現在、マルチコアCPU は4コアまで進んでおり、一つのCPUで4スレッド・レンダリングが可能になっています。4スレッドレンダリングは従来のワークステーションで言えばWindows Serverが必要なレンダリング・サーバー向けの仕様です。
これが家庭用OSで実現できる訳ですから、3DCG制作者にとっては夢に見た環境と言えると思います。
4コアの恩恵を得るには使用するレンダラがそれだけのスレッド数に対応している必要があります。2スレッドにしか対応していないソフトウェアでは恩恵はありません。
コンシューマー向けのマルチコアCPU は、現在、Intel / AMD とも 1個のCPUで4コマまでのCPUを出荷しています。ここでは、性能面で優れる Intel の Core 2アーキテクチャについて取り上げます。
Intel の初期デュアルコアCPU は消費電力、発熱が高かった Pentium 4 を強引に一つにまとめた Pentium D プロセッサですが、更に消費電力、発熱が高くAMDに遅れをとりました。
しかし、最新の Core 2 アーキテクチャでは、消費電力、性能面で大きく AMD の2コアCPUを突き放しています。
2007年11月現在出荷されている Core 2 Duo CPU
推奨されるCPU | FSB | L2 Cache | クロック数 | コア数 |
---|---|---|---|---|
Core 2 Duo E6850 |
1333MHz |
4MB |
3.0GHz |
2 |
Core 2 Duo E6750 |
1333MHz |
4MB |
2.66GHz |
2 |
Core 2 Duo E6550 |
1333MHz |
4MB |
2.33GHz |
2 |
Core 2 Duo E6540 |
1333MHz |
4MB |
2.33GHz |
2 |
Core 2 Duo E6700 |
1066MHz |
4MB |
2.66GHz |
2 |
Core 2 Duo E6600 |
1066MHz |
4MB |
2.4GHz |
2 |
この構成のワークステーションが適している3DCG制作用途は、以下のページで説明しています。
参照 => 一般的な 3DCG Workstation ~ 2コア1CPU構成
1ダイ2コア×2 という 上記、Core 2 Duo を一つにまとめた CPU です。
最近、出荷された AMD の Phenom 9600 は1ダイ4コア×1という設計となっており真のQuadコアといえますが、ベンチマーク結果では、Core 2 Quad に届かないようです。
2007年11月現在出荷されている Core 2 Quad CPU
推奨されるCPU | FSB | L2 Cache | クロック数 | コア数 |
---|---|---|---|---|
Core 2 Extreme QX9650 |
1333MHz |
6MB×2 |
3.0GHz |
4 |
Core 2 Extreme QX6850 |
1333MHz |
4MB×2 |
3.0GHz |
4 |
Core 2 Extreme QX6800 |
1333MHz |
4MB×2 |
2.93GHz |
4 |
Core 2 Extreme QX6700 |
1066MHz |
4MB×2 |
2.66GHz |
4 |
Core 2 Quad Q6700 |
1066MHz |
4MB×2 |
2.66GHz |
4 |
Core 2 Quad Q6600 |
1066MHz |
4MB×2 |
2.40GHz |
4 |
この構成のワークステーションが適している3DCG制作用途は、以下のページで説明しています。
参照 => 一般的な 3DCG Workstation ~ 4コア1CPU構成
3DCG制作者からみた上記CPUを搭載したマルチコアCPU×1個構成を持つワークステーションに共通するメリットは以下の通りです。
並列処理可能なアプリケーションを使用されない一般の方(ビジネス、家庭向けパソコン)としてはデメリットとなる要素の方が多いです。
3DCGソフトウェア(レンダラ)の中には、CPU毎にライセンスが必要な製品があります。マルチCPU だとCPUの数だけライセンスが必要な場合でも、マルチコアCPU×1構成であればライセンス料は発生しません。
主な用途 | Windos OS | 32bit | 64bit | 対応CPU数 |
---|---|---|---|---|
サーバー 向け |
Windows Server 2003 | ○ |
○ |
1~8 / 1~16 / 1~32 ライセンス形態による (NTテクノロジOS) |
Windows Server 2000 | ― |
|||
ビジネス 向け |
VISTA Business | ○ |
○ |
1~2 (NTテクノロジOS) |
