2005年11月末 入手可能なメインストリーム向け AMD デュアルコアCPU と Intel のデュアルコアCPU を比較してみました。
2005年に書かれた記事で内容は古くなっています。2007年末から2008年初頭にかけての CPU に関する説明は3DCGワークステーション導入アドバイスで説明しています。
AMD の デュアルコアプロセッサ Athlon 64 X2 と Intel のデュアルコアプロセッサ Pentium D / Pentium XE の違いは以下の通りです。
デュアルコアCPU | 発熱 | 価格 | クロック周波数 | レンダリング | マザーボード |
---|---|---|---|---|---|
Athlon 64 FX 60 |
不明 |
13万円前後 |
4.8 GHz |
2スレッド |
BIOS のアップデートだけで、従来の Athlon 64 (939pin)で使用してたマザーボードをそのまま利用できる。 |
Athlon 64 X2 |
優秀 |
10万円前後 |
4.8 GHz |
2スレッド |
|
Pentium XE |
高め |
11万円前後 |
3.2 GHz |
HTを使用した4スレッド |
対応したチップセットが必要。つまり、専用のマザーボードが必要となり買い換える必要がある。 |
Pentium D |
高め |
6万円前後 |
3.2 GHz |
2スレッド |
Athlon 64 X2 は従来の Athlon 64 (939pin) マザーボードで BIOS をアップデートするだけで利用できるため、 従来の PC の資源をそのままに少ない投資でデュアルコアプロセッサ環境へ移行できるメリットがあります。(マルチプロセッサ対応のOSが必要になります)
3DCG 制作者にとって最も気になるのがCPUの浮動小数点(FPU)の性能です。インプレスで CINEMA4Dのレンダリングエンジンを持つレンダリングベンチマークソフト CineBench 2003 を使用した レンダリングベンチマーク結果が公開されていますので、このデータを元に考察します。
参考 => 多和田新也のニューアイテム診断室
デュアルコアCPU のレンダリングベンチマーク.
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0527/graph31.htm
上記ベンチマークでは、最も高いレンダリングパフォーマンスを出しています。実売価格もPentium Extreme Edition 840 と変わらない上、Athlon 64 (939pin) のマザーボードが利用できる事から、3DCG制作や映像編集用途においては、CPUのアップグレードで大きな恩恵が得られる事がわかります。
クロック数では Athlon 64 X2 4800+ に大きく劣りますが、上記ベンチマーク結果では HT (ハイパー スレッディング) 有効にした4スレッドレンダリングの場合、Athlon 64 X2 4800+ に迫るパフォーマンスを発揮しています。
逆に注目したいのはHT をオフにした時、つまり同じ2スレッドレンダリングの値です。クロック周波数では 1.5倍のアドバンテージを持つ Athlon 64 X2 4800+ に対して 1.5倍 の比率以上にレンダリングスコアが高くなっています。これは、3DCG レンダリングに重要な浮動小数点の計算は Athlon 64 X2 より優れている、又は Athlon 64 X2 が劣っていることを示しています。これに HT テクノロジにより更に、2割上乗せされクロック数以上に差を縮めたと考える事が出来ます。
Pentium D に関する上記ベンチマークの注目点は、Pentium Extreme Edition 840 のHT オフ時のレンダリングパフォーマンスと比べ大きく劣る点です。同じ 3.2 GHz の 2CPU レンダリングでありながら大きな差があります。これは、Pentium D の浮動小数点計算能力(FPU)が Pentium Extreme Edition 840 に比べ低い事を示しています。価格相応といえますが、3DCG用途でCPUを選ぶ場合、非常に気になります。
上記、 CineBench 2003 のレンダリング結果には大きな落とし穴があります。
CineBench 2003 は、マルチプロセッサ レンダリングに高度に最適化された CINEMA4D のレンダリングエンジン持ったベンチマークツール
という点に注意しなければなりません。
一般的な 3Dグラフィックソフトのレンダリングエンジンでは、2CPU で並列処理を行っても 1.3 ~ 1.5 倍程度しかレンダリング速度は向上しません。デュアルコアだけでなく、2CPU のマルチプロセッサ環境においても同じ事です。
CINEMA4D は昔からデュアルプロセッサ環境において理論値一杯の 1.8 倍強 のレンダリングパフォーマンスを引き出せるレンダラを持つ事で定評のある3Dグラフィックソフトです。そのため、上記ベンチマーク結果が示すとおり、デュアルコアCPUによりレンダリング速度が 1.8倍になるという考え方は、一般的な3Dグラフィックソフトが持つレンダリングエンジンでは成り立ちません。ここで示された恩恵が得られるのは CINEMA4D ユーザーと考える方が無難です。
関連 => CINEMA4D(シネマ フォーディー)の歴史、特徴について
Pentium D のレンダリング ベンチマーク結果から、気になる問題がもう一つ出てきます。それは、浮動小数点の計算に弱く、HT (ハイパー スレッディング) を持たないデュアルコアプロセッサ Pentium D 840 と シングルコア高クロック CPU の Athlon 64 4000+ や HTに対応している Pentium 4 670 (3.8GHz) を比較した場合、どちらが3DCGレンダリングに適しているのかという点です。
仮に、一般的な3DCGレンダラで、Penitum D で 3.2GHz ×1.4 倍のパフォーマンスが得られたとすると 4.5GHz 相当となります。
Athlon 64 4000+ と Pentium 4 670 (3.8GHz) では、CPU が一つなので 4GHz ×1倍 と考えて 4GHz 相当になります。
比較すると 500MHz 分、 Penitum D が有利となりますが、上記ベンチマークの結果のとおり浮動小数点の処理が弱いとすると、Athlon 64 4000+ と Pentium 4 670 のレンダリング速度が上回る可能性も出てきます。あくまで推測ですが。
これらの理由から、安価な Pentium D プロセッサを搭載したパソコンを購入する場合は、Pentium Extreme Edition へのアップグレードが可能な インテル955X チップセットを踏査したマザーボードを選択する方が無難な選択肢と言えると思います。