本稿では造形とBoneウェイトマップの制作を平行して行うため、アニメーションが想定される生物系モチーフにおけるモデリング・ワークフローの中でUVマップの作成は一番最後の作業になります。
これまでと同様に実例を示す前にUVマップに関する基本的な事柄と、初めて取り組まれる方は注意した方が良いと思われるポイントについて説明します。
UVマップはウェイトマップや頂点カラーマップと同じ頂点マップ情報の一つです。このマップ情報には頂点毎にUV座標値が記録されています。U(横)V(縦)を表し、主に画像データの縦横方向に対して頂点位置を関連づける目的、つまり、テクスチャ・マッピング用途に使用される頂点マップ情報です。
昔はポリゴンメッシュに対するUVマップをサポートする3DCGソフトウェアは限られていましたが、確実な位置あわせが可能なため、現在は最も一般的なテクスチャ・マッピング手法として使われています。
他のテクスチャ・マッピング方式と最も異なる特長は、メッシュが変形してもテクスチャが追随する点にあり、これは頂点に対し画像の位置情報が関連づけられている事で実現しています。
実際に試してみれば直ぐに分かる事ですが、テクスチャが歪まないようにするためにはポリゴンの法線方向に対して垂直になるようUVエリアに頂点を展開する必要があります。また、テクスチャサイズを維持するには UVエリアに展開するポリゴン毎のスケール比率を揃える必要があります。
LightWave (モデラー)の UV 展開方法には、平面、円柱状、球状、アトラスの4種類の方式が用意されていますが、形状に応じて前述した展開結果が得やすい方式を使い分ける必要があります。
また、ケースによりますが全てのポリゴンメッシュを一度にUVマップを展開するのではなく、異なるUV展開方式で複数回に分けて展開する事も考える必要があります。
例えば、部分的には平面方式、円柱方式と複数回に分けて実行するなど
マッピングするテクスチャ(画像)の作成方法によっても、適切なUV展開方法が異なる場合もあります。
具体的には UVマップを下絵に PhotoShop や GIMP など2Dペイント系グラフィックソフトをメインにデジカメで撮影した写真等を利用してテクスチャを描く場合、画像修正のし易さを考慮する必要があり、※ 繋ぎ目の位置をどこにするかも重要なポイントになります。
※ 顔など正面で分けるより、目立たない後頭部で分ける方がよいなど
3Dメッシュに直接ペイント出来るツールを中心に作成する場合は、アトラス展開方式のようにバラバラにUVが展開されてもテクスチャを描く事は出来ますが、ゲームなどリアルタイムシェーディングが最終目的の場合、繋ぎ目が問題になる場合もあります。
本稿はモデリング・ワークフローを紹介しているため、詳しくは説明しませんが、3DCGにおける質感表現には、反射マップやバンプマップなど様々な画像を使用します。
本稿で説明するUV展開は生物系モチーフなど連続するメッシュで構成されるオブジェクトに対するUV展開でカラーマップや拡散マップなど絵をマッピングする用途に使用するUVマップを想定していますが、必要なUVマップは一つとは限りません。
例えば全体に均一で細かな凹凸を表現したい場合、繋ぎ目は特に問題にならないため、テクスチャ解像度を優先でアトラスで展開した方が歪みの少ない良好なレンダリング結果が得られる場合もあります。
逆に Normal マップ情報などテクスチャベイクで画像出力する際に使用するUVマップに対しても同様の事が言えます。
ゲームのようにローポリゴン・データのリアルタイム・シェーディングが最終目的の場合、なるべくエッジ部分は目立たない位置で分割する必要があります。使用出来るテクスチャサイズに限りがあるため、低解像度表示の際にエッジ部分のテクスチャ再現性に問題が出る場合があるからです。
どのようにUVマップを展開しテクスチャを作成するのか、逆にテクスチャを基準にUV展開を考えることもあります。昔からUVマッピングとテクスチャ作成は頭を悩ます問題の一つである事は今も昔も変わりません。
これらの問題を解決する一つの手段として古くから 3Dメッシュに対して直接ペインティングを行なうツールも存在し、これらのツールは 10万円前後の価格帯にあります。(MAXSON の BodyPaint 3D などが有名)
