コンピューター上での時間軸の表現は、3DCGに限らず左から右の流れで表現されます。つまり、右方向への進行は時間の経過を表します。身近な例では、動画や音楽を再生すると左から右へスライダーがシフトしますが同じ事です。
3DCG におけるモーション制作は、モーションの特性によって幾つかのアプローチが用意されています。統合型 3DCG ソフトウェアが提供する主な機能は以下の通り。
一つの球体が 5秒間 移動するモーションを作成する場合、先ず、時間軸 0 の位置にスライダーを合わせ球体の座標情報に対してキーフレームを打ち込みます。次にスライダーを5秒経過した位置まで進め、球体を移動し更にキーフレームを追加します。
この一連の作業でスライダーを 0~5 の範囲で動かすと球体が移動するモーションが出来ます。このようなタイムスライダーを動かしてキーフレームをチマチマ入力する作業を手付けによるモーション制作と呼ぶ事もあります。
このように座標に対してキーフレームを打ち込めば移動するモーションとなりますが、マテリアル属性で不透明から透明度100%に指定すれば材質が変化するモーションとなります。また、キーフレーム間の加速、減速値を適切に設定しなければ機械的、ロボットのパントマイムのような不自然な動きになります。
どのようなパラメーターに対してキーフレーム入力が行えるかは3DCGソフトウェアによって違いがあります。キーフレーム入力可能な要素が多い 3DCGソフトウェアほど、表現できるモーションの幅も広がります。
キーフレーム入力によるモーション制作は非常に手間と根気のいる作業です。目的によってはとても神経を使います。中でも人間、動物などキャラクター・アニメーションは適切な加速、減速の設定を行わないと不自然な動作に見えてしまい、せっかくのクオリティーを台無しにしてしまうからです。
キーフレーム間の加速、減速を視覚的に編集するインターフェイスで、ミドルクラス以上のソフトウェアに搭載されています。ホビー向けの3DCGソフトではCARRARA PROが ver5 よりサポートしています。本格的なモーション制作になくてはならない機能です。
座標 (0,0,0) にあるオブジェクトが、左右(X軸)にふらふら動きながら上昇し(Y軸)、前後(Z軸)に前進、後退を繰り返す動きがこのグラフから読み取る事が出来ます。このカーブの形が加速減速の強さを表しています。
直線は 加速、減速が一定の等速運動である事を示す
そして、カーブを構成しているポイントがキーフレームになります。キーフレーム間の加速減速はこのようなグラフエディターと呼ばれるツールを使用してキーフレーム間の加速・減速を調整しますが、このようなインターフェイスを提供していない3DCG ソフトも存在します。
映像制作者をターゲットにした3DCGソフトウェアは大抵、このようなインターフェイスを提供していますが、操作性に一貫性はなくソフトウェアごとの癖やカーブ編集機能、柔軟性に大きな差があります。
キャラクターのモーションの場合、一体のキャラクターに使用されるキーフレームの数は半端ではありません。キーフレーム入力によるモーション制作の効率化を図るために提供される代表的な機能には以下があります。
主にミドルクラス、ハイエンドクラスのソフトに提供される機能です。
操り人形のように先端を動かすことで自動的に動作をつける機能です。例えば、スケルトン(ボーン)でセットアップされたキャラクターをアニメーションする場合、腕の付け根から動かすのではなく、手先を動かすだけで腕全体が自動的に動く仕組みです。
手先以外のモーションは自動的に求められますが万能ではなく、リアリティに欠けるといった側面もあります。キーフレームに変換後、(ベイク・焼き付けなどという) 手動でキーフレーム値の修正、といった作業を行う場合もあります。
つまり、通常の親子関係では親を動かすと子が従いますが、子を動かすと親も追随します。腕を動かすのに必要なキーフレームは手先だけ良いことになり、キャラクターのモーション制作を大幅に簡略化する事が出来ます。IK に関しては次のページで。
XSI では Animation Mixer 、Maya では Trax Editor 、Lightwave では Motion Mixer と呼ばれますが、一連のモーションを DTVノンリニア編集ソフトのような感覚でモーションを接続する機能です。
例えば、同じキャラクターで歩く、走る、それぞれのモーションを作成しておき、それを DTVノンリニア編集で映像を接続するような感覚でモーションを接続する事が可能になります。
その他にもハイエンドクラスでは多足歩行や足跡をつけるだけで歩く機能などソフトウェア独自の工夫や機能が提供されています。(この分野は XSI が先進的)
キャラクターアニメーションの制作においてキーフレーム、手付けによるモーション作成作業は時間がかかり、根気も必要となります。モーションキャプチャー・システムを用いて外部からキーフレーム情報を取り込んで制作するケースもあります。
モーションキャプチャー・システムには、幾つかの方式がありますが、間接毎にマーカーが付いたスーツを着てレーザーで取り込む光学式は大掛かりな設備が必要で専用のスタジオを持つのは大手ゲームメーカーなど一部です。
小中規模のプロダクションでもスタジオをレンタルというスタイルが一般的で個人制作者にとっては無縁です。
撮影した映像から動作を解析するタイプのモーションキャプチャー・システムも存在します。数千万円する上記システムに比べるとローコストで、小中規模のプロダクション、個人映像クリエイターの間で PV Studio はよく利用されています。
3DCG におけるモーション制作の基本はキーフレーム入力です。モーション付けは非常に地味な作業であり根気のいる作業となります。人間や動物などのモーション制作は、実写映像を注意深く観察する必要も出てきます。
昔はビデオをコマ送りしたりと大変でしたが、DVD の登場で映像資料も扱いやすくなっています。ページ右側でも紹介しています。
ストーリーのある映像作品を制作する上で大切なことは制作前の準備です。絵コンテを作成しチャートをしっかり作成することです。例えばアップにならない指先を一生懸命モデリングをしても時間の無駄になります。
作成する映像によって必要な3Dオブジェクトや場合によっては、3Dモデリングの方法にまで影響を与えます。
背景からキャラクターまで全てを3DCGソフトウェアで一本の映像としてレンダリングすることの方が稀であり、このような方法はレンダリング・コストの増加、書き出し後の映像の修正を困難なものとします。
例えば、煙などのエフェクトは After Effects などの映像編集ツールで合成した方が、3Dレンダリングのコストやメモリ資源を抑える事が出来ますし、修正も容易になります。このような計画は綿密な絵コンテ、資料があってこそ出来る事であり、行き当たりばったりの作成では適いません。
特に卒業制作や就職活動用の映像作品に取り組まれている学生さんは注意して下さい。経験も必要なため、上手く立ち回るのは難しいとは思いますが。