ここからはウェイト修正を含め造形を行ないます。モデラーのウェイトマップ編集に使用するツール、コマンドは幾つか用意されており、基本的な修正アプローチは前の章で少し触れましたが、ここでは例を挙げてもう少し具体的に説明します。
要所要所で修正アプローチを使い分ける事で生産性も上がります。基本的なウェイト修正アプローチの具体例と特長について説明します。
ウェイトマップのエラーはスケルゴン回転で確認できますが、ウェイトビューを使う事で視覚的に確認する事が出来ます。
Ver9 からは最高 4つのウェイトマップを色違いで同時表示できるようになっていますので、確認し易くはなっています。
この表示機能はSubDiv種 Catmull には未対応なので注意が必要です。
ポリゴンメッシュ、またはサブパッチ サーフェイスの場合は正しく表示されます。
この例では赤丸で示した箇所に問題にある事は一目瞭然です。
Vertex Paint で Falloff Distance を一括適用した直後は、全ての頂点に割り当てられるウェイト値の合計は100%になっています。つまり、正規化(Normalize)処理は行なう必要はない状態にあります。
左の例はVertex Paint で Falloff Distance を一括適用した直後のウェイトマップです。
薬指の付け根に著しくウェイトの低い箇所があります。ということは隣接するウェイトマップには高いウェイト値が適用されている事になります。
Vertex Paint の Falloff Distance 一括適用で得られるウェイト値は頂点とスケルゴンの距離によって決まるため、このように頂点、スケルゴンが接近する関節部分、特に”股”は注意深くチェックします。
ヒント: この問題を極力回避するため、モデリングの段階で初期ポーズを意識する事もあります。例えば腕と胴体が干渉しないように腕を水平に伸ばすなど。
頂点単位のウェイト値修正は “情報パネル ”から行ないます。 (ショートカット i )
頂点に割り当てられるウェイト値の合計が100% になるように調整します。
合計が100%になるように調整するとスケルゴン回転時にNormalize オプションを有効にしなくても意図したスキニング結果が得られます。
この情報パネルは常に開いた常態で作業が行えます。
値を修正してはスケルゴン回転で確認します。数値入力による修正のメリットは正確なウェイト配分が行える点にあります。特に股関節部分など複数のウェイトマップで綱引き常態が生じる箇所の修正に有効なアプローチです。
ヒント: 素早くウェイトマップにアクセスするためには、ウェイトマップの名前の付け方にも工夫する必要があります。名前の付け方によってはリストされる順番も変わります。リストされる順番によっては作業能率にも影響があるという事です。本稿ではVertex Paint でウェイトマップを一括作成していますので、スケルゴン作成時の名前付けの段階で注意する必要があります。
選択した頂点(ポリゴン)に対して、同じ値のウェイト値を一括して適用する場合は、”MAP値指定 (Set Map Value)” を使います。
現在選択されている頂点マップ情報、本稿の場合はウェイトマップですが自動的に該当するウェイトマップが選択されます。
ですのでウェイトシェードで修正したい箇所のポイント、ポリゴン選択した状態で適用すれば即座にウェイト値を適用出来ます。
よく使うツールなのでショートカットに登録しておくと良いです。
このツールは現在適用されているウェイト値はわからないので、隣接するウェイト値を参考に値を修正したいなどウェイト値の調整を目的とした場合には適しません。前述した情報パネルを使って修正します。
先ほどの箇所をウェイトツールで修正する手順です。先ず、隣接するウェイトマップを複数選択します。
アクティブなウェイトマップは頂点マップパネルでは白色で名前が表示されます。
ウェイトツールはこのウェイトマップに対して作用します。左の例では水色で表示されているウェイトマップを修正することになります。
この場合、修正したい頂点は一つなので、Falloff はポイントをLMBプレスし、ウェイトシェードの色の変化をみながらバランスを調整します。
左が結果です。現在のウェイト値にウェイトツールで追加した値が加算されます。情報パネルで確認すると100%を超える高い値が入っていることが確認する事が出来ます。
元々隣接する赤色のウェイトマップに適用されている値が高いため、青色のウェイトマップに更に高い値を適用する事で双方のバランスが取れる、つまり、ウェイトカラーは比率の関係を示しているという意味になります。
この状態でスケルゴン回転ツールの Nomalizeオプションを有効にせず回転させると、一つの頂点に対し、合計が100%を大幅に超えるウェイト値が適用されているため、意図したスキニング結果は得られません。(ヒデブ、アベシ常態)
自分の頭で計算せずウェイトシェード(目視)でウェイトツールを使って調整し、”スケルゴン回転” で Nomalize オプションを有効にして確認するという修正アプローチです。
ただ、この方法はモデラーとレイアウトを行ったり来たりする従来のアプローチを前提としていますので、正規化処理はモデラー上で完結させておいた方が生産性は高く、汎用性の面でもメリットがあります。
極端な値が適用されたままでは数値入力による制御が難しくなるので Vertex Paint の Normalize を実行しておきます。
Vertex Paint を使っても前述したようなペイント機能、ウェイトビューによる視覚的な修正、数値入力による修正が可能です。
ウェイトマップ編集におけるVertex Paint のメリットは、スキニング時の変形結果をリアルタイムに確認しながらウェイト値の修正が行える点にありますが、サブディビジョンサーフェイス表示には対応していません。
そのため本稿のような少ない頂点数で構成されるサブディビジョン・サーフェイスの場合で狙ったスキニング結果を得るには、スキニング後の形状を予測する事が難しいため、リアルさを追求する場合には不向きです。
スケルゴン回転で確認するにしてもインターフェイスを切り換える必要があるため却って手間が掛かります。本稿では少ない頂点(Vertex) で構成されるサブディビジョン・サーフェイスの編集に重点を置いているため、
といった限られた範囲でVertex Paint を活用しています。(ウェイト編集に限定した話)
Vertex Paint のペイントツールを使ったウェイトマップ編集は、サブディバイドされた高密度ポリゴンメッシュのウェイト修正に効果的です。
本稿では、ウェイト値の修正にはVertex Paint は使用せず、ウェイト値修正の確認はスケルゴン回転(モデラー)と Bone(レイアウト)の結果を踏まえて、”情報パネル” による数値入力か、”ウェイトツール” による修正が主なスタンスになります。