 XP以前の家庭用 OS は Windows 98/SE/ME でしたがこちらはMS-DOS 上で動作する 16bit 互換 OS であり、512MB を超えるメモリを扱う事は出来ませんでした。
付け加え不安定であったため、Windows XP を高く評価するユーザーの多くは、Windows 98を使用していた方だと思います。実際のところ、同世代のビジネス向けOSである Windows 2000 に比べると Windows XP はかなり重い OS になります。
また、Windows 2000 と XP に関しては ファイアウォールとナンセンスなデザイン以外は通常業務において殆ど変わらないOSです。
従来のワークステーション構成では、デュアルCPU (CPU 2個構成) が一般的であったため、ビジネス向け Windows OS が必要でした。
ところがマルチコアCPUの登場によって物理的に一つのCPUでも分散レンダリングが可能になったため、Windows XP Home Edition 以降(VISTA含む) の家庭用OS でも本格的な 3DCG制作が可能となっています。
ちなみに従来のシングルコア時代のCPU×2個構成(Athlon MP 2400+) と現在の2コアCPU×1個構成のレンダリング・性能の差を比較した場合、2倍近く性能も向上しています。また、4コアCPUも登場しており、認識可能なCPUの数が一つに制限されている XP Home Edition でも、従来のレンダリング・サーバー並みの制作環境を得る事が出来ます。
3DCG 制作に関連すると思われる XP Home Edition と XP Professional の大雑把な違いは以下の通りです。
3DCGワークステーションにおいて、ビジネス向け Windows OS と大きく異なる点は、認識できる CPU は1つまでに制限されている点です。つまり、このような2ソケット以上のマザーボードで使用しても1つのCPUしか認識しません。
シングルコア時代のワークステーションは、CPU 2個構成、つまりデュアルCPU環境が一般的でしたが、現在は Core 2 といった高性能なマルチコアCPUが登場しているため必ずしも Windows XP Professional などのビジネス用 Windows OS が必要という訳ではなくなっています。
Windos XP Professional や VISTA Business には、64bit OSという選択肢がありますが、XP Home Edition には 32bit 版しか存在しません。3DCG ワークステーションを自作する上では重要なポイントとなります。
参照 => Windows XP Professional x64 ~ 3DCG制作に関して
ビジネス向けの Windows OS は最低でも 10年 使用する事ができますが、家庭向けの Windows OS はたったの 5年しかありません。
Windows XP Home Edition も例外ではなかったのですが、購入してから2年も経たないうちに OS のアップグレードを迫られる状況にあり、その上、後継OS である VISTA の出荷が大幅に遅れたため、XP Home Edition は例外的に XP Professional と同じサポートフェーズが適用されることになりました。
家庭用である VISTA Home Basic / Premium のライフサイクルは5年です。(毎度、土壇場になって伸びているが)
基本的に家庭用OS はライフサイクルが短いため、仕事で使用するケースではお勧め出来ません。ネットワークに繋がなければという強引な意見もありますが今時考えられません。一般家庭にパソコンが普及したのは Windows XP からであり、家電感覚で購入している消費者の反発はこれから強くなっていくのだと思います。
スタンドアローンの3DCG制作環境としては十分ですが、Windows XP Professional と比較した場合、以下の制限が設けられています。これらが必要と思われるのであればXP Professionalを選ばれると良いと思います。
Windows Server のドメイン・ネットワークに参加する事が出来ません。目的によりますが Windows Server を基幹とする大規模ネットワークを利用したグループ制作、学内のクライアントマシンとしては XP Professional (ビジネス向け Windows) が適します。
Windows Server を基幹とするネットワークを構築する場合は、XP Professional (ビジネス向け Windows) と クライアントの数に応じた CALライセンスが別途必要です。
Windows Home Edition 同士、叉は Professional とのファイル共有は可能です。小規模なグループワークには十分ですが、学内 LAN においては、Professional が一般的だと思います。
EFS ファイル暗号化システムをサポートしておらず、USBメモリを使用して安全にデータを持ち運ぶ機能は提供されていません。一般の方には難しい内容なので家庭用OS としては不要というのは分かります。
関連 => 暗号化による情報漏洩対策 ~ EFS の活用 (スタンドアローン)
またHome Edition は、セキュリティに関する初期設定があまく、信じ難いことにセーフモードで起動すると Administrator でノーパスワードでログインする事が出来てしまいます。 情報漏洩に対する配慮はないに等しく、ファイアウォールだけの見掛け倒しのOSとなっています。
Windows VISTA への移行を進めるため、2008年 6月 30日に Windows XP 全てのラインナップが出荷停止となります。VISTAが3DCG制作において適さない OS である以上、インストール・ディスクをお持ちでない方は、早めに入手しておく事をお勧めします。
Windows XP 購入の際の注意点は以下のページで説明しています。
参照 => XP 出荷停止になる前に ~ VISTAのダウングレード権