2005年は 64bit へ移行する節目の年となっています。現在も従来の 32bit CPU を搭載するパソコンが販売されていますが、近い内に 32bit CPUは姿を消します。低価格 パソコンにも 64bit CPU を搭載する製品も販売されていますので、パソコンを購入する際のチェックポイントになるかと思います。
(2005年 12月 2日現在)
2005年に書かれた記事で内容は古くなっています。2007年末から2008年初頭にかけての CPU に関する説明は3DCGワークステーション導入アドバイスで説明しています。
2003年 9月、一般市場向けの初の 64bit CPU となる AMD Athlon 64が登場しました。この 64bit CPU は、従来の 32bit プログラム との互換性を重視したCPU (AMD64)であり、従来の32bit CPU からスムーズに移行することが可能でした。
インテルは、サーバー市場で既に 64bit CPU Itanium(アイテニアム)を出荷していましたが、32bit CPU とは互換性のない生粋の64bit (IA-64 アーキテクチャ)となっており、専用の 64bit版 Windows と 64bit プログラムが必要となります。
一般市場向けには従来の 32bit プログラムはエミュレートさせるというアプローチで 64bit CPUの移行する予定でしたが、エミューレートであるため、従来のアプリケーションの実行速度が著しく低く、市場には受け入れられませんでした。
AMD64 に習い、従来の Intel 32bit CPU(IA-32 アーキテクチャ) に 64bit の機能拡張 (EM64T) を行う方式を採用します。2004年夏にワークステーション向けの Xeon プロセッサに EM64T 拡張を行った 64bit 版 Xeon をリリースしますが、メインストリーム向けの 64bit 版 Pentium 4 (EM64T) が出荷されたのは 2005年 2月の事です。
AMD が一般市場に64bit CPU を送り出してから、1年半が経過しており AMDの後塵を拝す形となっています。
AMD64 と EM64T CPU は基本的に互換となっており、どちらのCPUでも64bit アプリケーションを実行する事が出来ます。しかし、完全な互換ではありません。3DCG に関して関連の深い部分は以下の通りです。
3DNow! を利用しているプログラムは少ない(LightWave3Dはサポート)、あまり気にする必要はありませんが、SSE3 は、浮動小数点を効率的に計算するための命令セットをもっており、利用している3Dグラフィック ソフトは多いです。これらが使えないとソフトが動作しないという訳ではなく、適したパフォーマンスが得られないということです。
SSE3 に対応しているAMD CPU は、Athlon 64 では SanDiego 、Opteron では Veniceコア以降のCPUとなります。2005年 11月末の段階で出荷されている AMD 64bit CPU は何れも SSE3 をサポートします。
参照 => フェイスでAthlon 64の新コア“SanDiego”と“Venice”を展示中!
ちなみに Intel プロセッサは、全てSSE3をサポートしています。
64bit CPU の性能を引き出すには 64bit CPU に対応した 64bit OSと、64bit コードでかかれた64bit専用のプログラム(ソフトウェア)が必要となります。
しかし、Intel の EM64T が遅れた事もあり これらの CPU で64bit 動作可能なOS Windows XP Professional x64 Editon が出荷されたのは 2005年 4月 であり、64bit CPU Athlon 64 は 2003年 9月 に出荷されてから これまで 32bit CPU として動作していた事になります。
これまで、Athlon 64 を搭載するWindowsパソコンを使用していたユーザーは Windows XP Professional x64 Editon と 64bit 版のソフトウェアを使用することでやっと 64bit CPUの恩恵が受けられるようになります。
64bit 版3Dグラフィックソフトを出荷しているのは一部ですが、出揃うのは時間の問題です。この64bit 版のプログラムは当然ですが 64bti CPU 、64bit OS がなければ動作させることは出来ません。
参照 => 2005年11月30日現在の主要3Dグラフィックソフト 64bit 対応状況
CINEMA4D は早い段階で64bit 版を配布しています。64bit 環境に移行するだけでレンダリング速度が 20%も向上するとしています。これまでの Athlon 64 CPUを使用していたCINEMA4D ユーザーは、Windows XP Professional x64 Editon にするだけでパフォーマンスの向上が図れる事になります。
参照 => CINEMA 4DとCINEBENCHが64-bitに対応!
従来の32bit CPU では1度に32桁の計算を行うのに対し、 64bit CPU では64桁の計算が行えます。CPUが一度に処理できる計算の幅が広がるため、低いクロック数でも効率よく計算が行えます。
また、従来のメモリ制限 2GByte の壁が一気に 1024GByte に拡張されます。これは物理的にさせるメモリのことではなく、扱えるメモリ空間のことです。3Dグラフィックス分野においては、64bit 環境に移行するメリットは非常に大きいといえます。
巨大な情報量を扱う 3DCG制作においては、これまで作成できなかったような総ポリゴン数を持つ複雑なシーンや、高解像度テクスチャを使用した制作が行えるようになります。このような用途が必要とされる分野は限られており、通常、家庭で使うパソコンは無縁の世界です。個人制作や趣味においてそこまで要求する人はいないと思いますが。
64bit CPU に最適化されたレンダリングエンジンでは、 CPUが一度に処理できる計算の幅が広がるためレンダリング速度が向上します。64bit 化の移行はまだ始まったばかりなので、今後、64bit CPU に対する最適化が進めば、更に速度が向上する可能性もあります。
以前、リオワークスさんが公表されていたデータが新しくなっていました。開発中の64bit 版 Shade の情報は失くなっています。
参照 => RIOWORKS - Shade レンダリング時間比較 -
2005年5月頃に公表されていた開発中の 64bit 版 Shade のレンダリング時間です。
CPU | OS | Shade | レンダリング時間 |
---|---|---|---|
Opteron 2.0GHz×2 | WinXP x64 | 64bit | 112sec |
Opteron 2.0GHz×2 | WinXP Pro | 32bit | 168 sec |
64bit CPU で、ソフトウェア (OS / 3Dソフト)が 64bit に対応した場合、凄いスコアとなっています。2005年 11月末に 64bit 版 Shade 8 の配布が始まるので真相の程が楽しみです。