従来の4スレッド環境は 4個のCPUとWindows Serveを使用したサーバー向けの高価なコンピューターであり、ワークステーションではなくサーバー向けの環境となります。
現在は 1CPU で4スレッド・レンダリングが実現しており、従来の 4CPU 構成と比較すると消費電力の面で優れています。この構成のワークステーションが適した用途について説明します。
レンダリング速度にウエイトを置いた3DCG制作に適した構成です。ただし、レンダリングといっても、レイトレーシング・ラジオシティ系レンダリングに適します。セルシェーディングやOpenGLハードウェア・レンダリングにおいては恩恵は少なくなります。
基本的なオペレーションは1コアしか使用しないため、3DCG初心者やモデリング作業、シーン組み立て、手付けモーション作成などが中心となる一般的な用途では、低いクロックの4コア CPUよりも高クロックの2コアCPUの方が適しています。
一つのCPUに詰め込むコア数が増えると消費電力も上昇します。3DCG制作内容によっては、無駄に電力を喰う結果を招きます。
2007年12月現在、AMD の Athlon64 x2 と Intel の Core 2 を比較した場合、消費電力、レンダリング性能(FPU) を比較した場合、Intel の Core 2 アーキテクチャの方が高い性能を持っています。4コアCPU でも 2コアCPU と同じような力関係です。
推奨されるCPU | FSB | L2 Cache | クロック数 | コア数 |
---|---|---|---|---|
◆Yorkfield (45nmプロセス) 1割ほどレンダリング性能が向上 | ||||
Core 2 Extreme QX9650 |
1333MHz |
6MB×2 |
3.0GHz |
4 |
Core 2 Extreme Q9550 |
1333MHz |
6MB×2 |
2.83GHz |
4 |
Core 2 Extreme Q9450 |
1333MHz |
6MB×2 |
2.66GHz |
4 |
Core 2 Extreme Q9300 |
1333MHz |
6MB×2 |
2.50GHz |
4 |
◆Kentsfield (65nmプロセス) | ||||
Core 2 Extreme QX6850 |
1333MHz |
4MB×2 |
3.0GHz |
4 |
Core 2 Extreme QX6800 |
1333MHz |
4MB×2 |
2.93GHz |
4 |
Core 2 Extreme QX6700 |
1066MHz |
4MB×2 |
2.66GHz |
4 |
Core 2 Quad Q6700 |
1066MHz |
4MB×2 |
2.66GHz |
4 |
Core 2 Quad Q6600 |
1066MHz |
4MB×2 |
2.40GHz |
4 |
Core 2 Extreme Q9550/Q9450/Q9300 は 2008年2月出荷予定
Core 2 Quad Q6600 は OC耐性が非常に高く、定格電圧で上位プロセッサに匹敵する可能性を秘めています。自作しかありませんが。
AMD のコンシューマー向けCPU の 4コアアプローチは 1ダイ4コアに拘ったため、従来の 1ダイ2コア CPU× 2個構成 というアプローチでした。 (セット販売ですね)
参照 => AMDが投入するクアッドコア環境「Quad FX」
将来的に1ダイ4コアCPU へ換装することで 8コアへのアップグレードが可能としていましたが、2007年 12月の段階でこの計画はキャンセルになる模様です。
1ダイ4コアとなる AMD 初のコンシューマー向けCPU Phenomシリーズがようやく登場しました。早速 インプレッションも出ています。AMD の発表では浮動小数点演算の性能が従来の2倍になるとの事で期待していたのですが、、
参照 => AMD新型Quad-Coreの実力は? - Phenom 9600ファーストインプレッション
Intel の Core 2 アーキテクチャには及ばないようです。2007年 12月 の現状では、4コアCPU ×1個構成のワークステーションは Core 2 Quad プロセッサを搭載したワークステーションが適していると言えます。
例えば右の図のように、2コアCPU×2個 構成でもコア数は同じ4コアです。
この場合、Intel プロセッサであれば Xeon / Opteron という事になりますが、消費電力、レンダリング・パフォーマンスの面では CPU 内部のキャッシュ容量の差は出難いため、4コア1CPU構成が適しています。また、消費電力、コスト面で有利になります。
こちらの記事を見て下さい。2コアXeon (3.2GHz) ×2個 構成と 2コア Core 2 Duo (3.2GHz)を比較した場合、レンダリング・パフォーマンスは同等の結果が出ています。つまり、総コア数4コアよりも 総コア数2コアが同じパフォーマンスとなるケースがあります。
ちなみにXeon / Opteron のCPU 2個以上の構成は、高価なECCレジスタードメモリ(FB-DIMM)が必要ですが、これは高速なメモリという訳ではなく、メモリを複数のCPUが共有するため高度なエラー訂正を行なう必要があるからです。メモリのパフォーマンスよりも安定性を重視したメモリという事になります。
4コアCPU ×1個構成のワークステーションが適している3DCG制作者です。 |
何れの場合も使用するソフトウェアが4つ以上の並列処理(マルチスレッド)に対応していなければ恩恵は得られません。ソフトウェア・ベンダーにお問合せください。
4コアCPU ×1個構成のワークステーションをお勧めできない3DCG制作者です。 |
2コアCPU に比べ、4コアCPU は消費電力も高くなります。制作内容、目的によっては3DCG制作を目的とした場合でも、無駄な消費電力を浪費するだけの環境に悪いコンピューターとなります。特に一般の方、ビジネスユーザーには恩恵はありませんのでご注意ください。
従来の4CPU構成はサーバーの領域であり、Windows Server OS を必要としましたが、これ以上の性能を1CPU、それも家庭用OSで実現できるため、3DCG制作者にとって4コアCPUは夢のようなCPUです。
この4コア CPU×1個構成の性能を生かすには、使用するアプリケーションが4スレッド以上の並列処理に対応している必要があります。統合型3DCGソフトが内包するレンダラによって違いがあるので、事前に確認しておく必要があります。
また、仮にレンダラが対応していても部分的にしか対応していない場合があります。例えばシェーダーやエフェクト関連などの拡張モジュールが対応していなければ4スレッドレンダリングの恩恵は得られません。
前述したように、従来の4スレッド以上のレンダリングはサーバー向け構成であったため、2スレッドまでしか対応していない部分も多いかも知れません。このようなケースではCPUを使い切る事が出来ないため、4コアCPUで得られる恩恵は少なくなります。
これらの情報はソフトウェア・ベンダー側でも公開していない事が多いので不明な点があれば、事前にお使いのソフトウェア・ベンダーに確認を取った方が良いとおもいます。
Blender(リンク先の記事は古いです) の現行のベースレンダラは、2スレッドまでしか対応していません。つまり、4コア CPU×1個の恩恵は得られません。使用するレンダラ、シェーダー、物理演算等、対応しているスレッド数を把握しておく必要があります。
4コア1CPU構成のワークステーションを取り扱っているパソコン・メーカーは以下のページで紹介しています。
参照 => 3DCG ワークステーション 取り扱いパソコンメーカー