モデリングが完了してからウェイト付け作業を行なうのが一般的なワークフローと思われるかもしれませんが、スキニング結果を確認しながらウェイト値の修正作業を進めると、必ずといって良い程、頂点位置の変更や新たに頂点を追加する必要に迫られます。
造形に必要な頂点が確保出来たら次はウェイトマップ修正と平行して造形を詰める作業を行ないます。ここからは説明してきたウェイトマップ修正のアプローチの具体例を、これまで作成してきた手を例に示します。
指の付け根の形状、スキニング結果に不満があるため修正します。ウェイトツール、ウェイトシェードを使った修正例です。
左が修正前(VPの Falloff Distance16直後)、右が修正後です。ウェイトツールを使って、それぞれの指が左右の頂点に半分ずつウェイトを分けるように調整しています。どちらかの指(色)にウェイトが偏るとおかしいためです。
色が混じり合えば左右のウェイトのバランスが取れている事になります。これで互いのウェイトマップが適用されたBone が同じ重みで頂点を綱引きしますので、頂点は常に中間に位置するようになる筈です。
"スケルゴン回転" ツールの正規化オプションを有効にしてスキニング具合を確認して意図する変形が得られるか確認して下さい。この時、メッシュ位置も同時に修正し適切なスキニング結果が得られるよう意識してモデリングします。
ウェイトツールで修正した後は必ず Vertex Paint で Normalize を実行して一つの頂点に割り当てられるウェイト値の合計を100%にしておきます。
指を曲げた時の指の付け根の形状に不満があるため修正します。特に小指、人差し指は外側に位置するため拳を作った時に不自然に見えます。そこで親のBoneに割り当てられるウェイトマップに若干ウェイトをつけ若干量拘束し、起伏が生じるようにしてみます。
figB_03 = 85% 、figB_04 = 15% に合計値が 100% になるようウェイトを配分しました。指を曲げた時に85%を追随させ、残り15%はその場に留まる事になります。
スケルゴン回転で確認します。この箇所にメッシュを追加した理由はこのためです。 同様の手順で小指側も修正します。
本稿は ”手” をモチーフにスキニングを想定した生物系モデリングの制作プロセスを紹介しています。”手の作り方” を説明している訳ではありませんのでご注意下さい。見えない箇所の作り込みは時間と労力の無駄になります。
左は1つの頂点に4つのウエイトマップ(値)が適用されているケースです。
この箇所は、隣接するどちらかの指が動いた時全く動かないのは不自然であるため、隣接するウェイトマップでウェイトを分け合う必要があります。
このように枝葉に分かれる箇所はVertex Paint の Falloff Distance で満足な結果が得られる事は先ずありません。
この例では 4つのウェイトマップに値が適用されていますので、情報パネルで4つのウェイトマップのウェイト値が合計100%になるように修正し、スケルゴン回転でスキニング結果を確認します。この場合、左右 50% ずつ、前後の配分を50%でどう分けるか、と考えると分かり易いと思います。
一見、手間がが掛かりそうに思えますが、慣れると一度試すだけで結論が出ます。このようにウェイトマップの中間に位置するウェイト値は数値入力で調整した方が確実で効率的に修正が行えます。
左がウェイト修正前、右がウェイト修正後のレンダリング イメージ
上記レンダリング結果(右)はどこか不自然です。指の付け根まで切り込んでいるため、指が異様に長く見えます。原因は指を伸ばした常態の形状に問題があるためです。
この箇所のウェイトは指を曲げた時に、左の図で示したエッジと横並びにして平面性を保つようになるようにする必要があります。
つまり、figD_03 と figE_03 のスケルゴン (Bone) に追随する必要があり、その比率は左右に 50%ずつに配分するのが妥当と推測する事が出来ます。
ただ、上下のウェイトも考慮する必要があるため、中間に位置させようとすると適切な値は左図のようになります。
横に隣接するウェイト値を参考に求める事が出来ます。
左が修正前、右が修正後のレンダリング イメージ
このような調子でウェイトを修正しながら造形を詰め、確認用のシーンでレンダリング、確認しながら時間の許す限り形状を整えていきます。次のページではウェイト修正の段階で頂点が追加されるケースを想定した修正例を示します。