XP Professional x64 | ― |
○ |
||
XP Professional | ○ |
― |
||
Windows 2000 | ||||
Windows NT4 | ||||
一般家庭 向け |
VISTA Ultimate ※サポートフェーズ変更 |
○ 両方提供されるのは パッケージ版のみ |
||
VISTA Home Premium | ○ |
○ |
1 (NTテクノロジOS) |
|
VISTA Home Basic | ○ |
|||
XP HomeEdition | ― |
|||
Windows 98 (SE/ME) | 仮想 32bit |
― |
1 なんちゃってマルチタスク テクノロジOS (1コアしか認識しない) |
|
Windows 95 |
2CPU構成までは Windows XP Professional が必要ですが、1CPU構成に制限されている Windows XP Home Edition でも 4コアCPUによる4スレッド計算が行えます。 Windows 2000 はマルチコアCPUの場合、2コアまでしか認識しません。(4コアCPUの場合、2コアまでしか使用出来ない)
3DCG ソフトウェアの場合も上記 OS と同様に CPU の数に応じてライセンスが必要となる場合があります。例えば、Maya / 3ds Max / XSI で採用されているハイエンド・レンダラ MentalRay は CPU の数に応じてライセンスが必要になります。
例えばLightWave 3Dのベースのレンダリング・エンジンは、最新の ver.9.3 で 8スレッドから 16スレッドまで引き上げられています。また、CPU数に応じたライセンス料は必要ありません。このようにソフトウェアによって差があります。
MentalRay レンダラを採用している Maya / XSI / 3dsMax は現在 2CPU まで 1ライセンスで使えるようになっています。
シングルコア時代では CPU 4個以上の構成は、Windows Server が前提でしたが、4コアCPU×1構成では、家庭用 OS Windows XP Home Edition であってもレンダラが対応していれば物理的な 4スレッドレンダリングが可能になります。ようやく、家庭用パソコンでも本格的な3DCG制作が行える時代が来たかという感じです。
4コアCPU×1個構成と2コアCPU×2個構成を比較した場合、総コア数は同じ4コアですが、並列処理の効率は4コアCPU×1個構成が高いと言われており、消費電力の面でも CPU 1個構成の方が遥かに優れています。
従来のシングルコアCPUに比べると消費電力は高くなります。搭載されるコア数を使わなければ、無駄に電力を消費するだけの地球環境に悪いCPUと言えます。
1CPU構成のメリットは、高価なECCレジスタードメモリ(FB-DIMM)を必要としない事です。(例外もあります) つまり、マザーボードが安い、メモリが安い、ソフトウェア・ライセンス料が掛からない、といった吉野家の牛丼以上のメリットが沢山付いて来ます。
本稿は3DCG制作者を対象としていますが、これまでマルチCPU環境を使用された経験のない方は、以下の点を誤解されている方が多いように思います。
2コアCPUから4コアCPUへ移行した所で、1コアあたりの性能が同じであればメーカーが言うような2倍になるといった性能は体感する事はありません。逆に 4コアCPU は1コアあたりのクロック数が低くなる傾向があるため、逆に性能が落ちたと感じます。
並列処理の恩恵を得るには、使用するアプリケーションが対応している必要がありますが、並列処理を必要とする分野は限られています。一般家庭においては動画のエンコードぐらいであり、ビジネス・アプリケーションにおいては何のメリットもありません。
将来的に仮想化技術の応用で CPU 内部で複数のコアを一つのCPUとして処理する技術が出てくればという期待もありますが、マルチスレッドが行えないアプリケーションが多い現状ではハードウェア・ベンダーが言うような処理能力向上のメリットはありません。
グラフィック関連やビジネス・アプリケーションでは既に十分な処理能力が得られており、ソフトウェア・ベンダーがコストを掛けてまで高度な並列処理プログラムに置き換えるとも到底思えません。
コア数が増えると商品電力が増加します。将来的にはもっと効率的に消費電力をコントロールできるようになるかも知れません。ハードウェア構成によって使用するおおよその見当をつけるツールです。結構使えます。
ビジネス・アプリケーションや一般的なグラフィックソフトウェアを使用する目的では、バリューPCまで格下げになった従来のシングルコアCPU (Celeron や Sempron など)でも十分過ぎるパフォーマンスが得られます。
VISTAを想定した場合は 2コアCPUも視野にといったところでしょうか。