前のページで触れましたが 2011年1月に登場する Intel の次世代CPU (コードネーム Sandy Bridge)は、CPU 内部にGPUを組み込むという従来のCPUにはない特徴を持っています。
CPU と ビデオカードの組み合わせは 3DCG ワークステーションを構成する重要な要素であるため PC を導入する際に注意したい事柄について説明します。
3DCG/CAD アプリケーションの多くは3D-API にOpenGLを利用します。情報量の多い三次元データを扱うため、CPUと 3D表示をアクセラレートするビデオカード-GPU の組み合わせが、3DCGワークステーションの構成を決める上で重要なポイントになります。
2011年初頭に登場する Intel の次世代CPU (コードネーム Sandy Bridge)を考察する前に、先ず CPU と GPU の関係について一定の認識が必要です。
GPU (Graphics Processing Unit) は、ビデオ出力のための 2D/3D 高速化処理に特化したプロセッサの事で、パソコンを構成する上でCPUと並び必要不可欠な部品です。通常はビデオカード上にGPUが乗っています。
ビデオカードとは、AGPスロット以降は専用の拡張スロットに挿して利用する拡張ボードのことをいいます。
ビデオカードはGPUとVRAMで構成されており、VRAM は通常、パソコンが使用する通常のメモリよりも高速なメモリが使用されていますが、そうでない場合もあります。
.マザーボード上にGPUを配置し、VRAMはパソコンが通常使用するマザーボード上のメモリを共用するタイプはグラフィックス統合型チップセットになります。このようなパソコンは、マザーボード上にビデオ出力ポートが備え付けられており、ビデオカードを別途必要としません。
CPU、GPU、メモリ間はチップセット経由で接続しているため、このように呼ばれます。いわば、マザーボード、チップセットで前述したビデオカードを実現したタイプであり、ビデオ専用の拡張スロットを持たないノートパソコンの殆どは、これに該当します。
インターネット普及に伴いパソコンが一般家庭に広がりを見せた頃から、デスクトップPCでもノートパソコンと同様にオンボードにGPUを持つ製品が増え始め、現在、主流の低価格デスクトップパソコンは、全てこのタイプと考えて差しさえありません。
チップセットはマザーボード上にある様々なデバイスを接続する集積回路の事で、CPUはチップセットを経由してメモリ、GPU、USBなど様々なオンボードデバイスを接続します。つまりチップセットでそのPCの機能、将来性が決定します。マザーボード上のチップセットによりビデオカードを実現しているため、(グラフィックス)統合チップセットと呼ばれます。
このようなタイプのパソコン、厳密にはグラフィックス機能は本稿のテーマである 3DCG制作には適さない事は以前にも指摘しています。
ノートPCと同じタイプのデスクトップPCであり、省スペース、デザイン優先の国内電機メーカー製パソコンの殆どはこのタイプです。
ビデオカードを別途必要としないパソコンは、3Dグラフィックス性能がビデオカードに比べ大幅に劣るだけでなく、多くはゲーム用途の OpenGL しかサポートしないため、安定して 3DCG/CAD アプリケーションを動かすのに向いていません。
OpenGLビデオカードを追加してオンボードグラフィックスを無効すれば、使えない事はありませんが、このような一般向けの低価格マザーボードはコスト優先のものが多く、安定性に欠ける事も多々あります。
もう一つ、GPU について抑えておきたいポイントがあります。それは GPU (ハードウェア) は、CPUと違ってアクセラレーションする3D-API(ソフトウェア)のバージョンに依存するという点です。
例えば、DirectX 10 サポートとしている GPU は、DirectX 11 をサポートしません。具体的には DirectX 11 で拡張された機能を描画する事は出来ず下位互換でのアクセラレーションとなります。
OpenGL においても同様で、なるべく最新バージョンの 3D-API をサポートするGPU(ビデオカード)を選ぶ必要があります。 お手持ちのビデオカードの OpenGL 対応状況を調べる方法は以下で紹介しています。
参照 => OpenGL バージョンの確認方法 ~ ビデオカードのチェック
正確には使用する3Dアプリケーションがサポートする OpenGL のバージョンを満たしていれば良い訳ですが、ビデオカードがサポートする OpenGL のバージョンが新しい程、今後、登場する新しいバージョンの3Dソフトに対応する事が出来ます。
価格の落ちた型遅れのビデオカードを購入する場合は、この点も考慮しましょう。
.Intel は 2010年に矢継ぎ早に GPU と CPU を統合した初の CPU を出荷しています。 Core i3/i5 にラインナップされるコードネーム Clarkdale と呼ばれていた CPU ですが、対応チップセットのマザーボードであれば、ビデオカードを必要としません。
CPU | コア数 | HTT | ソケット | メモリ |
---|---|---|---|---|
Core i5 7xx (Lynnfield) |
4 | × | LGA1156(H) | DDR3 1333 デュアルチャンネル |
Core i5 6xx (Clarkdale) |
2 & GPU |
× | LGA1156(H) | DDR3 1333 デュアルチャンネル |
Intel がこのようなGPUとCPUをワンパッケージ化した CPU の出荷を急いだのは理由がありました。 (CPU 内の GPU デバイスをiGPUと呼んでいます)
Intel の GPU は、専業メーカーである ATI(AMD) や nVIDIA に比べ、特に※3D性能は2世代以上も性能に開きがあり、既に ATI を買収した AMD に対してボリュームゾーンであるグラフィック統合チップセットの分野では AMD に大きく遅れていたためです。
※ここでの3D描画性能とはジオメトリアクセラレーション(頂点処理能力)、リアルタイム3Dシェーディング機能の事であり、3Dステレオ映像の事ではありません。
これまで、GPU に求められる性能は高解像度化した動画(HD)の圧縮伸張、再生機能ぐらいで、3D描画性能はそれほど重要でなく、ノートPCには消費電力の高い 3D描画性能に特化した GPU は必須ではありませんでした。
ところが、Windows VISTA 以降の Windows では GPU の3D処理を利用するようになったため、従来は 3Dゲーマーにしか必要とされなかった GPU の性能の違いが明確になり、AMD チップセットに対して巻き返しを図る必要があったためです。
以下が参考になると思います。
Clarkdale を一言で言えば、従来、マザーボード上にあったチップセット経由で接続していた GPU を、CPU 側に配置変更することでレイテンシ改善を狙った CPU ということになります。Intel GPU 自体の性能が向上している訳ではないため、3Dの描画性能は高くなく、記事を見る限り、HD描画性能の向上にとどまっています。
Clarkdale が DirectX 11 をサポートしない点も矢継ぎ早に出した感が否めないCPUとなっていますが、来年登場する Sandy Bridge は CPU ダイ上に GPU コアがのり、L2 Cache を利用出来るようになることから、Intel の発表では中価格帯のビデオカードに迫る性能となると言われています。
AMD は ATI を買収したことで GPU の性能は更に高いと予測されており、加えて OpenGL のドライバに関するノウハウももっているため、近い将来、ビデオカードを必要としない安価な3DCGワークステーションが登場するかも知れません。
CPUとGPUを一つにしたところで、それが、Windows の 3Dゲームなど DirectX を前提としている事になんら変りはなく、OpenGLを前提とする 3DCG/CAD 分野のアプリケーションに適さない点は、前述したグラフィック統合チップセットと同じです。
引き続き、グラフィック統合CPUの本命と言われる 2011年に登場する Intel Sandy Bridge、AMD Bulldozer について考察します。