2008年末に登場した Intel Core i7 は、Core 2 Quad の後継CPUであり、プロセスルールは 65nm から 45nm へ微細化も進んでいます。
その後も Core 2 世代の CPUと置き換えが進み、2010年末現在は、ハイエンドからエントリー向けまで、Core i ブランドに置き換わっています。
.Intel Core 2 ブランドの後継である 現行Intel プロセッサ Core i7 / i5 CPU では、従来のマルチコアCPUの欠点であったコア数と動作クロックの上限がトレードオフという問題の改善が図られています。
この改良によって前のページで説明したように、以前は3DCG制作を前提とした場合、高クロック版の2コアCPUの優位性が薄れたため、4コアCPUを選択した方がメリットが大きくなっています。
Core i7 / i5 CPU の最も大きな特徴として コア単位でスイッチのオン、オフが出来るようにキャッシュ周りから設計が変更された点が挙げられます。前述したように殆どプログラムは単一スレッドで実行されるため、実質的には1コアしか利用出来ません。
Core i7 / i5 CPUでは Turbo Boost テクノロジにより、例えば単一スレッドで高負荷が発生した場合、残りの3コアを停止してTDPの枠内で1コアの動作クロックを自動的に引き上げる事で、コア数と動作クロックのトレードオフの関係を改善しています。
Core i CPU 世代以降のマルチコアCPUでは、3DCG制作を前提とした場合、消費電力を除けば、4コアCPU を選んだ方がメリットが多く適しています。
.Intel SpeedStep テクノロジ(EIST)-wikiとは、負荷に応じてCPUが動作するクロックを動的に変更する機能の事で、従来の2段階から状況の応じて多段階で動作クロックを変動するように変更されています。
ただし、グラフィックス分野などリアルタイム性能が要求される分野では、クロック変動時のタイムラグが操作性に大きな影響を及ぼすケースがあります。(詳しくは自作ワークステーションのレビューで説明予定)
AMD CPU ではCool'n'Quietが該当する機能になります。
.C-STATE Techは、CPUが動作時に機能する EIST と異なり CPUがアイドル状態、つまり、負荷が発生していない時に CPU の消費電力を下げる機能です。
C4ステートではCPU電圧を下げる事でアイドル状態での消費電力を大幅に下げていましたが、C6ステートではコア単位でオン、オフが可能になり更に柔軟なタイミングで C6ステートへ移行出来るようになっています。
省エネ効果は非常に高く、高負荷時1.32V → アイドル時 0.88V 付近まで VCore が変動します。EIST動作時にも作動します。EISTよりも動作時のタイムラグは感じなたいめ、実用的且つ、省電力効果は高いです。
従来、チップセット経由でメモリに接続していましたが、CPU側にメモリコントローラー内蔵することでCPU、メモリ間のレイテンシを改善しています。(AMD Phenom Xと同じアプローチ) 同一クロックのCore 2 CPU よりも1.5倍近く性能が向上しています。
CPU自信がコア温度を常に監視し、危険域まで温度が上昇すると強制的に動作クロックを落とすようになりました。この機能を当てにしてか、従来の Core 2 世代のリテールクーラーと比較すると Core i 世代では全体的に小型化されています。
しかし、私が知る限りではリテールクーラーは明らかに性能不足で本来の性能が出ていない事にさえ気がつかない人も多いのではないかと思います。
実際に Core i7 870 の定格動作で室温30℃の環境で長時間負荷を掛けた場合、リテールクーラーでは廃熱が追いつかず、規定通りの性能は出せませんでした。
.Core 2 から Core i で退化した機能も存在します。残念なことにECCメモリが非対応になりました。信頼性の面で Xeon CPU と差別化する意図がある事は確実で、今後販売される Intel の一般市場向け CPU は全て ECC非対応になると思われます。
AMD の Phenom II は当たり前のように ECCメモリをサポートしています。安定性、信頼性を重視すれば、AMD CPU がアドバンテージを得た格好になっています。
3DCG制作を目的としたワークステーションを購入する上で、重要なポイントになりますので、Xeon CPU について触れておきます。
一般市場向けのCPUにマルチコアCPUが普及したことで、「ただでさえソフトウェアの敷居の高い 3Dグラフィックスの分野でハードウェアの敷居が低くなった事は喜ばしい」 という話でしたが、現在は状況が変わっています。
「仕事で使う安定性が必要なら、Xeon 買えや。」 とも言いたげに Core i7 世代以降の一般市場向けCPUでECCメモリ非対応としたため、HPやDELL が現在、販売しているワークステーションは、ほぼ全て Xeon CPU へ移行しています。
主な理由として考えられるのが複数CPU構成が前提だった Xeon CPU から、1CPU構成を前提としたモデルが拡充された事が挙げられます。
そして、1CPU構成では高価なレジスタードメモリが不要であること、コンシューマー向けCPUが安定動作に欠かせないエラーチェック機能を持つECCメモリをサポートしなくなった事が背景にあると考えられます。
現在、DELL のワークステーションは ECCメモリサポートを全面に打ち出してワークステーションを展開していますが、Core 2 世代のワークステーションではコスト優先で ECCメモリは採用していませんでした。その程度の差です。
1CPU構成の Xeon CPU の場合、従来の複数CPU構成よりシステム単価は下がりますが、同性能の Core i7 と比較すると高価なため価格性能比は極めて悪くなります。しかし一定の信頼性は確保される、という事になります。
安定、信頼性が重視される業務分野との差別化をより鮮明にするため、従来は当たり前のようにサポートしていたECCメモリが Core i CPU 以降では非対応になっています。特に大容量メモリを使用する3DCG制作においては無視できない内容です。
Xeon ブランドは従来通り、複数CPU構成を前提としたブランドにしてほしい。そして一般市場向けで廃止した ECCメモリを復活させてほしい。
只でさえ敷居の高い 3Dグラフィックスの分野において、マルチコアCPUの登場でハードウェアの敷居が下がったのに、また逆戻りです。あからさまにECCメモリを規制してまで1CPU構成のXeon を出す事は特定分野を狙い撃ちしている事に他なりません。
1CPU構成の Xeon を導入して 一般市場向けは ECCメモリを使えないようにする戦略は、とれるところからはとる、という姿勢そのものです。これ以上、3DCG制作環境の敷居を上げるのはやめて頂きたい。