ハイエンド3DCGツールにはこれらの機能を内包する製品も存在します。残念ながら、本稿で使用している LightWave には、UVマッピングで貼り付けた画像に対する直接ペイント、修正する機能は有していません。
何れにしても3Dペイントツールがあると生産性の向上が見込める事は事実です。
最近では PhotoShop にも 3Dペイント機能を持つラインナップが登場していますが、生物系モデリング用途では 3Dペイントを目的としたツールよりも、ZBrush や MudBox などスカルプト・モデリングが行えるツールの導入をお進めします。
というのも、これらのソフトウェアはスカルプト造形とペイントの同時処理を前提としているため、3Dペイント機能も有しています。テクスチャだけでなく、Normal Map や Displacement Map など詳細な造形に欠かせないマップ情報を得られる分、3Dペイントだけを目的としたツールよりも使い道があります。
関連 => "変異マップ(Displacement Map)" と "法線マップ(Normal Map)" について
ZBrush 、MudBox 何れも10万円前後の同価格帯にありますが、MudBox は3DCG 制作に特化したツール、ZBrush はどちらかと言えば、3Dソフトよりもペイントツール寄りのソフトウェアでツールの一つに強力なスカルプト・モデリング機能を有しています。
個人的にお勧めなのは ZBrush です。3Dソフトらしからなぬインターフェイスで使い難いという話を良く聞きますが、ZBrush はどちらかと言えば3Dソフトウェアではなく2Dペイント系ソフトに近いアプリケーションで名前が示すとおりブラシツールが充実しています。
GLプレビュー機能はこれらのビデオカードが必須
MudBox は 3DCG制作に特化しており、スカルプトモデリング以外には拡散、鏡面反射、バンプマップ等のテクスチャ作成用途に長けています。3dsMax らしいインターフェイスとなっているためMaxユーザーは取っ付き易いかもしれません。ただ、年間保守契約料、バージョンアップ価格が高い点は個人ユーザーには適しません。
今のところ Zbrush は無償アップデート期間が長く、保守料も発生しない点も考慮されるとよろしいかと思います。
ちなみに ZBrush のペイントは頂点カラーです。高密度ポリゴンに対して行ない画像データとして出力する事が出来ます。2Dペイント寄りと言いましたが、作成したNormal Map をリアルタイムに確認出来るOpenGL 表示、Normal Map、Displacement Map 出力、トポロジ(メッシュ再構築)ツールなどゲーム開発、3DCG制作に特化した機能も実装されています。
Zbrush、MudBox 以外に 3D-Coat という選択肢もあります。
単体でモデリングする機能は持たず(Ver2.xまで)、他の3Dソフトで作成したUV付きオブジェクトをインポートする事を前提としており、スカルプト・モデリング、3Dペイントを行なう事が出来ます。
Zbrush、MudBox のようなスカルプト・モデリングのパフォーマンスやペイント機能は充実していませんが目的によっては必要十分な造形、テクスチャペイントが可能です。視点から任意の画像を投影しながらの焼き込みペイントやレイヤ、画像ブラシ、トポロジツール、UV修正機能、PhotoShopとの連携(未確認)など機能も充実しています。
驚くべきは価格で商用利用不可のEducational License で140ドル、商用利用可能なFull Professional License で200ドルとコストパフォーマンスは極めて高いと言えます。Ver3 からはゼロからのモデリングが可能なVoxel Sculpting が搭載されています。
有志による日本語マニュアル => 3D-Coatマニュアル日本語訳
3Dペイントツールを使用せず繋ぎ目を消す方法もあります。それは繋ぎ目が目立つ箇所に異なるUVマップを作成し、隣接する画像をアルファチャンネル等でくり抜くなどの方法により3Dソフト側でテクスチャ・レイヤとして隠す方法です。
手間が掛かる上、細かな修正には向きませんが、レンダリング結果をカラーマップ、輝度情報など個別にテクスチャベイクにより画像として書き出せば、ゲーム等で使用するテクスチャ画像として一つにまとめる事も出来なくはありません。
次は本稿で作成した手を例に Uvマップ作成の具体的な手順について説明します。