デュアルコア CPU を搭載したパソコンを購入、又は、デュアルコア CPU にアップグレードする上で注意したい点をまとめました。目的にあった CPU を搭載するパソコン、CPU を購入する上でも重要なポイントです。
デュアルコア、及びマルチプロセッサのパソコンで並列処理を行うには、ソフトウェアが並列処理に対応したプログラムである事が前提となります。(OSを含む)
マルチプロセッサに対応する代表的な分野に、3DCGレンダリング 、ノンリニア映像編集におけるレンダリング、画像処理などのフィルター処理、MP3 や MPG などのエンコード処理などがありますが、全てコンピューターが自動で行う計算に関係しています。
従来からマルチプロセッサに対応するソフト、分野を以下に示します。マルチプロセッサに対応するプログラムの完成度、また、分野によって得られる恩恵も変わる事に注目して下さい。
マルチプロセッサで処理を行うのは、レンダリングとダイナミクス(物理計算、非対応の製品も多い)など高度な計算が要求される部分だけであり、モデリングやテクスチャ設定などのリアルタイムな作業で働くのは 1CPU だけです。モデリングや編集に関しては何のメリットもありません。(フィルター処理などは考えられる)
3DCG 制作の場合、レンダリングを繰り返し確認作業を行う事が多いため、CPUの処理能力が高いほど作業全体に与える影響が大きくなります。そのため、少しでもレンダリング速度が速いほうが3DCG制作に適していると言う事になります。
Blender などのマルチプロセッサ非対応の3Dグラフィックソフトは適しません。
しかし、マルチプロセッサ(並列処理)対応したプログラムとはいえ、デュアルコアや、デュアルCPU 環境であっても CINEMA4D のように 1.8倍強 の高いパフォーマンスが得られる訳ではありません。並列処理の恩恵はレンダリングを行うレンダラ(プログラム)の出来次第であり、2CPUであっても 1.3倍程度のパフォーマンスしか得られないレンダラもあります。
また、ネットワークレンダリングに対応したレンダラであれば、ネットワークで接続された複数のコンピュータを使って計算を行う方が確実にレンダリング速度が上がります。(ネットワーク分散数、計算の複雑度のバランスにもよりますが)
マルチプロセッサに対応したノンリニア映像編集ソフトでは、上記の3DCG制作 以上にデュアルコア、及びマルチプロセッサの恩恵が得られます。
動画編集は、静止画に対しフィルターをかけるPhotoshop に対し、動画(連続する静止画)にフィルター処理をかけると考えれば分かり易いかと思います。常にレンダリングの繰り返しであり、また最終的に映像を出力する際のエンコーディングもコンピュータ任せの計算であるため、並列処理が行える要素が非常に多いのです。
そのため、マルチプロセッサに対応したノンリニア映像編集ソフト が主な利用目的の場合、デュアルコアプロセッサは最良の選択肢となります。MP3やMPG などのエンコーディングにおいても対応したソフトであれば高いパフォーマンスを得ることが出来ます。
この分野は、このサイトで紹介している3DCG制作に適したパソコンと共通します。After Effects は、3D-API (OpenGL)を使用した映像制作が行えるようになっているため、3Dアクセラレーターも必要です。これに付け加え、映像制作においては、高速で大容量のハードディスクや、外部から映像を取り込んで編集する場合は、キャプチャーボードなども必要となります。
ノンリニア映像編集に必要となるハードウェア |
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サーバーとは、ネットワークに接続された複数のクライアントの要求に答えるホストコンピューターの事を言います。特に多くの接続要求に答える必要のあるインターネットサーバーはその代表と言えます。
3DCG のネットワークレンダリングの様にネットワークで負荷を分散させるには、クラスタ化を想定したサーバー構築など高度な専門知識や技術が要求されます。
一つのコンピューターに複数のCPUを搭載するマルチプロセッサの方が手っ取り早く処理能力を上げる事が出来るため、デュアルコアやマルチプロセッサなどの並列処理に最も適した分野です。
3Dグラフィックスの分野 においては、レンダリング専門に行うレンダリングサーバーをネットワークに配置する事で、クライアントの作業負荷を軽減する、といった目的でも使用されます。
デュアルコアCPU やマルチプロセッサなどの並列処理に適さない分野です。これらの作業がメインとなる場合、シングルプロセッサの高クロック版の方が、高い性能が得られます。また、デュアルコアCPUのように無駄な消費電力も喰わず、パソコンの価格も抑えることが出来ます。
Adobe Photoshop は定番の画像処理ソフトであり、マルチプロセッサにも対応していますが、一部のフィルター処理のみです。高解像度の画像に対してフィルターをかける場合はマルチプロセッサで得られる恩恵は大きいですが、このような作業は頻繁には行いません。
リアルタイムな処理、例えばブラシツールで描画したり、画像を切り抜いたりなどの一般的なオペレーションは全て 1CPUで行います。3Dグラフィックソフトのケースと比較してコンピュータに委せる計算処理は利用頻度が少ないため、デュアルコアやマルチプロセッサの恩恵はほとんどありません。
このような用途にはデュアルコアやマルチプロセッサよりも、従来のシングルコアCPU(高クロック) の方がコストを含め、高いパフォーマンスが得られます。特に画像処理ソフトは高速なメモリと容量、そして高速なハードディスクを搭載するパソコンの方が適しています。
画像処理、グラフィックソフトに適したハードウェア |
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Athlon 64 FX / Athlon 64 |
ゲームはリアルタイム処理の代表的なプログラムであり、マルチプロセッサやデュアルコアCPU の恩恵は現状では得られません。ゲーム用途でパフォーマンスを得るには、ゲームプログラムを高速に処理するための高クロック シングルプロセッサと、3Dの描画性能を高めるための3Dアクセラレーターチップを搭載したビデオカードが鍵となります。
ゲーム用途に適したシングルコアプロセッサ |
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Athlon 64 FX / Athlon 64 |
ゲームにおける並列処理.
PLAYSTATION 3 に代表される次世代家庭用ゲーム機では、物理エンジンがトレンドとなっており、物理計算を別CPU で処理させるという考えもあるようです。現状では、このようなPCゲームは存在しませんが、将来的にデュアルコアCPUにメリットが出てくる可能性があります。
参照 => 物理エンジンの現状と仕組みを理解する
シングルプロセッサの高クロック版、足回りを強化したCPUとして、以下のプロセッサが最も適しています。(デュアルコア並に高価ですが、、)
上記CPU は、性能はトップクラスですが、コストパフォーマンスは高くありません。
デュアルコアCPU の登場により、これまでのマルチプロセッサと異なり、安く、簡単に並列処理環境が手に入るようになりました。そのため、これまでマルチプロセッサ環境を利用した経験のない方がデュアルコアCPUを搭載したパソコンを購入する、又は自作する上で誤解している人が多いように思います。実際に新聞記事でもデュアルコアCPU に対して、 『 これまでのパソコンの速度が2倍になる 』 という誤った報道もされていましたし。
デュアルコアCPU やマルチプロセッサCPU 搭載のパソコン、マルチプロセッサ対応のプログラムで得られる恩恵はコンピューターが行う計算処理などに限られ、パソコンの性能が2倍になる訳ではありません。
単純に高クロックのシングルコアCPUのパソコンからデュアルコアCPU に移行しても処理能力が2倍になる訳ではなく、マルチプロセッサに対応したプログラムであっても並列処理の性能はプログラムの出来次第という事になります。
関連 => CINEMA4D(シネマ フォーディー)の歴史、特徴について