3DCG におけるライティングには、自然を装うライティングと意図的に行うライティングに分けて考える事が出来ます。前者は、ここで説明してきたような環境光を意識したライティング、後者は商品撮影などスタジオ・ライティング、映像撮影におけるライティングが挙げられます。
ここではケース別に 3DCGライティングの具体的な考え方を示します。
このような 3Dライティングに 「どこに照明を配置しろ」 などといった方法論は存在しません。空間をよりリアルに見せるためのライティングは先にイメージありきの世界であり、どうすれば表現できるか常に考える必要があります。
つまり、絵を描く行為と何も変わらない訳です。特にレイトレーシングをベースとする場合、ライティングのアプローチは非常に絵画的です。
私は中学から大学まで美術を嗜んでいたので水彩画を始め、日本画、アクリル画、油絵、エアブラシ・イラストの経験があります。絵心のない方でも小学生の頃、お寺や動物園で絵を描いた経験は誰にでもあると思います。
現実の世界を観察してキャンバスに描く行為は、3DCG においても何ら変わるものではありません。良くライティングに関して質問される方がいますが、それは心のどこかに 3DCG ソフトが描いてくれるという錯覚があるからです。
3DCG のライティング・パラメーターは覚える事が少ない
答えは全て現実の世界にあり、目に映るもの全てがライティングのヒントを提供しています。視線を少しそらしてディスプレイのふちを見て下さい。
現実の世界に置き換えて考えるには、観察力が求められる事はいうまでもありませんが、それぞれの光源モデルの特性やレンダリング方式について一定の理解が必要になります。機械任せに闇雲に手や機械を動かしても時間の無駄です。
プロダクトデザインのプレゼンテーションなどの目的で 3DCG イメージを制作する場合、対象物を効果的に見せるためのライティングが中心になります。このようなライティングは、実際の撮影で行われているライティングに関する書籍が参考になります。
普段、何気なく見てる雑誌の写真でも照明による絵作りは行われています。3DCG に関する書籍ではなく、撮影時の照明に関する書籍からライティング方法を学ぶことが出来ます。
スタジオ撮影といっても現実の世界ですから、リアリティを追求すれば環境光を意識する必要があるかもしれませんし、割り切った感じが CG らしさを出してプレゼンテーション用途には効果的なイメージに受け取られる事も考えられます。
現実の世界全てを計算式によって表現する事は難しく、また、現実的な行為ではありません。用意されている光源モデルやカメラなど実物をモデルにそれらの機能が提供されていますが、あくまでモデルであって完璧にシミュレートしてる訳ではありません。
リアリティーを追求するには、この違いがどこにあるか理解しておくことも必要になってきます。
ラジオシティ・レンダリングや IBL (Image Based Lighting) など計算により環境光を表現するアプローチがあります。 これらのライティング・アプローチは、レイトレーシングのように絵画的ではなく、コンピューター任せの要素が大きくなります。
私は IBL のような光源を一切使用しないフォトリアルな表現には興味がありません。なぜなら、これこそ「コンピューターが描く絵」 であって自分の作品とは呼べないからです。
絵を描く楽しさを 3DCG に求めているからこそ、私は楽しいと感じます。勿論、それ以外に楽しみを見出すのは間違いだと言いたい訳ではありません。
個人的に IBL を使った作品作りに興味がないだけで、技術的には興味津々遊んでいます。レンダリング・コストが高いので、現状ではスピードが要求される自分の仕事には使えないと再認識する事の方が多いですが。
趣味ではなく、3DCG ソフトウェアを活用する業界、特に映像分野やゲーム業界での就職を希望される方は、3DCG ソフトウェアの習得以前にデッサンや絵の勉強を優先される事をお勧めします。
レンダリングした結果に最終的な判断を下すのはコンピューターではなく自分です。デッサン力のあるなしで、これらの基準は大きく異なり作品に現れます。(不自然と思えるところが不自然に思えない。3Dソフトうんぬん以前の問題。)
3DCGソフトを学んだ専門学校生が就職先で、3DCG ソフトを触ったこともない美大卒の後輩が自分よりも質の高いイメージを作るのをみて、ようやく気が付いたという話は実際に何度も聞きました。
3DCG ソフトウエアはあくまで絵を描くための道具に過ぎないという認識は持っておく必要があります。
現実の世界を表現する 3DCG の世界においてライティングに限った話ではありませんが、3DCG に関する書籍では得られる知識に偏りがあります。 3DCG に関するライティングに関する方法論について書かれた書籍よりも写真集や撮影に関する書籍に目を向ける事をおすすめします。
特に若い方は、あまり難しく考えず、美しいものを沢山見て、沢山感動して下さい。
このような資料関係の多くは、CG制作資料室で紹介しています。学生が制作実習で取り組む事の多いテーマをカテゴリ別に整理しています。資料探しにお役立て下さい。
デッサンや漫画、イラストに関する書籍は、学習の手引き:【書籍】 で紹介しています。 撮影に関するライティングに関する書籍もここで紹介しています。
特定の 3Dソフトウェアに関する書籍も、学習の手引き:【書籍】 で紹介しています。ソフトウェア別、制作工程別に分類、最新の書籍を紹介していますのでお役立て下さい。
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